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C'était à cause du soleil

無軌道な雑踏、都会の喧噪、真夜中のクラクション
終わりなき譜面の不協和音に冒されて
それでも黙秘を貫く桜の花は
「正体不明」とイロを孕んでゆく
……春の35階高層ビルは不穏だ
白線の内側を奔る理由なき葬列
早過ぎた埋葬から滲みでる鬱血
蒼白の人差し指が示す真相、37頁に潜むのは__
刹那に散りゆく桃色の画鋲の痛絶
出血を催す止血剤を求める匿名
錆びたダガーナイフを振り翳す陰画
光のなかで鴉の群れが断末魔と糾弾を――
「チョコレートミントの溺死体は夏に浮かぶ」
誰かがそう囁いたけれど、猟銃踊る街角では
その声はあまりにか細く儚かった
アイスクリーム・パーラーの悲劇
紅いパラソルの死、氷結した祈り
着色料に塗れたラクトがほくそ笑めば
越えることのできない正午と霊安室の夢
雨中のカッターナイフ明滅せし君を切開するのは
心臓の鼓動藍色/琥珀のレンズ剥がれた黎明の記憶
……消失した廻廊を廻るハイヒールと
穴の空いたコンバースの解れに
終息と安息に向かう39階の左手は
血を喪くしたア_オを増して――
「だって、太陽が眩しかったから」
私の網膜の海では桜と紅葉が細波を形成し
偶数の裁判傍聴記から目を背けている

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