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それで

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それで 四

それで 四

 「あんたトヨちゃん散歩連れてってくれる?」
 「気持ち悪ィな。勝手に名前変えんな。トヨタクな。トヨちゃんて呼ぶな。金輪際」言ってやって、トヨタクにヒモつけてやって、家出る。
 トヨちゃんじゃねえ。トヨタクだ。この犬の名前がトヨタクだから面白いのだ。街中で俺がトヨタク!と呼ぶとする。すると通行人達は口々に「え!あの有名俳優の豊田拓熊!」と振り返る。そこには小さい一歩を誤魔化す様にチコチコと、絶妙に

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それで 三

それで 三

 親父はとっくにネットから足を洗っているらしい。あれ以降初めて入るタタミの部屋は、所謂、普通の和室になっていて、引きこもりの様な酸っぱい臭いはしなかった。マナーのつもりなのだろうかパンティイに付いていたのであろう香水の匂いも、ウンコの臭いもしなかった。
 トヨタクと一緒に畳に横になれば、しっかりと畳の匂いがして、そのまま眠りに落ちる。
 「オキロ!おいオキロ!なーに寝てんだよ!」「メシだって言って

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それで 二

それで 二

 東京には居られなくなったので、とりあえず実家に帰ってきた。母とは随分連絡を取っていなかったが、すんなり家に入れてくれた。
 トヨタクはまだ生きていた。トヨタクは雌である。雌犬が俳優、豊田拓熊の愛称で生きてもいいじゃないかと俺は思う。その昔百閒がした様に、女のトヨタクで構わぬ事にした。
 縁側で太陽を浴びながらヨボヨボの皮を寄せて広げて遊ぶ。離してやると、庭で走り回って糞をした。コイツには、昔から

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それで 一

それで 一

 「はい、それじゃあ今日の検証企画はこちらっ」
 「ソレでブリって米澤みると、うるさ過ぎて死ぬ、説ぅううう!よいしょおお!」
 それはあの、元アイドルのオヤジタレント、御茶の間の支持をもつ御意見番、米澤國夫が例にならってビーサン短パンで「やぁめぇろぉよ」「だぁかぁらぁ」などと騒ぐVTRを、ソレをやったトリップ状態で視聴したら、煩すぎて観ているこっちが耐えられなくなって死ぬんじゃねーの、てか死んだら

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