ブロコピ・福祉と漫画【2006/03/26(日)05:10】


「そういやなんで福祉と漫画を結び付けんのさ?」

…って、思った方いませんか?何でこんなブログ立ち上げたのか理由を書いてませんでしたね。一応は息抜き目的も本当なのですが、何であえて「漫画」と結び付けているのかというのにも意味はあります。
「福祉」に必要なものが現実世界に殆ど存在しておらず、「漫画」の中にはゴロゴロ転がっているからです。言い方を変えれば

「漫画」こそが「福祉」の教科書なのです。


私の知り合いに

「愛と正義は北斗の拳で学び、友情はキン肉マンで学んだ。」



と言っている人がいます。それだけ聞くと、多くの人はただのギャグと捉えてしまいあまりまじめには考えないか、漫画が好きなんだなぁと捉えてしまいます。しかし、きちんと話を聞いた所理屈の通った意見が聞けました。

彼曰く


「漫画は(基本的に)作者が独断と偏見で理想的な話を作り出し漫画として表現する為、他者の視線や意見に影響されにくい。漫画の世界は常に理想的で、登場する人物もとても理想的な個性や理念を持っており、それを貫いている。現実にはなかなかありえないシチュエーションの中で現実ではありえないような人物が現実ではありえないような理想的行動で無理難題を解決したりするところに憧れて、それに現実を近づけようと自分を高めていく事ができる。」

との事。言われてみればその通り。漫画は漫画家の独りよがりなわけです。ですがそこに大切な事が隠されていました。


「理想的な話」


これが「福祉」にはとても大切な事だからです。「福祉」を辞書で引いた事はありますか?(最近の辞書ではありませんが)こう書かれていました。「すべての幸せ」「国民すべての幸福」的な事が書いてあると思います。もともと「福」も「祉」も、ともに「しあわせ」を意味する漢字で、「福祉」(welfare, well-being)は広義では「幸福、安寧」や「良く生きること」などを指す言葉なのです。ハッキリ言って大半の人は「福祉」の定義があまりにも曖昧な為、意味を独自解釈してしまっており、「介護」や「ボランティア」や「慈善事業」などとの区別ができていません。「福祉」の極一部の行為や断片をさして「福祉」と認識しているという事ですかね?ま、「welfare」という言葉が日本に入ってくる際に適当な日本語無かった為慌てて作り出した単語なので、元々日本にあった言葉たちに比べて理解がバラバラになるのも然りなのかもしれません。「福祉」という言葉が作られる以前は「welfare」を「社会政策」「社会事業」などと和訳していたそうです。なんじゃそら「福祉」と全然ちゃうやんけ!

…で、何が言いたいかというと、「福祉」という言葉自体が著しく理想的な意味を持っており、むしろ「現実ではありえない」状態を表している言葉なのです。「すべての人の幸せ」…実現できますか?自分だけが幸せになる事さえも殆どの人ができない世の中で、自分も家族もお隣さんも日本もアメリカもアフリカも、仏教徒もキリシタンもイスラム教徒も、老若男女問わず幸せになる事ができますか?まず不可能です。しかし、「福祉」とは、それらすべてが幸福でいられる状態にする事なのです。…あまりにも理想論です。しかし、この無茶な論理こそ漫画と通じるものなのです。「福祉」に携わっている人やこれからその道に進むつもりの方、よく聞いてください。


我々の仕事は、この世のすべての職業の中で、一番理想を追い求める事ができる仕事であり、追い求める義務もある仕事なのです。


「学生(または新卒)は理想論ばかりで何もできない。」


なんて言われたり言ったりした事ありませんか?それがいけない事だと思い込まされてはいませんか?おそらくこの世の仕事で唯一理想論を言い続ける事が尊い職業ですよ。理想も言えなくなった人間に、「福祉」の状態に世の中を近づける仕事ができますか?理想を語れない福祉従事者はただの人です。介護者でも支援者でもなんでもない、ただのつまらない人ですよ。飛べない豚みたいなもんです。

正直私も介護実習や新人の頃、今でもですが


「現実と理想を区別しろ!」

と言われてきましたし、今でも言われる事もあります。現実は現実、理想は理想、そんな事は誰でも区別しています。そんな事を言う福祉従事者は十中八九無能と見て間違いないでしょう。(中には本当に区別つかない人もいるので、そういう人に言っているのであれば無能ではありませんが。)

有能な人は

現実を理想に近づける努力を怠りませんし、現実的な理想を軽はずみに言ったりはしませんよ。


私はよく、こんな例えを言います。

『福祉の仕事が航海であれば、理想(理念とも言う)とは北極星のようなもの。目的地に向かう為の方位を決める上で必要不可欠な不動の星。これを見失えば目的地にたどり着けないし、どちらを向いているかさえわからない。逆にそれさえ知っていれば、仲間とバラバラに出発してもバラバラな航路を通っても、あきらめずに進み続ければいずれは必ず同じ場所にたどり着く。だからと言って、船で海を渡っている事はわかっているので地球を離れて宇宙を行き、北極星という星にたどり着こうとは誰も考えていない。』

「福祉」において、「理想」「現実」が違うのは誰もがわかっている事。

しかし、「理想」を語ると「現実」を知らないと思われがち。いつしか「理想」を語るのをやめ、目的地を見失い、航路を外れていく。そして難破し座礁し沈没してしまう。中には沈没しても気づかないものが他の船を沈没させていったりもする。「福祉」という大航海時代に渦巻く悪循環。とても恐ろしい事です。

確かに、経営にも頭を悩ませる立場になり先輩・上司達の意見も気持ちも一理ある事は理解できるようになりました。

資本主義国日本

では、「福祉」はそぐわない考え方だと感じるし、「福祉」教育も欧米や北欧には比べ物にならないほど遅れています。先進国一般に、義務教育や親の教育で当たり前に「福祉」が学べるのに対し日本では「福祉」はお金をかけて学びに行かなければ学べない。「福祉」を充実させる為にも金かねカネ!これじゃ「福祉」は進まないわな。…しかし、一企業なら経営第一でお金儲けの為に存在しているのだから構いませんが、ここは「福祉」現場。

理想無き介護は、方位もわからず航海に出るほど愚かで危険な行為だと知らなくてはなりません。

目先の儲けに走り、制度に振り回されて本当に優先すべき事を取り違えるなど、責任が重くなればなるほどできません。一人でも多くの人が奮い立ってくれる事を願いここに宣言します。

「俺はどんな立場にたっても『福祉』をやります!」

そしてその道しるべになるものが「漫画」だったりするのです。さきに述べたように、「漫画」は理想論ばかり書いています。リアリティ重視の漫画もありますが、それだけでは売れません。売れている作品は気づかずに素晴らしい「理想」が詰め込まれています。普通に生きていても考えつかないような理想的な人物や行動、セリフがたくさん詰め込まれています。だから、「漫画」は「福祉」の教科書になるのです。

ちなみにその知り合いは


「北斗の拳は我が子にも読ませる!」

と言っております。愛と正義のわかる、ついでに北斗神拳の使える良い子に育って欲しいものです。

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