ブロコピ・とある事業所の苦悩【2006/05/12(金)05:34】

今日はちょっと事業者サイドの苦悩をかきませう。今回の自立支援法の一番の問題とは皆さまがご存知の応益負担というやつ。つまりは受けるサービスに応じた負担を受けてくださいと言う事。10万円のサービス受けたら1万円の負担をする事になりました。ま、資本主義国なら当たり前に考えつくやり方ですね。

一応、知らない方の為に以前はどうだったかと説明しますと、応能負担と言って、受けるサービスにあまり関係なく所得に応じた負担額が設定されていました。つまり、お金持ちからいっぱい金を取るシステムです。応能の能は、支払い能力の能って事。所得税とかは応能負担っつー事ですね。うーん、コレじゃうかつに稼げませんし(←稼げもせずに言うし)宝くじを買うのも気が進みません(←そうでもないか?)ので、コレもどうかと思いますがね。あ、宝くじは税金で取られないんだったかな?課税対象外だね確か。
今回の制度の問題はおおよそこのように捉えられているかと思います。しかし本当はもっと根が深い問題だと私は思います。



利用者サイドや一般レベルにあまり知られていないこととして、報酬単価が引き下げられているという事実です。言葉としては知っていても意味がわからない方が多いように見受けられます。単価が下がると言う事は、本来はサービスが安く受けられると言う事です。

知的障害者のホームヘルプを利用した方の一例です。


外出支援(身体介護を伴う)を5時間利用した場合の比較です。

以前なら21170円のサービスです。
現在では14940円になりました。3割程度の引き下げです。

※(ちなみに↑はあくまで基準額です。早朝夜間加算があったり、地域による加算なんかがある為、実際の額とは異なりますのであしからず。しかも、今までの支援費はあまり詳しくないから間違ってるかもしれませんので、その時はご指摘ください。)

で、その一割が負担額なので、「0」を1つ取ると負担額が出ますね。利用者様としては2117円払う所が1494円で済んでしまう訳ですね。逆を言えば、昨年までの報酬単価のまま1割負担になっていたとすれば、3~4割増しに負担が増えていた事になります。…恐ろしい。
つまり、知らなかっただけで、サービスを受け易いようにと値下がりしているわけです。その恩恵を感じられずにいたのは、多くの人がサービスがいくらなのか知らなくても済むような制度にしてしまったという明らかな国のミス。コレは国も「失策だった」と認めたらしいけど、認めただけでは何も変わりませんからねぇ。どうすんでしょ?

そして、お気づきの方もいると思いますが、居宅事業所サイドはもっと深刻です。今までと同じサービスを提供し、同じ賃金をヘルパーに払っても収入が減るわけですからね。ま、上記の身体介護を伴う場合ならまだいいです。15000円くらいの収入からヘルパーに6000円くらい払うので、儲けはあります。利用者様やご家族が慣れるまでは安心してもらう為にもう一人同行させてもかろうじて儲けにはなりますし。

問題は、1番多いニーズが身体介護を伴わない外出介護だということです。


これも同じ5時間利用した場合で見てみましょう。

以前は8030円
現在は7500円です。

ヘルパーに6000円払うとどうなるかわかります。1500円ですよ。2000円しか儲けが出なかったところに500円の引き下げ。人数多いのでとんでもない損失です。しかも、5時間利用してこのくらいであり、中には1、2時間ずつ利用の方もいます。不便なところにお住まいであれば駐車料金やバス電車代で赤字になる事も少なくありません。引き継ぎにヘルパーをつければ人件費だけで1回4500円の赤字!(←ワーオ!)…派遣コーディネートだって簡単にはいかないのに、仕事しても仕事しても赤字になるって一体…?明らかに問題です。かといって全く同じサービスをしているのに時給は下げられません。下げてしまえば間違いなくモチベーションが下がり、質の低い介護をする者が出てしまいます。となれば、生き残る方法は事業所が利用者を選ぶしかないのでしょうか?身体介護ありの人ばっかを。介護保険でケアマネが要介護3と4を優先して受けるのと似た感覚でしょうかね?(この場合は儲けというよりは、数をこなす為にトラブルが少ないとされている3、4の利用者を選んで受けるという意味ですがね。儲けは1人あたり月間一律7500円だか8500円でほぼ固定だった筈ですので。)

しかし、実際起きている事としてヘルパー事業所の障害者部門の撤退や、身体介護なし利用者の受け入れ拒否が聞かれ始めました。
そもそも支援費制度のおかげで、介護保険の指定業者も障害者向けのホームヘルプ事業ができるようになったのですが、障害者の介助には、自閉症に対する対応のように高齢者介護とは異なる高い専門性が要求されるにも関わらず、介護保険の指定業者ではこれらのノウハウがほとんど蓄積されておらず、介護保険の報酬単価よりも支援費の報酬単価の方が低いため、今回の騒動で書式や契約書の改正や契約のしなおしなど雑務が山のように増えてしまい、高齢者ついでに障害者指定も受けていた事業所としては手を切るいいきっかけになったのかもしれません。

そこで困った利用者様達が残った事業所に殺到!不平不満とともに受けきれない相談がきてる現状です。おそらく、ここで儲かる利用者様だけを選んでいくと、選ばれない方はどこに行っても選ばれない方なので、いずれは「利用しないなら必要なし」と判断されて支給量を減らされるのが目に見えています。介護保険の改定の時も見た光景ですからね。こうやって軽い人を福祉から排除していき、福祉にかかる予算を浮かせ、かつ悪者は直接断って行かなくてはならない事業所となる訳です。ま、僕の推測…いや、妄想に過ぎませんけどね…はは…は。
しかし、実際のところ私の印象としては、身体介護ありの方は動きも少なく、介護が楽な方が多いのです。逆に、軽いと思われている方の多くは自閉症。慣れた場所ではトイレもお風呂も自分で入れても、外出先では訳がわからずパニックパニック暴れて泣いて、叩いて噛んで、走って倒れておしっこジャーみたいな状態です。

「これで身体介護なしとは…。審査したやつらは素人か?」


って思っちゃいます。身体介護が無いからこそ身体介護が必要になる事がわからないようですね。認知症でも言えますが、介護する側として現場の意見を言えば、どんなにボケてても体が動かないならそう難しくは無いのよね。症状軽くても足腰しっかりしてるとさ、夜中に外でて歩いて、20km離れた実家に帰っちゃったりするんだよね。そんで介護度高いのはもちろん前者。家族が大変なのは後者。同じですね。認知症が昼と夜とが別人なのと同様に、自閉症は慣れた家と未知なる外とが別人になります。認定調査の職員は、たいがい昼に家に様子を見に来ますよね。

それって調査になんのかい…?


…ま、言ってもしゃーないか。多くの素人が法律作って運営してんだからね。この国って、有能な人間が埋もれて見えなくなってる気がします。なんとか発掘したいものですね

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