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「持続可能な推し事 推しと金、ファンと金」が100倍面白くなる解説集

※こちらは、電子書籍「持続可能な推し事 推しと金、ファンと金」を読んだことを前提に書かれたものです。


はじめに


 1冊目の電子書籍「推し事3.0宣言」を出した後に、ちょっと弱いなと思った内容がありました。
「推し事3.0宣言」は、自分の考えと実際に行動してみた結果の2部構成で作られていたのですが、自分の身の回りで出来ること、実際に出来たことに終始していたことです。
 言い変えれば、自分とは違う層の方にリーチする内容、自分よりもずっと若い層の方にリーチする内容かというとそうではありませんでした。僕には15歳年下の弟がいますが、大学での専門はブロックチェーン技術でした。
 商業系の大学生ならブロックチェーンは当たり前に学んでいるのに、今の僕からしたらとても新しい技術のように見えています。このギャップは埋めて置いた方が良いなと思いました。前作ではWEB3環境の活用については、さわり程度だったので、本格的に推し事と組み合わせたらどうなるかを考えてみたいと思っていました。
 また、スポーツビジネスについては、国内のサッカー業界での変革が大きかったと思います。選手からビジネスを立ち上げる人も増えましたし、チームの存続の為にどんな地元企業との連携をしているか、また、サッカー未経験者からクラブ運営に関わる人も出てきました。一言でいうと、風通しの良さを僕は感じました。
 もう一つ、入れておきたいものとして、「アート思考」がありました。アートを日常の中に置くことによってインスピレーションが生まれる。これは創作をされる方ならば、積極的に様々なものに触れるのに似ているかも知れません。また、模写することを重視して、語ることよりも描くことをさせるだけの日本の美術教育についても前々から疑問がありました。たとえば、MVを一つ観た時に、どんなことを考え、何を語るか。「尊い!」だけだと少し寂しいなと思っていれました。
 最後に、わりと20代の終わりから30代前半にかけてアイドルに収入のかなりの割合を使ってきた人間として、「あれ、どれぐらい意味があったんだろう?」とふと立ち止まって考えてみたくなったというのもあります。何か有効な使い方もあるんじゃないの、というところがスタートです。

「何故、君は生誕Tシャツを買うのか?」

「さよなら生写真」



 生誕Tシャツという外部の人からしたら、いったいこんな素人の落書きみたいなデザインに何の価値が?と思うものに宿る意味からこの本はスタートさせました。
 何故なら、この本を通して「意味」や「価値」は何度も出てくるからです。そして、便利さや多さで勝負すると不利になることが多い、アイドルのグッズにおいて、「意味」や「価値」はそれを凌駕すると僕は考えています。
 この記事を書くために久しぶりにSKE48の公式サイトの生誕Tシャツのページを観ましたが、そこにはそのメンバーの持つドラマや趣味嗜好、サイリウムカラーなど分かる人にはちゃんと「意味」が理解できるものが並んでいました。かくいう僕も、いまだに五十嵐早香さんの生誕Tシャツである「食欲の夜」が背中にプリントされたTシャツを着て「推し事3.0宣言」を書いていました。よくわかりませんが、一つのスイッチが入るのかも知れません。
 そして、生写真についてです。
 これに関しては、本当に使い道に迷うというか、ひょっとして買うまでがワクワクのピークなんじゃないか、と不安になることもあります。
 勿論、推しメンが出た時の「わあい、やったあ」という気持ちもあるんですが(40歳の文章です)。
 そこから、世界のアートシーンの話になり、写真というものについてもう一度考え直し、小さな生写真を自分で持つよりもフォトパネルを活用した方が良いのでは、という提案や、「撮る」という行為について書きました。この章では東川町の「写真甲子園」に助けてもらいました。
 ここで本書に書いていないことを書くと、「カメコ席」という隠語みたいな呼び方を止めた方が、もっと違う層も買いやすくなるのでは、ということです。完全にこの呼び方に慣れてらっしゃる方もいるかも知れませんが、僕はこの呼び方にどこか昭和の気持ち悪さを感じます。「カメコ」という響きにプライドを持ってらっしゃる方からしたら、そんな感覚的な理由で批判するなと思われるかも知れません。でも、もうちょいスマートな言い方あるでしょうよ、と思うということは書いておきたいです。

