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2022年に聴いてたK-POPいろいろ

すっかりK-POPの話をしなくなったのだが、実は最近また熱心に聴くようになってきた。振り返ってみれば2022年はK-POP(のうち、私の聞いているヨジャドル界隈)にとって、直近3年で見て最も豊作な年だったと言っても過言ではないだろう。

流れ変わったなと思わせたのは、春先に(G)I-DLEが出した「Tomboy」だ。2021年のいざこざで、誰もが認めるエース・スジンが脱退したときにはもう正直おしまいだと思っていた。のだが、こんなに自信満々でやりたい放題なカムバを誰が予想しただろうか。ギター!ギター!ギター!なあまりにも懐古的なサウンドに、パンキーなビジュアル、当たり前のように車も大爆発だ。Melon Music Awardsでの放送禁止ワード解禁のアレンジバージョンも最高だった。こんなのはバズって当たり前なのだ。

「Tomboy」によって、ガールクラッシュというコンセプトはひとつの山を迎えた。いい加減来てほしいと思っていた節目が、ようやくやってきた感がある。もういくらカッコつけても、あの(G)I-DLEの二番煎じにしかならない、という意識がシーン全体においてどれだけ働いたのかは推測するしかないが、こうしてポストガールクラッシュの時代に以降するのはたいへん好ましいことだ。

それからはもうLE SSERAFIMの天下だ。デビューまもなくメンバーのひとりがキャンセルされるという、考えられる限り最悪の仕方で出鼻をくじかれたのに、煮詰まったという意味では結果的にはよかったと思わせる部分もある。「FEARLESS」しかり「ANTIFRAGILE」しかり、バババンバンやらアチチチーやらと、癖になる音で構成されたトラックも強い(紅白に合わせて「FEARLESS」の雑な日本語版を用意してきたのは無茶すぎて笑ったが)。なにより、kawaiiともガールクラッシュとも決定的に違う雰囲気が、このグループにはある。衣装がいちいち洗練されていておしゃれなのだ。着せられている感じがなく、ふだんからおしゃれな女子たちが、ハイブランド身にまとって踊っているというゴージャス感がある。それでいて、メンバーはみな気さくなキャラクターで、お高く止まっている風でもない。チェウォンは、IZ*ONEではわりと地味なメンバーだったと思うが、名実ともに今日のシーンにおけるトップランナーとなった感がある。あの黒髪ボブの破壊力は、冗談抜きにオルチャンというひとつの美意識をぐいっと方向転換させたと思う。文春はまじで謝ろうな。

ようやく軌道に乗りなおしたRed Velvetも頑張っていた。しかし、「Feel My Rhythm」も「Birthday」も、私のかのグループへのコミットメントを差し引けば、そんなにリピートするほどの曲ではないだろう。とくに前者は、バレエコンセプトなんてレッベルに合わないはずがないので、爆発しきれなかったのが惜しい。サビで合唱になるのはいかにも彼女たちらしいが、メロディがちょっとシンガロングすぎて緊張感を欠いているのだ。後者は初期のレッベルっぽいテイストで、とくに新しみはなかった。スルギのソロ「28 Reasons」は、ちょっと小難しくしすぎた感がある。圧があって疲れるので、何度も聞こうとはあまり思えない曲だ。

これまた贔屓にしているfromis_9も頑張っていた。「Stay This Way」はさすがに安易だったと思うが、「DM」はさっくりまとまった佳作だった。初期からそうだが、わけわからんガールクラッシュに迷走することもなく、シンプルにグッドメロディな曲を歌うことが多いので、安心感のあるグループだ。いつぞやの泥沼スキャンダルにもかかわらず、本当にポテンシャルのあるグループだと思っているので、なんていうか、幸せになってほしい。アニソンっぽい曲が多いので、日本でも絶対に人気が出るはずだ。ギュリがぬるっと脱退したのは謎だったが、気を取り直して今年も頑張ってほしい。

TWICEの「Talk that Talk」はバシッとキメすぎてて、もう少しスキがあったほうが彼女たちらしさがあっただろうと思う。その点、ナヨンがソロでリリースした「POP!」は💯だった。POP!以外にナヨンという人物を形容するベターな言葉が思いつかないほど、彼女のキャラクターにガッチリハマったカムバだろう。ダンスもかわいいし、なによりナヨンがのびのびとアクトしているのが伝わってきてかわいい。あんなマライア・キャリーみたいなどぎつい赤の衣装をトレーラーで見たときにはどうなるかと思ったが、結果的には2022年最高のパフォーマンスのひとつとなった。

