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コロナ騒動に見るリーダーのコミュニケーション術~その②

旅行に行け、帰省はするな。我々はいったい何を依頼・要望されているのか?うがい薬はいいのか悪いのか。事実見解はどうなっているのか?多くの人が求めている見通し展望はいつ、どのように示されるのか?本来、支持されるリーダーが伝える内容は「伝わる」ように意識して構成されている。前回の非言語的コミュニケーションに続き、今回は伝える内容、言語的コミュニケーションについて取り上げたい。

コミュニケーションは送り手が何らかの効果(行動変容)を期待して、メッセージを受け手に送るものである。

メッセージの受け手がメッセージに即した行動を取ることができて、初めてそのメッセージは伝わったことになる。「伝える」と「伝わる」の違いがここにある。「伝える」は受け手に情報を送るだけ、「伝わる」は受け手が行動変容することまで含む

日本では政治家や専門家の方々が伝わる伝え方、コミュニケーションに難儀している様子が窺える。

では、伝わるように伝えるにはどうしたらよいだろうか?

まずは伝える内容の構成である。
以下は前回提示した3点からの一部抜粋である。

伝える内容(事実・見解、依頼・要望、見通し・展望)

海外の事例にみるように、支持されるリーダーが伝える内容は「伝わる」ように意識して構成されている。

混乱の当初でも事実と見解をしっかり分離し、冷静に事実を提示しながら、専門家の意見も踏まえて自身の見解をリーダーは率直に述べていた。

そのうえで人々に協力を呼びかけ、依頼・要望を伝えていた。安易な憶測や目論見を交えることなく未知の領域にありながらも可能な限りの見通しや展望を示そうとしていた。

事実と見解、憶測や目論見がごちゃまぜの状態では何が、どれが依頼なのか、要望なのかも危うくなる。見通しや展望も示されなければ路頭に迷う人も増える。

リーダーからメッセージを受け取る受け手は多様である。受け手の属性、状況、状態を想像しながら伝え方を工夫することが求められる。

行動変容を求めるには受け手の自分ごと化を進めるコミュニケーションが必要になる。伝えられていることが自分に関係があり、自分はどうする必要があるのか、それはなぜなのかということが腹落ちしなければ受け手は行動しにくい。

自分ごと化を促すポイントとしては以下3つが挙げられる。
① 翻訳(一般用語への置換)
② 具体化(数字や事例の提示)
③ イメージ化(グラフや図、イラスト等の活用

当初、新型コロナウィルスという未知のものを前に医療や統計の専門用語などを使われてもピンとこないと感じた人は多かったのではないか。それぞれの専門家が話す言葉をリーダーは翻訳する必要があった。

本当に伝わるように伝えようと思えば、できるだけ専門用語やカタカナ用語を避け、一般的、日常的に使われている言葉に置き換える必要がある。昨今のカタカナばかりの伝え方は雰囲気や格好の良さを優先した伝え方で、多様な受け手に伝わるように配慮しているとは思えないところがある。

具体化やイメージ化は「3密(密閉、密集、密接の回避)」やいわゆるソーシャル・ディスタンス(1~2mの物理的距離を取る)のポスターなどが代表的である。このように、数字やイラストが提示されたことで人々はようやく行動しやすくなったと言える。

東京五輪の影響もあったと思うが当初、日本では見通し・展望に対してうまく伝えられることがなかった。一部の専門家が伝えてくれることや過去の歴史、海外の情報などをそれぞれの人が収集して、自分なりの見通し・展望をもって対応することになった。残念ながら今もそれは変わらないように思える。

コロナ下での経済活動が再開され、再び感染が拡大している今、それぞれのリーダーの発言はバラバラに見える。もちろん受け手の事情も人それぞれだから、それぞれが自分で考え、選択することは大切なことではある。ただ、その参考となる情報は適切に出され、伝えられているだろうか?

リーダーが今、伝えているメッセージは「伝わる」ように意識して構成(事実・見解、依頼・要望、見通し・展望)されているだろうか?

緊急措置として行われた給付金、補助金、融資や借換が無限に続けられる訳もないだろう。国や組織のリーダーのコミュニケーションの質がますます問われているように思える。

今日は広島、原爆の日。
命の軽重を特に考える8月はリーダーと人々との関係、コミュニケーションを考える月とも思える。

人々の不安不満にリーダーへの不信が重なって欲しくないものである。
一方で妄信もまたしかりであることは歴史が教えてくれている。


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コミュニケーションの要素を踏まえつつ、ニューヨーク州のクオモ知事やデンマークのフレデリクセン首相を例に、伝え方や伝える姿勢、非言語的コミュニケーションの重要性について書いた前回(5/10)はこちら。


歩く好奇心。ビジネス、起業、キャリアのコンサルタントが綴る雑感と臍曲がり視点の異論。