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「映像の世紀 バタフライエフェクト〜宇宙への挑戦 夢と悪夢 天才たちの頭脳戦〜 (NHK ドキュメンタリー)

150年前に書かれたジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」は人々に宇宙への夢を駆り立て、東西冷戦下で米ソ二人の天才科学者の戦いが繰り広げられる。第二次世界大戦でヒトラーのために恐怖のミサイルを生み出し、戦後はアメリカに渡ってアポロ計画を指揮したフォン・ブラウン。ソ連のロケット開発責任者として人類初の有人飛行を成功させながら、世界にその存在を隠され続けた謎の英雄コロリョフ。人類の夢への挑戦の物語である。 (以上 公式HPより)

「宇宙への憧れが人を殺す」そう書くと身も蓋もないが、この番組を見た率直な感想である。宇宙や月旅行に憧れた子どもが、その夢を叶えるために努力する。だけなら良いが、現実には資金や政治力など俗な援助が必須なのだ。

本編の主役であるフォン・ブラウンは、まさにそれを体現した男。ナチスの科学者からアメリカの宇宙開発NASAの一員となり、念願の月旅行の立役者となる。

一方、フォン・ブラウンより先んじて有人宇宙飛行の仕掛人ながら死ぬまで存在を隠された男・コロリョフ。彼の生き様はまさに黒子というか、透明人間である。

対照的な二人の科学者の物語とパラレルで語られる、宇宙をめぐる世界情勢。先駆者として2人は幸せだったのかもしれない。しかし、宇宙開発の名の下に兵器の精巧さが進化するとは、皮肉すぎる。

フォン・ブラウンが憧れた「月世界旅行」の作者、ジュール・ヴェルヌの残した言葉を知る科学者は何人いるのだろう。「進歩は真理・正義・美に向かって魂を高めない限り、その名に値しない」科学や進歩に限らない、生きていく上で一番大切なのは、全てこの言葉に集約されていると思う。




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