「転売の終わり」

 
 たまにグーグルで推しの名前を検索した時に「ショッピング」のカテゴリーでなんとも中途半端な値段で生写真が売られていたことが、この章を考え始めたきっかけです。
 あと、ブックオフですね。あそこで、元48のメンバーの写真集とかが300円ぐらいで投げ売りされていると悲しい気持ちになります。
 僕は転売行為には、ちゃんとした免許を持って商売されている方( たとえば古書肆免許をお持ちの方 )を除けば、値段をつける時の基準がどうしても大手フリマサイトやAmazonが基本になってくるかと思います。それに流されないで、きちんとそのものの価値を大事にした転売ってできないかな、できれば作成者にお金が入る転売ってないかな、と考えた時に出てきたのがNFTでした。
 少なくともこれを書いた時には、時代の先を行っていると思っていました。しかし、8月9日に古畑奈和ちゃんが限定100点で新曲のNFTデータをリリースしました。正直、日本ではヒップホップ界隈では動きが見られていたのは確認していたんですが、シャチフレ!とかもしてたんですね。しかも、NFTレコードさんは、85%アーティスト還元という破格の還元率。しかも、NFTのウォレットを100人に作らせたというのがデカすぎます。しかも、「OpenSea」で「META MASK」を作る時よりも手間がかからなかったのも良かったです。ぜひ、これからもこちらのレーベルで限定100点のものを出してほしいな、と個人的には思っております。
 話を戻すと、ウォレットを持ってない人たちにどうやってウォレットをもってもらうかがこれからの課題だと思います。この問題は、どうやって安全んで複雑でないウォレットを作るかにかかっていると思っています。
 ちなみに、日本では「FAN TOP」も最近、書籍関連のNFTを中心にダウンロードが伸びていますね。電子書籍のNFTを違うユーザーに送れるサービスは、写真集にも使えそうですね。そうすることで、興味はあるけど、写真集を買うのはちょっとという人にもリーチしやすくなるかな、と思います。そして、劇場のチケットやDMMの配信も、いい加減招待機能をつけても良いと僕は思っています。

「ただ聴くだけでも推し事だ!」

 
 僕が10年代後半から20年代前半に伸びたスタートアップについて勉強していた時に、Spotifyのダニエル・エグのアプリ制作とシステムについて知りました。
 これが抜群に面白くてNetflixのドラマも全話観ました。
 その中で再生回数とお金の関係について考えるようになりました。
 10年代に48グループがヒットチャートを一回破壊した上で、次に注目されたのが再生回数でした。
 多くのサブスクが無料で音楽を楽しめますし、毎日暇なら暇なほどいいです。
 再生回数が増えることで、国外のユーザーが聴くプレイリストにも入りやすくなるという戦い方は、外の世界とコネクトするのにはなかなか良い方法ではと思ったのですが、現実の数字をちょっと確認してみましょう。

Spotifyにおける月間リスナー数


AKB48 106.4万人
SKE48 5.2万人
STU48 2.9万人
乃木坂46 77.8万人
櫻坂46  14.6万人
欅坂46  31万人
日向坂46 18.4万人

 こうしてみると、ヒット曲を持ってるグループって強い!と感じますね。
 あとは、Spotifyの場合、BGM的に使われることも多いのでそういう意味でもAKBって意外と使い心地が良いのかもですね。

YouTubeにおける最新曲の再生回数



AKB48「どうしても君が好きだ」(2023年3月24日公開) 
394万回再生
SKE48「好きになっちゃった」(2023年6月9日公開)
62万回再生
STU48
STU48「息をする心」(2023年3月1日公開)
424万回再生
乃木坂46「おひとりさま天国」(2023年8月10日公開)
254万回再生
櫻坂46「Start over!」(2023年5月30日公開)
613万回再生
日向坂46「Am I raredy?」(2023年7月3日公開)
218万回再生

 ううむ、これはもっとデータを取ってから書いておけば、良かったと今、後悔しております。「Gacha POP」経由で海外に知られるは厳しいぞ、これ、と調べながら思いました。
 ダウンロード数に関しては今回調べていませんが、上記の数字と大きな乖離はないのでは、と考えています。
 これからどんなアプローチで再生回数の弱さを補っていくのか、それを超える違う勝ち方が何かあるのか?
 ここからは、まだ未知のゾーンです。ちなみにSTU48は数字がYouTubeではかなり強いですね。更にオンラインサロンもあるので、実は内部の充実度は凄いのではないかと僕は思っています。


