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ご当地怪談一気読み! 感想&オススメ紹介

 暑くなってきましたね。
 そう、暑くなってきたら怪談ですよね。そう、つまり竹書房怪談文庫の出番です。

 え? そんな習慣ない?
 勿体無い……損してますよ!?

 竹書房怪談文庫はその名の通り実録怪談に特化した文庫です。年に一冊刊行の『「超」怖い話』シリーズを始め、さまざまな怪談本を発売しています。

 その中から、今回はご当地怪談シリーズから18冊読ませていただきました。
 方言が彩る怪談。地元民にはお馴染みの「あそこ」にまつわる話。観光客が行き交う有名観光地の裏の顔。
 怪談に縁がない方も、縁のある地方の怪談だけでも読んでみませんか?

 「怖い怪談が読みたい!」「怖いのは苦手だけど、怪談に挑戦したい!」そんな方に向けてそれぞれ三冊ずつオススメを独断で選んでみました。感想と共に軽く紹介していきます。

 ぜひ夏の読書・怪談を堪能してください!


これぞ、怪談! 怪談好きも満足できるTOP3

1位 方言、魅せる怪しさ。

 ご当地怪談シリーズ、魅力の一つは「方言」
 奥羽……現在の東北
 東北の朴訥とした方言には、奥羽の歴史を感じざるを得ません。奥羽の歴史を背負った怪談には深みがあります。

 方言が彩る怪談を是非とも味わってみてください。

 このタイトルの良さはもう一つ。
 複著なんです!
 実録怪談には、単著と複著があります。小説だとアンソロジー短編くらいしか複著はありませんが、実録怪談集では半分くらいは複著になっています。
 そんな複著の良さは、百物語のように、いろんな人が集まっていろんな怪談を語り合う雰囲気を味わえること。実録怪談を味わう上で、外せないポイントです。
 好みもありますが、一度は複著の実録怪談本を読んでほしい次第です。

 このタイトル以外に、ご当地怪談シリーズの中で方言で楽しめるのは、『大阪怪談』『出雲怪談』
 『大阪怪談』の関西弁とホラーのアンバランスもまた味がありました。その土地ならではの方言を楽しみたい方は、是非こちらも手に取ってみてくださいね。


2位 とても夏らしい一冊。

 なんと、この怪談本、「ビーチにようこそ!」から始まります。
 こんなに明るく爽やかに始まる怪談本に出会ったことがありません。

 しかも、ちゃんと怖いんです。

 怪談といえば、夏
 けれど、実録怪談は実際の取材を元にしていますから、夏の話ばかり集めるというわけにはいきません。ですから、夏らしさにフォーカスした怪談本もまたなかなかないのも実情。
 ところが、このタイトルは、海、浜辺、サーファー……といった夏らしいキーワードがたくさん。

 まさに、「暑くなってきたから、怪談を読みたい」という要望にピッタリな、季節感も感じられる一冊になっています。
 海や浜に関連する怪談ばかりが集まっているけれど、それでも一冊通して飽きないのもポイント

 ご当地怪談の著者は、多くは出身地の方が選ばれています。そんな著者の地元愛もご当地怪談の良さ。
 「湘南はビーチだけじゃないんだぜ」という地元民もいらっしゃるでしょう。内陸部の話もちゃんと収録されています。
 一冊読み通すと、著者の溢れんばかりの「湘南愛」を感じざるを得ません。


3位 怪談師が語る、北海道の怖い話。

 『北縁怪談』は三冊刊行されているのですが、その中で一番「北海道らしさ」を感じた一冊目をおすすめしたい次第です。

 北の怪談師こと匠平さんは、怪談ライブをするお店で語り手を務める、それこそ怪談のプロ
 怪談は語りでもあります。ですから、ライターよりも語りを生業にしている著者の方が、不思議と文字で綴られた怪談も上手いと感じたりするんですね。
 本タイトルもその類にもれず、一気読みしてしまうほど匠平さんの怪談ワールドに引き込まれてしまいます

