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【単巻5冊読書感想㉚】『プロ司書の検索術』『変な家』『スイカのタネはなぜ散らばっているのか』『虫の目になってみた』『都市で進化する生物たち』

 5冊読んだら、1冊が「そこそこ面白く読める」くらいですよね、正直。
 今回の『変な家』とか。

 で、10冊に1冊くらい大絶賛! っていうのがあります。
 今回の『都市で進化する生物たち』ですね。

 あとは、「まぁ、読まなくても良いな」とか「文章下手すぎて読むのしんどい」とか「つらつら原稿埋めてるけど、伝えたいことないよね」って感じ。
 今回の『プロ司書の検索術』『虫の目になってみた』『スイカのタネはなぜ散らばっているのか』にそれぞれ対応します。

 このイマイチに出会うからこそ、大絶賛に出会う、と思ってきたんですけど、本当にそうでしょうか。

 イマイチって読み始めた時点で大体わかってるんですよね。
 そもそも、「文章下手やわ……」なんて1ページ目で判明するでしょ。

 さらに、ぶっちゃけクソみたいなのもあるわけで。

 回転上げたほうが面白い本に出会えるのではないか? と思うんです。

 小説において退屈なエピローグを我慢して読むとか(例えば『ハリー・ポッター』)、 学術書で丁寧にまとめてくれる概論をはよ本題が読みたいなと思いながら読み進めるとか、そういう一種の忍耐は必要なんだけど。

 だからと言って、「面白くないんじゃないか?」ってわかった時点で、読まずに、次の面白そうな可能性を読み始める方が、いいんじゃない?

 というわけで、今後のこのシリーズは絶賛の嵐になるかも……?

 これまでの辛口通り越してダメ出しがなくなるかも……?

 まぁ、

 まだ、どうなるかわかりませんが。 

 


【1冊目】得るところがあまりなかった『プロ司書の検索術 「本当に欲しかった情報」の見つけ方』

※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません

 うーん。

 まぁ、図書館司書持っているので、たいていの内容は知ってるんですよね。

 内容自体もちょっと過信しすぎな部分があって。

 学術情報なら絶対に信用がおける、っていうスタンスなんですけど、そんなことないんですよ。

 査読付きと掲載料をぼったくる、俗にハゲタカジャーナルと呼ばれる学術雑誌がある。
 掲載料をぼったくるだけで、査読は機能してない。
 そんなハゲタカジャーナルに、ポケモン論文シリーズ(ポケモンの世界観で書いた論文)を送りつけている学者さんなんかもいる。
 ポケモン界の論文が掲載されてしまったら、査読が機能していないと証明されるってこと。

 というわけで「学術雑誌なら100%信用できる」というわけでもないんですよね。




【2冊目】なんか近年人気のやつ『変な家』

※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません

 実際に存在する変な間取りを集めた実録怪談系だと思ってました。
 創作ホラーでした。

 わたし、この勘違い、多くないか……?

 間取りの図と、会話で進む。

 それに違和感はないし、創作ホラーとしては最後失速するものの、そこそこ面白い。

 でも、図と会話が大半な小説が、人気出るんだなーと思うとしみじみ。

 文字、読まれなくなってきてるんだなーと。




【3冊目】農学系の筆者は合わない『スイカのタネはなぜ散らばっているのか タネたちのすごい戦略』

 植物学系か、生態学系の筆者じゃないと面白くないですね。

 種子そのものの話よりも、含まれている成分とか、人間がどう活用しているとかの話が多い。

 しかも、農作物系の植物ばかり。

 農学系だとそうなるわな……。

 前も同じ轍を踏んだんですよね。

 今後、タイトルで面白そうと思っても、筆者をチェックして農学系なら読まないようにしようと思います。



【4冊目】 エッセイに「科学」がつくかの瀬戸際は?『虫の目になってみた たのしい昆虫行動学入門』

 「エッセイ」と「科学エッセイ」の違いは、「紹介する知識が、科学的論拠のある学術情報に基づいているか」「ちゃんと出典が記載されているか」だと思う。

 「〜だろう」とか「〜だと思う」なんて語尾を使ってしまったり、論文の出典が記載されていなかったりしたら、それは「科学エッセイ」を名乗れない。

 ただの、科学風エッセイでしかない。

 著者さんが、写真家さんだから、仕方ない、とは言いたくない。

 科学リテラシーがもっと広まればいいなぁと思う。



【5冊目】ヒトが作る環境も一種の自然、生態系!!『都市で進化する生物たち ダーウィンが街にやってくる』

 面白かった〜!!

 ヒトの作る都市という環境を、ヒトの手が入っていない自然と同じく一種の生態系があるとみなすことができるのか?

 という部分から話が始まるので、都市での生物の適応をもっと早く説明してくれーという気分もあります。

 が、丁寧に論を積み上げていく、いたく科学的な読み物でもあります。

 真社会性のアリは、巨大な巣を作り、周辺の環境を変えてしまう。
 その周囲には、アリの巣にフリーライドしたり、内部に侵入して食い荒らすような好犠牲生物がたくさんいる。

 つまり、アリが変えた環境に適応するように、虫やら菌やらが好犠牲生物として進化してきた。

 産業革命以降、数世紀に急激にヒトによる都市化が進んでいる。
 アリと好犠牲生物の関係のように、好人間牲生物とも言える生体群がたった今進化をしている途中なのではないか?

