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ポジジョントーク

5月11日(木)D病院へ

以前読んだ藤巻健史の本に書いてあった「ポジショントーク」という言葉。自分のポジション(金融用語で、どのような買い建て、売り建てを行っているかという持ち高の状況)にとって有利な方向に導くために情報を流したり、発言したりすること。つまり、自分に都合のいい主観的意見を、客観的説明のごとく表現することという意味。
藤巻氏は、それを偏った無駄な発言だということではなく、自己資金も投入しているファンド運営者のポジショントークは、それだけ必死だから、客観的な分析結果よりも上回る事があるという文脈で使っていたと思います。
D病院に行く前にそんな言葉を思い出しました。ポジショントークには気をつけなければと思いましたが、すでにN大からは何もできることがないといわれているので、正直藁にもすがる思いでした。

D病院に行く前に時間があったので、K病院に寄ってN大からのデータを渡し、受診結果を報告しました。K先生も、N大同様に手術は出来ず、何も出来ることはないというスタンスでした。
ただ、放射線治療や抗ガン剤の事はN大から話がなかったかということを気にしていて、私からも確認してみますと言ってくれました。

K先生は腫瘍で顔が変形したり口がふさがって息ができなくなったり、食べられなくなることを「生き地獄」ですよと言って、やはり胃ろうを勧められました。しかし、胃ろうの施術はK病院では出来ないようで、結局N大でやってもらうということでした。
フランに出来ることは緩和として胃ろうと呼吸確保のため軟口蓋の切除という点では完全にN大と一致していました。

子宮蓄膿症の治療もせっかくうまくいったのに残念だけどこれも運命。運が悪かった。いっぱい美味しいもの食べさせてあげて、散歩させてあげてください、とK先生は言ってました。痛みが減るからということで軟膏をもらってK病院を出ました。

駅からモノレールとバスを乗り継いでD病院へ。午後の診療時間が始まってすぐでしたが、すでに待ちがいて一件辺りの診療時間が結構長い印象。そこそこの時間待って、診察室へ呼ばれました。

セカンドオピニオンを希望すること、午前中にN大で出来ることはないといわれて・・・と話し出すと、先生は首をすくめて、はぁ、またあそこですか。みたいな感じのジェスチャー。
ポジショントークがきつめかなと警戒しましたが、これまでの状況を話していく過程で、D病院では、生検は午前あずかって午後帰しているし、結果も3日あれば出る。(フランは生検のためN大で二泊三日し、結果は一週間後)ということや、短頭種の麻酔が危険と言われているけど、麻酔から覚めるタイミングを気を付ければ何も怖いことはない。気管チューブを外すタイミングと外してから舌をひっぱっておけば何も怖いことはないんです。(N大では鼻の入り口のカットと軟口蓋の切除を勧められました)などなど、今まで受けていた治療との客観的な違いに、ポジショントークだけではなさそうな治療技術の決定的な違いに、聞くこと聞くこと、カルチャーショックでした。

先生が言うには、確かにフランの腫瘍の位置では手術は厳しい。けれど外科手術出来なければ、放射線・抗ガン剤治療を行うのは当然の流れ。N大には放射線装置がないから、何もいわなかったんじゃないかとのこと。何の治療もせず、胃ろうなんかして栄養だけ与えて腫瘍だけが大きくなって「生き地獄」ですよと先生は言いました。「生き地獄」の定義が病院によって違うのは面白いなと思いました。

ヨメと話しあってN大の高度な医療に賭けようと決めたのは完全に外れました。何度も書きますが無知は罪です。「養生訓」でいうところの「子には親たるの義務を果たさぬのと同じだ。」、つまり飼い主としての義務を果たさなかったのと同じことです。

N大も昔は循環器にいい先生がいたけど、その先生がいなくなってしまってからは、酷い失敗の話しか聞きませんよ。いつか何かやらかしてなくなるんじゃないか。とまで言っていたのにはびっくりしました。

とにかく放射線治療。4回目できれいに腫瘍が無くなった事例もあるからやってみましょう。とのことで、その場でA大附属動物病院の担当の先生に直接連絡して、早ければ明日!空いてなければ来週!という感じで勢いよく予約を取ってくれました。
さすがに翌日は無理でしたが、6日後の水曜日の予約を取ってくれました。放射線治療は火水木金(火曜は午前中のみ)にやっているらしく、実質3日後の予約です。

K病院からN大を紹介してもらうにあたっては二週間待たされました。紹介状の作成にも数日かかりました。そして検査することを決めてからさらに一週間。あれはなんだったんでしょうか。

そして、午前には手の施しようがないと言われた最悪の状況から、午後には放射線治療の予約が一瞬にして完了。しかも一週間も空かずに治療が出来る。治療技術のカルチャーショックを受けている間に、あっという間に話が決まりました。とにかく、フランにしてあげられる事があるというだけでも大感動でした。おかげで少し罪悪感が消えました。

N大の生検の結果で病名が確定するのは、再度の検査の手間が省けるので、それだけは聞いておいても損はないですよとのことでした。
逆に言うと、それしか価値がないというように聞こえました。

<費用>K病院 軟膏代   約2000円
    D病院 初診料のみ 約1500円

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