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四四番目の空白

エンドロールに映る暗濘の彼方
流砂のような火炎が全てを焼き尽くしていた
傍観或いは感傷
(それら)に浸る誰もが
柔らかに火葬場の暗闇深くに沈められ__
刹那に映る炭化した彼らは
暗幕の小さな悲劇にすらなれなかった
視えない鬼が手招きする黄泉比良坂
言葉も無く
表情も無く
醜き亡骸の啜り泣く声だけが反響して……
形骸化した微睡みのなか
溺れゆく私の左手を摑むのは「わたし」だった
「わたし」の名前?
「     」
「     」の悲劇的な絵筆
削ぎ落とした「    」の右耳は
蒼穹の陰画に救済措置の無い秋を招き
左手、最期の銃声すら
小麦色の柔らかさに吸い込まれて
冷たくなってゆく体を
季節が置き去りにしたから
1989年、或る群青たちのフィルム
__永遠の欠席を保持してしまった太陽は
「四四番目の空白」に位置づけられた
光、清廉さを喪った(ア_オ)は
灰色のローブを纏い、暗き雨音と踊り続けている
綿飴すら氷結する烈夏
街は――人々は名前すら喪い
視えない数値に血と涙を零してゆく
……やがて、全てが納棺され
氷砂糖の雨と柔らかな陽光が
空白の大地に降り注いで
紅葉の流沙が破傷風をもたらし
蝉は再び警笛を吹き鳴らす
そして、凍死と熱病が混濁する煉獄に
彼らは醜きパノラマを刻み込もうとした
__今、蠢くのは「無」に浸された
あまりにも潔癖なモノクロだけ――

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