ルセラ以外のデビュー組としては、XGがいまかなり面白い。グループのカラーとしてはCLCとかあの辺の系譜だと思うが、ガツンとヒップホップ要素入れてきたのもあって、かなり本格派だ。サイファーと称して発表しているラップ集もめちゃレベル高いあたりに、バックに控えている制作陣の本気が伺える。刺さる人にはぶっ刺さるジャンルなので、今年はもっともっと話題になるだろう。

それからもちろん、NewJeansの登場に言及しないことには、お前は一体なにを聴いていたんだと言われることだろう。このグループのデビューに立ち会えただけで、ここ数年にわたってK-POPを追ってきたかいがあるというものだ。曲が始まるまでやたらと長いMVばかりで、腰を据えて聴くようになるまではなにがしたいのか分からなかったが、いやはやこれはすごいぞ。常々Red Velvetに関して称賛していた要素であり、本来だったらLOONAが引き継いでいたはずの、コンセプチュアルでミステリアス、ちょっとホラーな世界観が贅沢大放出なのだ。SMでRed Velvetらのコンセプトを手掛けていた人がディレクターと聞いて、腑に落ちすぎてふにゃふにゃになった。「Attention」はすごく洗練された曲だったし、「Ditto」ではようやくこのグループの真髄が垣間見えた気がする(MVがしっかり怖い)。ダンスもシンプルながらバウンシーでかっこいい。どちらもトラックがこなれていて、10代そこらの子たちに歌わせるには苦労しそうなのだが、例のミステリアスな質のなかに自然と落とし込まれている。それから、制服姿でようやく気づいたが、全員黒髪ロングだ……。その辺のドッペルゲンガー的な不気味さも初期のRed Velvetっぽい。今年の年始に出た「OMG」もきれいなメロディになにかと訳のありそうなMVで、かなりよかった。MVのストーリーを深読みするような楽しみ方はもうどこでもできないと思っていたところに、これ以上ないプレゼントだ。とはいえ、K-POPの新時代を担うには、メンバーたちが圧倒的に若いので、いろいろなケアを含めて持続可能な仕方で売っていってほしい。

ちゃんと聴いてないが、Kep1erはかつてのPRISTINを彷彿とさせるキャピキャピ感で、いまのところ競合が少ないのでこのまま突っ走ってほしい。もうちょっとグッと来る曲が出たら聞こうという感じだ。IVENMIXXはなんだかどうもnot for meで、ぜんぜん聴いていない。前者は、私が知らないだけかもしれないが、ウォニョンの圧倒的スペックにおんぶにだっこな感じで、ちょっとバランスがわるそうだ。後者については、どう売っていこうとしているのかまだぜんぜん分からない。

個人的にはEXIDがちょっとだけ活動していたのがエモかった。すごく思い入れのあるグループなので。「FIRE」は面白い曲ではないが、Killing VoiceのEXIDが聞けたのは感無量だ。LEまじでラップうまい。すっかり解散するにはあまりにももったいないし、メンバー同士いまだに仲良さそうなので、節目ごとにこうちょびっと同窓会してほしい。謎に文化的盗用とかケチ付けられて、「FIRE」のMVが一部モザイク処理されたのはご愛嬌。

ITZYBLACKPINKMAMAMOOは貯金で食いつないでいる感じで、特筆すべき活躍はしていない。いや、BLACKPINKなんかはバチバチに売れているのだが、いまや箸を転がしても爆笑してもらえるポジションに入っただけだろう。どうも気に食わないので、着々とアンチになりつつある。
aespaは「Girl」とかいうわけのわからん曲でグループとして大幅に遅れをとったと思う。誰がどう見てもダサい振り付けは、誰かが事前に気づいて静止すべきだっただろう。相変わらずKWANGYAがどうたらしゃらくさいことを歌い続けているが、聞き手も作り手も飽きつつあるんじゃないかと思う。不本意ながらRed Velvetも含めて、最近のSMはあまりおもしろいことできていない印象を受ける。
ところで、EVERGLOWに活動がなかったのも残念だ。最近ようやくグレートファイアウォールを越えてイロンの姿が可視化されるようになったので、今年に期待だ。

最後に、ちょっとカテゴリーが違うが、ソンミの「Heart Burn」は文句なしにベストトラックのひとつなので必聴だ。この人の作品は毎度別格すぎる。良すぎる曲については語れることがほとんどない。MVも愉快でハッピー。

もうひとつだけ。YUKIKAの「Scent」もめちゃくちゃ聴いてた。カムバというよりはシングルリリースなだけっぽくて、番組とかにも出ておらず、熱心に売る気がなさそうなのがたいへんもったいなかった。ご結婚おめでとうございます。

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