「地方公共団体」と手を組む


 唯一、僕のライブ体験の要素が強い章ですね。
 実は、2021年から地方公共団体と推しとの関係をうまく繋げないか、と色々なアプローチをとっています。今年も某地方公共団体のnoteからSTU48の兵頭葵さんについて発信するチャンスがあったんですが、自分の本を書くのにいっぱいいっぱいなのと、転職先が忙しくて説明会にエントリーできなかったという悔しい思いをしました。
 どうしても地方都市は自分の街のタグを歴史か産業に求めてしまいがちです。そうなると、なかなか新しいタグって生まれません。過疎が進む町なら特に。そこで、新しいタグは「エンタメ」と聖地巡礼の関係から生まれるのでは、というのがこの章のスタートです。
 48グループの良いところは、メンバーの出身地と接続しているという成功例が多いことです。あとは、どこまでその「価値」や効果を示せるかです。これに関しては、以前、兵頭葵さんファンの方々にもご協力いただき、資料を市役所に提出しましたが、まだまだ結果にはつながっていません。
 本人の知名度アップは勿論ですが、町で推しを育てていく、応援していくという文化もありなんじゃないかな、と僕なんかは思います。総選挙の頃はそういう動きもあったのでは、と思います。ただ、田舎にいけばいくほど知らないものは遠ざけたり否定しておく人も多いというのが僕の肌感です。2018年の「伊達なお城祭り」に兵頭葵さんを読んだ時の資料は、オープンなものではないので、こちらに載せられませんでしたが、宇和島市の商工観光課の課長さんに「かける人 創刊準備号」の準備段階で、色々と宇和島市とアイドルの関係についてお話させてもらった時に、監修という形で色々と協力してもらえるかもと希望を持てたのですが、何分、僕自身の実績不足でまだまだ実現には至っていません。
 ただ、町のタグを増やすためにも「聖地」は今のうちに増やしておいた方が良いよ、というのが僕の考えです。
 また、「ふるさと納税」に関しても宇和島市の「ふるさと納税」担当の方に同グループでトライアングルセンターもつとめた中村舞さんと愛媛県とのふるさと納税の成功事例も含めた内容を昨年共有済みです。
 ああ、撒いた種が一つでも芽を出したらいいなあ。

「観客席をアップデートする」

 
 関西で学生をしていた頃、演劇学科の友人がバイト先にいました。
 新しい公演をするたびに、チケットをさばくのが大変そうでした。
 僕は演劇に関しては、そこまで明るい方ではありませんが、それでも、何か面白いものを観てみたいと、よく小さな小屋で演劇を観ていました。
 演劇をするには、小屋代だけでなく、舞台セットが必要になります。更に衣装代、チケットやリーフの印刷費、場合によっては照明や音響代も。
 彼らは一律、2500円のチケットをいつもカバンの中に入れていました。
 僕はある時、「SS席を10席作ってそこだけ1万円にして、残りを2000円にしたら?」と提案しました。その時の僕を観る軽蔑したような目が忘れられません。彼女は今、どこで何をしてるんだろう、という遠い思い出がこの章を書いたきっかけです。
 配信もなかった時代だったので、リアルで席を稼いでいくしかありませんが、今の時代だといくらでも賞味期限を延ばせます。よこにゃんが参加した演劇の予習の為に「観劇三昧」というアプリに加入した時は、様々な劇団の演目を観て「ああ、こういう面白い劇団があるんだ」という発見もありました。
 また、プロセスエコノミーも最近、演劇の世界にも来ていますが、同じくSKEでも公開稽古をやってましたね。
 ビップ席に関することは、阿波踊りなんかが「地元の人がこれない!」と叩かれていましたが、その為に予算がなくなるのもなあ、というのが僕の考えです。
 ちなみに、この章は個人的には結構、重要な章なのではと考えているのですが…。

おわりに


 巻末付録は、もうそのままの内容を最初に書いているので省略して、「おわりに」のポイントですが、こちらはなんといっても「ペイフォワード」という言葉です。「消費」ではなくて「次に回す」お金の使い方や推し事の仕方がないかな、とこの本を書きながら僕は辿り着きました。
 日本は高齢化社会です。
 今、いる老人たちが「我々の世代はギリギリ逃げ切れるから、まだ我慢しろよ」という人か「新しいことは難しいけど、次の世代のためにチャレンジしたい」という人かで大きく未来は変わってくると思います。 
 僕自身も今年40歳になったので、今推し事を楽しんでいる若い世代のファンの方々にちゃんとした形でバトンタッチできる方法を何か見つけていきたいなと考えています。
 それが持続可能な推し事につながるのかな、と思っております。


あとがきにかえて

 
 これで解説を終えようと思います。
 この本は出版までにトラブルでうまく原稿がアップロードされずに、1年間予約販売ができないというペナルティをアマゾンから与えられました。このあたりの絶望は、ぜひ「WEbのかける人」というマガジンの7月号を読んでみてください。

 神様がもし、いるなら「さあ、次は予約なしでどうやって読者に本を届ける?」という宿題をもらってしまった状況です。
 なので、次の本は内容だけでなく届け方も考えていかなければいけません。これからも色々と考えながら本を作っていくので、良かったら一緒にこの本づくりの日々を乗り越えてくださったら嬉しいです。
 この本はあくまで方法論であり、主役は読んでくださったあなたです。
 あなたの推し事が少しでも豊かになったら幸いです。
前作「推し事3.0宣言」はこちら。


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