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ギルバート・グレイプ (映画 1993)

気になっていたのに、なぜか今まで見てなかった映画。30年経って遅すぎる鑑賞だが、"名作は色褪せない"というのは本当だ。

「知的障害児アーニーを演じるレオナルド・ディカプリオが凄い」ときいていたが、もう演技には見えない、そのものだった。そんな彼を優しく守る兄・ギルバート=ジョニー・デップの魅力的なこと! 

映画の冒頭から醸し出される閉塞感は、ギルバートを取り巻く環境をより際立たせる。さびれた街、古ぼけた家、そこに暮らす巨漢の母親と障害を持つ弟。近隣に建ったスーパーのせいで客の少ない商店で働きながら、弟の面倒を見て、配達先の主婦とよろしくやる程度の楽しみしかない。そんなギルバートは、まさに最近話題のヤングケアラーだろう。

優しい彼は重荷となっている家族を置いて他の地へ行くわけにもいかず、自分のことは二の次。常に弟や家族を優先して生きるしかない彼の元に現れたのが、トレーラーハウスで放浪生活を送るベッキーだった。

縛られた日々を送る主人公の前に、異質な存在として現れる異性の存在。これは監督ラッセ・ハルストレムの秀作「サイダーハウス・ルール」の構造と似ている。あの作品は曲も良かったなあ。

淡々と進んでいくかと思いきや、ビックリするような事件も起き、飽きさせない2時間だった。とくに終盤のたたみかけるような展開は、家族の再構築と独立へと繋がっていき圧感だった。

作品の素晴らしさは言うに及ばず。ジョニー・デップがあんなに色っぽくカッコイイ男だった事を、再確認させる佳作だった。ディカプリオもジョニーも、今やすっかり貫禄がついたが、人のことは言えない自分。歳月とはそういうもなのね。





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