不合理こそが合理の原初である
1.判断は「判」と「断」から成立する。
1.1.「判」は半分に分けるというニュアンスを有する。また、優劣を検討して定めるというニュアンスを有する。
1.2.「断」は連続したものを断つというニュアンスを有する。
2.そこで、「判断」を以下のとおり定義する。
「判断とは、分かれ目が明瞭ではないものを検討に基づき二分し、かつ一方を優位、他方を劣位に位置付けることをいう。」
2.1.上記「判断」の定義は「分かれ目が明瞭ではないものを検討に基づかず二分し、一方を優位、他方を劣位に位置付ける」パターンを論理的に示唆する。このパターンを「決断」とし、「判断」とは区別して取り扱う。
「決断とは、分かれ目が明瞭ではないものを検討に基づかず二分し、かつ一方を優位、他方を劣位に位置付けることをいう。」
2.2.上記「判断」の定義は「分かれ目が明瞭であるもの」を論理的に示唆する。これについては二分するための検討は必ずしも必要ではない。しかし、優劣の位置づけに関しては検討の要否のパターンを論理的に特定できることから、以下2.2.1.及び2.2.2.のとおりとし、「判断」又は「決断」とは区別して取り扱う。
2.2.1.優劣の位置づけに関して、検討に基づくものを「選定」とする。
「選定とは、分かれ目が明瞭であるものについて、検討に基づき一方を優位、他方を劣位に位置付けることをいう。」
2.2.2.優劣の位置づけに関して、検討に基づかないものを「選好」とする。
「選好とは、分かれ目が明瞭であるものについて、検討に基づかず一方を優位、他方を劣位に位置付けることをいう。」
2.3.分かれ目が明瞭であるか否かは、既存の線引きが利用可能であるかに依存する。
3.判断には、それを支持する理由が必要である。
3.1.判断は検討に基づく必要があることから、一方を優位、他方を劣位に位置付けるに当たって、その考え方の筋道がわかる尤(もっと)もな説明を必要とする。ここでは、その説明のことを「理由」とする。
「理由とは、ある考え方の筋道がわかる尤もな説明のことをいう。」
3.2.決断には、それを支持する理由は不要である。もし理由を示せるのであれば、それは判断である。
3.3.選定には、それを支持する理由が必要である。判断と同旨であり、検討に基づく必要があるからである。
3.4.選好には、それを支持する理由は不要である。もし理由を示せるのであれば、それは選定である。
4.判断又は選定に当たって、ある理由を表明することは、その理由の内容を支持することを前提とする。
4.1.理由の内容を支持することは、一方を優位に位置づけ、他方を劣位に位置付けることであるから、理由の内容は判断、選定、決断、選好のいずれかによって支持されている。
4.2.理由の内容が判断又は選定によって支持される場合、その判断又は選定に当たって更なる理由が必要となる。また、その更なる理由の内容は、判断、選定、決断、選好のいずれかによって支持される必要がある。
4.3.理由の内容が決断又は選好によって支持される場合、これ以上の理由は必要ではない。
4.4.したがって、判断又は選定の系列は理由の系列を無限に生成する。これは、理由を必要とする点で合理の系列である。他方、この系列を終止させられるのは決断又は選好である。これは、理由を必要としない点で不合理である。
5.不合理こそが合理の原初である。
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