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絶望の灯火揺れて夜を往く浅き夢見し縊死せよ乙女

籠女は茜雨に草履を失くし
手を伸ばせば届く琥珀の光に触れず

「君の首切り裂く季節ピアノ線
蒼に隠れて揺らめくまま」

――そう、死者の花束はいつも山茶花だった
雨音揺らめく追憶、彼岸花の嫉妬
黒い葬列が赤く変容する時
炭化した朝焼けに手錠煌めく
静かな警報、映写機の奸悪
君が裸足の理由はないから
君に硝子が刺さる理由は――

「薄荷飴うつろう刹那夏忘れ
サンダル捨てた歩道の死者」

無言の喧騒、ザザ降り雨、群青、
右の耳鳴りが止まない
風雨に切り刻まれながら
車道でシャボン玉を吹かす君
風をあつめて、夕刻に「死」だけを内包した街
地獄花に手を伸ばす孔雀が飛ぶことを止めたのは

「彼岸花触れて狂うは黒揚羽
映る指先色褪せてゆく」

黄泉の紅蜘蛛が零す陰画と冤罪
搦め取られた太陽 呼吸をすること、光を――
暗色に浸された朧空
影絵に紛れた少女のシタイを愛撫していたのは
私では___わたしではないと主張したから
彼女の線香花火は結末に枯れることなく
僕の惨めなノートに儚くそっと挟まれたままだった
そして未来は今……

絶望の灯火揺れて夜を往く浅き夢見し縊死せよ乙女

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