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定義が基準を生み、基準が理由を生み、理由が判断又は選定を生む

1.2022年6月15日記事「不合理こそが合理の原初である」において、判断又は選定は理由の系列を無限に生成でき、理由の系列を終止させるのは、決断又は選好であるとした。しかし、本当にこれでよいのか疑問に思われてきたので、もう少し具体的に考えてみることにした。

2.判断又は選定における主題が、ある結果に対する原因である場合を考える。つまり、ある事象を観察し、それを結果として位置付けた際、その結果を成立させる原因が何であるかを判断又は選定しようとする場面を考える。

3.原因は結果に先行することから、原因の候補である集合は先行する事象の集合である。先行する事象の集合には複数の要素があることから、ある事象Aがある結果Oの原因であるとするためには、その理由が必要である。

4.その理由として、例えば以下を考えることができる。
① 事象Aが結果Oより先に成立する
② 事象Aが成立する時、結果Oが成立する。
③ 事象Aが成立して、結果Oが成立しない場合、結果Oの成立を妨げる妨害事象が成立しているとする。その妨害事象が成立しない場合において、事象Aが成立する時、結果Oが成立する。
④ 事象Aが成立しない時、事象Aが生じる場合におけるその他の事象の成立のパターンが同じであるにもかかわらず、結果Oが成立しない。
⑤ 事象Aが結果Oを成立させるメカニズムが既存の知見で説明可能である。

5.「4.」の①から⑤は、原因を特定するための基準として機能する。これらを理由として、事象Aを結果Oの原因であると判断する場合、その基準の内容はあらかじめ支持されている必要がある。

6.しかし、「4.」の①から⑤の5つの基準を全て満たすことを以て理由とするのか、一部を満たすことを以て理由とするのかよいのかは自明ではない。つまり、基準によっては、あらかじめその内容が支持されているもの、そうではないものが存在することになる。

7.これらの基準の支持のパターンは、「原因」の語の定義と相関する。7.1.「4.」の①及び②を以て理由とする場合、時間的に先行する全ての事象も「原因」と特定できる。この場合は、そのような意味での「原因」の使い方を許容している。
7.2.「4.」の①から③を以て理由とする場合、結果Oの成立如何を問わず、恒常的に成立しているだけの先行事象も「原因」と特定できる。(実際には事象A以外の事象が、結果Oの成立に効果を発揮しており、事象Aは単に恒常的に成立しているだけというパターンがあり得る。)この場合は、そのような意味での「原因」の使い方を許容している。
7.3.「4.」の①から④を以て理由とする場合、メカニズムとしての直接性が低い先行事象も「原因」と特定できる。(例えば、地球上で雷が成立する前に地球が成立した。また地球が成立しなければ地球上での雷は成立しない。よって、地球上の雷の原因は地球である。)そのような意味での「原因」の使い方を許容している。
7.4.「4.」の①から⑤を以て理由とする場合、メカニズムとしての直接性が高い先行事象を「原因」と特定する。そのような意味での「原因」の使い方をしている。(我々は通常このようなニュアンスで原因を用いる。)

8.以上より、原因の判断又は選定には理由が必要であり、その理由の内容としての基準を支持するものは、「原因」の語の意味、すなわち定義である。よって、以下の関係が成立する。
「定義が基準を生み、基準が理由を生み、理由が判断又は選定を生む。」

9.以前、理由の内容を支持することには、判断、選定、決断、選好があるとした。これらは主体の志向である。しかし、上記のとおり語の定義が理由の内容を支持することは主体の志向ではない。語の定義は、他の語との関係によって規定されることから、これは語のシステムという客体の指向である。
9.1.しかし、定義という行為の本質は、他の語との差異の特定である。その差異の特定に当たって、主体の志向が関係する可能性はあるかもしれない。この点で、さらに上位の判断、選定、決断、選好が機能している可能性はある。




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