 「怖さ」の描き方のうまさはもちろんですが、それぞれの怪談の選出センスも抜群です。
 怪談には、「寝れないほど怖い話」以外にも、「ちょっと不思議な話」や「心が温かくなる話」なんかもあるんですね。そういったいろんなタイプの怪談がバランスよく収められています。
 このセンスって怪談本に不可欠なんです。いくら怖い話でも同じようなテイストが続くと飽きてくるでしょ? 内容に飽きることなく、一冊を長いと感じることなく一気読みできるように仕上がっています。

 どんな話が収録されているか、実際にあなたの目を通して確かめてみてください。

 匠平さんはYouTube投稿もされているので、「語りで聞きたい!」「怪談をもっと!」という方は、こちらもチェックしてみてくださいね。
 文字で読むのはともかく、耳で聞くと恐怖のキャパが超えちゃうわたしは、ご遠慮させていただきますが……。



怖いのは苦手。それでも怪談を楽しみたいTOP3

1位 旅行記のような楽しい一冊

 関西という広い範囲を一人の著者がカバーしているせいか、取材旅行記のような読了感が特徴の一冊です。
  語り口のような書き口で、とても読みやすいです。女性ブロガーのような文体で、怖さよりも親しみが湧いてきます。

 怪談を初めて読む方に向けた「怪談入門書」にはピッタリの一冊です。
 人怖系や都市伝説のような話も多く、実録怪談集としてはあまりない切り口です。実際のところは、実録怪談を多数読んできたような怪談好きには少し物足りなさがあります。 
 根っからの怪談好きはアンマッチを避けるために、他のタイトルを手に取ったほうがいいかもしれません。

 馴染みの場所が出てくるのもご当地怪談の魅力の一つ
 関西という広い範囲が舞台になっていますので、地元民でなくても聞いたことがあったり、行ったことがあったりする場所が登場します。
 なかなか国内旅行にもいけないこのご時世、気軽に関西への旅行気分を味わえるかもしれません。

 このタイトルを気に入って、この著者の他のタイトルを読みたくなった方へ。
 同著者の『大阪怪談』の前半はかなり怖くなっています。その続編の『大阪怪談 人斬り』は本タイトルと同じような文体で書かれていますから、そちらを手に取ってみてくださいね


二位 民話再録。一風変わった実録怪談

 信州、現在の長野県を舞台にした一冊です。
 このタイトルの特徴は、半分ほどが民話の再録であること。
 現在の怪談と昔から伝わる怪談の両方を紹介し、時代のつながりが感じられる構成になっています。

 けれど、怪談好きには物足りなさもあります
 六部殺しや狐憑きなど、怪談好きなら一度は聞いたことのある類話の収録が多く、新しい話やインパクトを求めて読んでいる方には肌に合わない一冊です。
 特に、「実録怪談」にこだわって好んでいる方には、「現代の怪異を読みたい」「自分が出会うかもという恐怖を味わいたい」という方が多いと思います。
 そういう方には、あまり向いていないと言わざるを得ません。

 その反面、「どこかで聞いたことのある」そして「昔の話」という点では、「怖すぎるのは遠慮したい」という方にはピッタリかもしれません。
 民話の収録という他の怪談本にないアプローチで人気を博し、シリーズ二冊目も出ています。ぜひ、本書が気に入った方は、そちらも手に取ってみてくださいね。


三位 「分からない」は怖い。なら……

 怪談を語る怪談作家の方々のバックグラウンドは、多様です。この『静岡怪談』の著者はなんと女医さん。
 女医さんならではの視点で語られる怪談はまた一味違ったものがあります。

 収録話は怖い話が多いのですが、その女医さんならではの文体で怖さが緩和されています。
 怪異は、なぜ起こるのか分からず、そして無慈悲なもの。だから、怖い。
 けれど、この著者は、科学的に解明するような文章で締められています。そのため、後味の怖さが緩和された読了感になっています。

 1・2位のタイトルを読んで、「もっと怖い怪談に挑戦したい! でも怖すぎるのは……」と二の足を踏んでいる方におすすめしたい一冊です。


COLUMN 怖すぎるのはダメ……でも、怪談に挑戦したい!!

