呼び方の変遷
うちの猫の話である
もう15年くらいの付き合いになるので、実をいうと妻より長く過ごしている。まだまだ元気な三毛猫である。ちなみにメスだ。三毛猫はメスばかりだという。
うちに来た当初、ぼくは「うしおととら」という漫画にハマっていたので、その登場キャラクターから安易に「とら」と名付けた。しかしよくよく考えてみたら、メスに「とら」はないなあと思い、「とらみ」にした。
動物病院に響く声
殺処分一歩手前だったとらみちゃん。病院に行っていなかったようなので、連れていった。問診票のようなものに、ペットの名前を書く欄があったので「かとうとらみ」と書いて順番を待っていたら、担当の獣医さんが「かとうさん、えー、とらみちゃーん」と呼んだ。なぜかもの凄く恥ずかしくなって、赤面した。改名してあげようと思った。動物病院から帰宅後、とらみは「とらにゃん」となった。
そこからしばらくとらにゃんの時代
より猫っぽくなった「とらにゃん」という名前。ぼくはすごく気に入っていた。本人がどうかは知らないが、いつしかとらにゃんと呼べば来るようになっていた。
たまに「にゃんきちぃ」などとふざけたりするが、やっぱり「とらにゃん」はしっくりくる。月日は流れていった。
不意に英語圏の風が吹いた
「とぅわにゃん」
なんだったのだろう。洋画を観ていたのだろうか。ふと「とぅわちゃん」と呼んでみたら、「ほにゃあ」と言って、彼女はぼくの膝の上にきた。彼女も気に入ったのだろうか。ぼくはそこからしばらく、「とぅわにゃん」、あるいは「とるぅわにゃん」と呼ぶようになってしまった。変な癖がついてしまったのである。しかし彼女は満更でもなさそうにしていた。
ぼくは映画をよく観る。いや、正しくは、映画をよく流している、だ。作品の制作中は画面を観る事ができないからだ。でも音声は聴こえてくる。セリフは日本語吹き替えではなく、俳優さんの声で。
ふたたびぼくに、洋画の風が吹いていた。
「とぅうぇにゃん」
今では、彼女をそう呼んでいる。
最近はずっと「は?」みたいな顔をしている。さすがにそうだろう。
老猫の域に差し掛かってきたとぅうぇにゃんであるが、まだまだ長生きしてもらいたいものである。
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