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【北欧視察】スマートシティとスマート高齢者住宅

今回の視察では、2か所のスマートシティを見て回りました。一つ目はヘルシンキ市内にある湾岸地域を開発したカラサタマ地区、もう一つはエスポー市にあるケラ地区です。

カラサタマ地区は2013年から計画がスタートし「スマートなサービスによって市民の時間を毎日1時間を節約・住民の生活の効率化・質の向上を重視」などのビジョンをもって計画・開発工事が進められています。

カラサタマ駅から見るビル群

カラサタマの駅に到着すると、駅直結の商業施設「Redi」があり、映画館やアミューズメントセンターなどの娯楽がそろっています。また、保育所も駅のすぐそばにありました。
埋立地方向へ進んでいくと、建設が進む居住地区が見えてきました。真新しい集合住宅が立ち並んでいます。

湾岸エリアから居住区を眺める

居住エリアの中で最も目を引くのが、この廃棄物収集システムです。分別項目ごとに色分けされた蓋から投入されたごみは、真空で地下に吸い込まれ、最高時速70㎞で廃棄物処理場に送られます。

左からグレー(混合廃棄物)、茶(生ごみ)、黄(プラスチック)、青(カートン)、緑(紙)

ごみ収集にかかる人手を減らせる効果もあるでしょうが、まず何曜日はこの分別項目のゴミを、朝の何時から何時までの間にごみ捨て場に出さなければいけないという縛りが無くなります。日中の体調の良い活動性の高い時間に、自分のペースでゆっくりとゴミ出しできるのは、とても便利なのではないでしょうか。また、働く現役世代にとってもこの時間の縛りがないのはありがたいと思います。(日本でも、一部のマンションなどはこれが可能ですね)

駐ベビーカー場?

廃棄物収集システムの近くに、なんと「駐輪場」ならぬ「駐ベビーカー場」がありました。子ども用の自転車なんかも置いてあって、便利です。

船着き場
スマートホーム

船着き場のにやって来ました。この向かいにはスマートホームがあります。外出先からモバイルデバイスで家電や空調などを操作できるというアレですね。

面白いデザインのベンチを発見
橋の向こうは緑豊かな森林公園エリア

このアーチ状の橋を渡った先には「エディブルパーク」という自然豊かな公園があり、誰でも無料のオープンガーデンがあるそうです。(今回は足を運ぶことができませんでした)

カラサタマ小学校

こちらは学校。日中はテクノロジーを活用した最新の教育方法の学習拠点となり、夕方には市民の集会所となるそうです。フィンランドの学校は大体14時ころには終わって、生徒は下校するのだそう。

シニアハウス

このシニアハウスは、この市街地で最もデジタル化した建物です。在住のアクティブシニアたちが自ら企画・プロデュースした500㎡もの共有スペースがあります。また、道を挟んだ隣の建物には、ヘルシンキでよく見かけるKマートというスーパーマーケットが入っています。ウォーカブルシティの記事でも触れましたが、こうして少し歩けば生活に必要なインフラにアクセスできるのは、高齢者が長く自立して暮らすために重要な条件だと思います。

シニアハウスの隣にはスーパーマーケット
EV車のシェア所有システムを実験中のマンション

ここは一見普通のマンションに見えますが、居住者全体で共有の電気自動車を保有しシェアしています。予約・配車システムで管理することで、安上がりで、環境に優しく、簡単に共有ガレージから車を使用することができます。(このマンションにも廃棄物収集システムがありました)

かつての食肉処理場を利用したその名も「屠殺場」という名前のイベントスペース
かつての発電所はフェスティバルホールに

その他にも、かつての食肉処理場や発電所をイベントや飲食の会場に生まれ変わらせ、起業家支援の場として活用するなど、新たな社会システムの実験場として機能しています。


ケラ駅

次に向かったのは、エスポー市のケラ地区です。ケラ地区は2019年に計画がスタートし、「スマートでクリーンなケラ」のコンセプトで2022年から建設が始まりました。ザ・田舎の駅という感じのケラ駅を出ると、今まさに開発工事中。多くの重機が見えます。

ここに来た目的は、ノキアが実験するスマートポールを見ることです。このスマートポール(電灯)はケラ駅を出てすぐの自動運転車用のバス停付近から等間隔にノキア本社まで続いています。多くのセンサーの他、スピーカーが取り付けられているもの、ディスプレイが付けられているもの、中にはドローンが格納されているものまであります。

バス停にある巨大ディスプレイ(落書きされてる)大型ディスプレイを備えたバス停からは自動運転バスが走っていて、このスマートポールからの信号に誘導されてノキア本社まで走っているそうですが、今回は見ることはできませんでした。
スマートポール
ノキア本社に向かって等間隔に立ち並んでいる
ドローン格納ポール

他にもこの「等間隔に並んでいる」ことを利用して、人流データを取得したり道路状況を監視したりと、様々な用途に活用することができるかと思います。何なら徘徊中の認知症患者の発見などもできるのではないでしょうか。

ケラホール

さいごにケラホールへ。ケラ地区はもともとは物流倉庫が立ち並ぶ地域だったのだそう。その元物流倉庫の中のひとつが、現在は市民のスポーツ施設として活用されています。テクノロジーの発達で不要になる施設の再活用も、うまくこなしている印象のケラ地区でした。


今回、この2か所のスマートシティ視察で、街をスマートにすることで労働力の節約、エネルギーの節約、お金の節約など様々な効果があることが分かりました。さらに社会実験によってより便利で、より安全で、より自立度の高い生活を実現できれば、日本が高齢者人口のピークを迎える2040年の乗り切り方のヒントになるかも知れません。

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