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映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』監督記:62 クレヨンハウス

2021/10/23 晴れ。東京の表参道にあるクレヨンハウスは、元アナウンサーで作家の落合恵子さんが45年前に創業した、絵本や木のおもちゃ、自然食品を販売するお店だ。今日は地下のオーガニックレストランで“朝の教室”という催し物があり、樋口元裁判長が講演する。コロナのために1度延期されたのちの開催。信頼する壱岐紀仁カメラマンと2人で撮ることにした。
 
個人情報という言葉が使われ始めてから、昔と違って講演会など大勢の人が集まる場所での撮影はお客さんの顔を写さないことが前提とされるようになった。主催者さんに撮影許可をいただく時点でそのことを約束するのが常になっているが、ときに登壇者の言葉よりもお客さんの表情の方が雄弁なことがある。撮る側としてはそれをぜひ収めたいのが本当のところだが、集まる方々一人ひとりに撮影の可否を伺ってOKならば、その方を撮れるようにしたいのだけれど、この人はOK、この人はNGということを踏まえて客席を撮るのは現実的には難しい。窮屈な世の中になったと思うのは作り手のエゴかもしれないけれどそれが本音で、コロナのためにみなさんがマスクをしていることを理由に溜飲を下げている。
 
クレヨンハウスのスタッフのみなさんは、とても協力的でレストランのオープン前に行われる講演会という慌ただしい状況でも撮影がうまくゆくようご配慮くださる。これも樋口さんを撮っているからこその役得なのだ。
30名以上のお客さんが集い、ネットでも配信される中、落合恵子さんの司会進行で講演が始まった。樋口さんのお話は、さらにブラッシュアップされてパワーポイントの資料もより直感的に伝わりやすくなっている。良い塩梅でシニカルな冗談が挟まれ客席の背中が揺れる。自分はカメラを三脚に据えて撮り、壱岐さんは自由に手持ちで撮る。この講演会で映画終盤の非常に重要な樋口さんの発言を撮ることが出来た。その画は壱岐さんが撮った。樋口さんの心を写しとった実に壱岐さんらしい画になっている。

カッコいい落合恵子さん

終演後は、クレヨンハウス3階の本屋さんで落合さんにインタビューした。世の中に散らばっている良いこと、良いものを集めるクレヨンハウスを主宰する落合さんの言葉は温かさと説得力を併せ持っている。樋口さんの活動の意義を優しく伝えられるインタビューだ。落合さんを撮っていると女の人の声はいいなぁ、と思う。男のインタビューばかり撮ってきたので劇場にやわらかなサウンドが満ちることが想像できる。これは二本松の大内農場の研修生、大島慶子さんを撮った時にも感じた。まったくもって不思議な偶然だが、大島さんはかつてこのクレヨンハウスで有機野菜の販売をしていたのであった。

撮影後にレストランでお昼をご馳走になった。スーパー美味しかった。落合さん、ごちそうさまでした!

<映画公式サイト>
https://saibancho-movie.com

<宣伝費を募るクラウドファンディング>
https://motion-gallery.net/projects/saibancho-movie


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