 では、都市に生き物はいるのか?

 いる。

 直観的な想定よりも、多い。

 田舎から都市に向かって生物種の調査をすると、いったん数は落ち込むものの、都市に至って数回復が見られる。

 それは、在来種を囲い込むように残っている自然公園や、運送に紛れて、あるいはペットの放逐で定着した外来種、個々の家庭がそれぞれ外来種を植えたガーデンのおかげだったりする。

 とくに、個々の家の庭を調べると、調べる庭の数に応じて確認される生物種が増えていく。
 各家庭の庭ごとに独自の生態系がある

 その断絶された環境で独自の進化をとげることはどうやらありそうである。

 庭や、ベランダ菜園にさえ、箱庭生態系がある、というのはロマンチック。
 部屋にサボテン置くだけで、植物種1の生態系ですよ?

 まぁ、実際はマンションに住んでいる虫たちと、洗面風呂場のカビと、ベランダの苔に、プラス1の生態系ですけど。

 で。

 短期間で生物に遺伝的変化はおこるのか?

 ダーウィンは長期にわたってようやく自然淘汰が働くというモデルを唱えていた。
 だが、虫などライフサイクルが短い生物においては、どうやら短期間での変化も見られるようである。

 産業革命以降、白い樹肌に煤がついて黒くなるようになった。
 その結果、その木に登ったり止まったりする蛾が、白い個体よりも黒い個体が目立つようになる。
 白い個体の方が、鳥に食べられる確率が上がった結果、黒い個体の数が増していった、と仮定が立つ。

 蛾、何百匹を使っての検証が行われる。

 この実験の欠点をカバーした再現実験が行われたときには、環境保護の法制度が整えられていて、逆にこの蛾たちは白い身体を取り戻していた。

 では、動物ではどうか?

 都会の雄鳥は、都市騒音に対抗して、高い声で鳴く。
 田舎の雄鳥は、低い声の方がモテるようだ。

 しかし、この違いは、「遺伝によるもの」かそれとも「学習の成果」か?
 おそらく、白黒と割り切れるようなものではなく、個々のケースに応じて実験がなされ、徐々に解明されていくだろう。

 しかし、都市に住み着いたことで、渡りの習性がなくなり、繁殖期を二回に増やした鳥もいる。
 こういった鳥は、渡りの習性を持つ祖先の鳥集団とは別の種へ進化しいてる途中と見なすことができるだろう。

 しかし、飛行できる鳥さえ、従来の環境、従来の生物学の常識ではあり得ない部分がある。

 寝るのに止まり木が必要な鳥たちは、テリトリーの公園を離れようとしない。
 それによって、町のあちらとこちらで交流がない二つの群が形成される。

 それでは、飛ぶことのできない、哺乳類や虫はどうか。
 道路がそれぞれの群れを断絶し、それこそ公園や庭ごとに別々の生態系が形成される。

 ここで、従来の生物学で心配されるのは、「遺伝子プール」の大きさだ。
 近親間の交配が進めば、遺伝的疾患が出現したときに、瞬く間に子孫に広まって、群が全滅してしまう恐れがある。

 だから、このような公園を結ぶ道を作って、種同士の交流を促した方が良いのではないか、という都市計画が持ち上がってくる。

 しかし、ちょっと待って欲しい。

 とある公園のネズミの間で病気が流行ったとする。
 生き残ったネズミは、その病気への抵抗力を持っている。
 群れが小さく、周囲からの遺伝の流入がないことで、その抵抗力がいち早く群れに定着する。

 遺伝的疾患というマイナス要素の遺伝と同じく、急激な環境変化に対応するプラス要素の遺伝も、素早く群れに広がる

 さてここで、回廊で個々の群れを繋げてしまったらどうなるか。
 病気の流行地以外から、病気に対応していない個体が流入してくる。
 結果、子孫に遺伝する、病気に対応している特性が薄められ、その群れが全滅する可能性もある。

 本書では触れられていないが、断絶していれば病気での全滅は一群で済むが、群れが繋がっていればパンデミックの危険性が高まる。
 多くの群れが全滅し、町からその動物が消える。
 なんてことも起こるかもしれない。

 とくに自然林における大型動物の保護での常識「十分な遺伝子プールを確保する」が、都市の生態系では通用しない。

 ヒトを含めて環境ではあるけれど、やはりヒトが人為的に作った都市環境という特異性はある。

 そして、もう一つ都市には特徴が。
 それは、都市計画などでヒトがデザインできること。
 都市生物学を深めていけば、生物たちの進化を左右できるかもしれない。

 ゴキブリや蚊などの病原体にもなる害虫がいない街というのが実現するかもしれない。
 捕食する蜘蛛なんかを特化させたり、援助するようなカラクリが作れたらありえるかもしれない。

 そういう、都市生物工学というのが将来できあがるかも。

 街から一つの生物を駆除する、というのが倫理や道徳にもとるかというのは別の問題だけど。

 



 それでは最後に。
 皆様の読書ライフの充実を祈って。

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