 怖い話が苦手でも、実録怪談に挑戦したい。そんな方へKindle Unlimitedならではのオススメな読み方を紹介します。

 「何事も最初が肝心」。そして、「終わりよければすべてよし」。このような言葉に表されているように、「最初」と「最後」が人の記憶には残りやすいのです。心理学の分野でも科学的に実証されていて、「初頭効果」と「新近効果」として知られています。
 実録怪談に限らず短編集を編む上でも、少なからず意識されています。どんどん読みたくなるようなものを最初に。余韻の残る読了感のものを最後に。そう配置することで、同じ話を組み合わせてもより満足感のある一冊を作ることができます。

 実録怪談においては、一冊の中でもより怖い話が冒頭に、余韻のある話が後半に配置される傾向があります。
 真ん中は言わずもがな、取材日誌みたいな話が混じったり、少なからず尺を稼ぐような話も入ってきます。
 つまり、「怖いすぎるのはダメ」「怪談の雰囲気だけを味わいたい」という人は、一冊の真ん中だけを読んで仕舞えばいいのです。Kindle本は%で進行度が表示されますが、大体25%くらいから読み始めて、怖すぎる話が出てきた時点で読むのをやめてしまいましょう。
 
ただし、著者順で並んでいる複著のタイトル(ご当地怪談シリーズでは『京都怪談』のみ)では、この読み方はできないので注意してくださいね。

 一冊を買ってしまうと、どうしても「全部読まなきゃ勿体無い」と思ってしまいます。ですが、Kindle Unlimitedなら、全部読むのも少し読むのも同じ。

 ぜひ、実録怪談にチャレンジしてみてください!

 

地方別一覧

北海道・東北地方

関東地方

中部地方

近畿地方

中国地方


最後に。竹書房さんへ

 noteに竹書房さんがいらっしゃるんですよね。
 もしかしたら竹書房さんに届くかもしれない。なので、この記事を作ろうと思ったきっかけを書かせていただきたいと思います。

 毎年暑い時期になると、竹書房怪談文庫さんの実録怪談には大変お世話になっています。

 ですが……問題が一つ。
 Amazonの検索で、なかなかシリーズものをひっかけるキーワードがなくて探すのが大変なんです。
 結局、「この本を読んだ購入者はこれも読んでいます」「この商品に関連する商品」から探すしか方法がないんですね。

 この記事を書くときも、「沖縄ないじゃん、ないわけないでしょ〜」「沖縄、沖縄、琉球さどこさ〜」って探したんですけど、『琉球奇譚』シリーズにたどり着いたのはついさっき。
 この記事をあらかた書き終えたところでした。

 ですから、ぜひ、竹書房さんはシリーズものを全巻まとめたnote記事を作っていただけたらなと思うんです。(えーと、表紙にリンクを貼り付けるスタイルはPCでも読みにくいので、できたらAmazonのバーナーでお願いします……)
 有名シリーズこそですよ! あの干支の一文字のやつとかです。そもそも干支一周ってからは次巻のタイトルがわからないし、刊行順に読みたくても一見順番もわからない。
 読書メーターから飛んで探すとかそういう方法を駆使して探し出したんですが、そこまでして読む人は少ないと思うんです。

 今回、勝手ながらまとめさせていただいたご当地怪談シリーズは、著者が別々な上、緩やかなシリーズなので、なかなか探し出す難易度が高かったです。
 『(土地名)怪談』となっているタイトルのみを対象にさせていただいたので、『琉球奇譚』なんかが漏れてしまう結果になってしまったのですが……。
 他にもご当地怪談に当てはまるタイトルがありそうなんですよね。

 既存タイトルへのアクセスのしにくさは、そのまま読者へ届かない状態に直結します
 そこで、note記事にシリーズのタイトルを整理していただくと、とってもみやすいですし、次の読書の参考にもなります。既刊がもっともっと読者に届くと思うんです
 勝手なお願いながら、ご一考お願いしたい次第です。

 


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