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力を奪う問い、力を広げる問い

「突然ですが、質問です。あなたのお部屋は片付いていますか?」

この「突然ですが、質問です」という問いかけで始まる文章は、noteでもアメブロでも、非常に多く見かける。
おそらく始まりは教養系のテレビ番組など、映像の世界から始まったのではないかと思う。問いかけというのは、その問いかけている人物に注目を惹きつける力が強く、聴衆の意識を惹きつけたい時に便利だ。

「なぜすぐやらないのですか?そうやって言い訳ばかりしているから、あなたはダメなんですよ」

冒頭だけでなく、文章の中にも問いかけはよく使われる。
問いは読み手をハッと立ち止ませる効果がある。ずっと階段を登っていると辛いけど、踊り場が途中であると少し息がつけるように、文章の中に疑問文を持ってくる人が多い。
しかし、プロのエッセイストやコラムニストは文中で疑問文を使うことはほとんどない。それは、なぜか。(と、問いかけてみる)

答えは、読み手の心理状態により「質問が詰問に感じられる時があるから」である。
書き手はただ会話のキャッチボールのように問いかけを投げているだけかもしれないが、読み手にとっては責められているように感じることがある。

例えば「あなたのお部屋、片付いてますか?」という疑問文。
部屋が片付いている人はなんとも思わないかもしれないが、部屋を片付けられず、そのことにコンプレックスや不安を抱えている人にとっては「だから何ですか」とちょっとイラッとくることがあるかもしれない。

子どもをつい叱ってしまい、そのことで罪悪感や劣等感に苦しむお母さんに「お子さんをつい叱ってはいませんか?いつまでダメな母親でいるつもりですか?」と問いかけるのは

「私がなんで怒ってるかわかる?」「私と仕事、どっちが大事なの?」と言った問いかけと同じように、質問をしているテイで相手を追い詰めていることと同じだったりする。

どうしても文章の中で問いかけをしたい場合は、質問の対象を「あなた」から「人類全体」に拡大してみるのがおすすめだ。
「どうして人は、部屋を散らかしてしまうのだろうか」や、「なぜ子どもを叱ってはいけないのだろうか」など、私もそうだけど人ってそうだよね、という立ち位置で書かれた問いかけは、スッと受け取りやすくなる。

そもそも、問いかけというのは質問の意図をある程度明らかにしていること、断ったり間違っても良いという選択肢があることを指し示すことは、最低限のマナーのように思われる。

私などは上司に「これが何でダメかわかる?」と詰められると「お前はめんどくさい彼女か」と突っ込みたくなるが、これは文章でも同じ。

相手の力を広げる問いと、力を奪う問い。
同じ言葉なら、広げる方向でどんどん使っていきたい。


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