【単巻5冊読書感想①】『O・P・ハンター』『街角怪談』『日本的霊性』『ひねくれアイテム』『叙述トリック短編集』
10冊……にしようとしたら、なかなか埋まらなかったので5冊ごとに書いて行きたいと思います。
今回は5冊ともKindle Unlimited読み放題のタイトルで読みました。
皆さんの読書ライフの参考になれば幸いです。
【1冊目】スレイヤーズ神坂一の入門に? 『O・P・ハンター』
にわかラノベオタなので『スレイヤーズ』読んでないんですよね(世代がズレているていうのもありますが)。
何巻あるかも知らないくらいですが、なんとなーく、いつか読みたいなーと思っています。
で。
本タイトル。
タイトルに「おっぱい?」と思いながら、読み放題をポチ。
いや、面白かったです。
「ライトな文体すぎて上手い下手の物議を醸し出した」という文体を堪能しました。
単純な文章だけど、だからこそ想像力が膨らむんですよね。
これは、面白い。
スレイヤーズは、短編だけで35巻とかあるんですねー。
まー、いつか、読みたいです。
【2冊目】創作ホラーアンソロジー『街角怪談』
創作投稿サイト・エスプリタに投稿された創作ホラーアンソロジー。
うーん、ぶっちゃけあんまり。
こういうタイトルは大体年に20冊は読んでるんですが、実録怪談の方がどんなに語りが下手でも、このタイトルより上です。
狙って「斬新な怖さ」を作り出そうとしていて鼻につき、全体的に、推敲の上にリアリティを出すという工程が抜けてますね。
投稿サイトという特質上、仕方ないのかもしれませんが……。
例えば、居酒屋で怖い話を聞き出そうとする実録怪談作家と、怖い話をする酔っぱらいの口調が、「どうだい?」「〜っていうのかい」っていう口調だったり。
酔っ払って終始そんな口調でいます?
あるいは、怪異の出るアパート。その相談をどストレートに市役所でする夫婦とかいます?
それで、老人ホームの語り部を紹介する市役所職員なんて存在するわけないでしょうよ。
せめて、市役所に内容をぼかして欠陥アパートの相談に行って、徘徊癖のある語り部が市役所にやってきて大声で関連する話を語っていて、その老人を探しにきた老人ホームの職員さんのエプロンの施設名を見て、その語り部老人を訪ねるとかにしてほしい。
まぁ、愚痴はこのくらいで。
怪談界隈にどっぷり、という方ほど粗さが目立ち、物足りなさが際立つと思います。
【3冊目】戦中の反戦派が日本の本質を求める『日本的霊性』
日本的霊性を「親鸞の浄土真宗」と「禅宗」に求めるという内容です。
ですが、まぁ、うーん。
戦中に反戦派が構想したという部分抜きで読むべきじゃないですね。
日本の本質って、どこにあると思いますか?
「仏教は外来だから、日本的なものをそこに見るべきではない」という批判をするのではありません。著者はこの点だけにはきちんと反論を述べているんですけどね。
わたしも、仏教は日本になくてはならないものだと思います。
興ったインドで普及しなかった仏教が中国を経て日本に伝わり、例え「葬式仏教」と批判されようとも今も生活に染み付いてるのですから。
だけれど、それ一点で日本的霊性は仏教にあるとは言えませんよね。
むしろ、日本的霊性に仏教のエッセンスも内包されている、というべきではないでしょうか。
戦中の反戦思想のせいで、著者は日本の歴史を真正面から見てないんですよね。
天皇という二文字が出てきませんから。
大和から続く日本の歴史を、天皇に言及しないがために全く触れないんです。
過去、現在どうあれ、今なお続く天皇家。黎明の日本から今なお続いていることは、そして国民が続くことを求めたことは、否定しきれませんよね。
それに、マッカーサーに自身の命でなく国民の命を頼んだ昭和天皇のエピソードなんかもあります。日本に必要のないものだと切り捨てるべきではないでしょう。
「天皇を中心とする神道のせいで戦争に突き進んだ」
確かに、そうです。
でも、その歴史を含めて日本です。
戦争のやめ時を見失ってただひたすら悲惨な道を突き進んでしまった。
その歴史を拒否はできません。
だからと言って、「それは日本的ではない」なんて言い切るのは戦中派がひたすら戦争に走った政府を憎む感情からの暴論です。
そして、この著者は、平安時代をこき下ろします。
「女の腐ったような」とまでは言わないけれど、それと同等に。そして「大地から生まれた」という理由で武家の鎌倉時代を賞賛するのです。
悲しいことに、戦争を否定しながら、著者は戦争の影響を受けてるんです。
武人讃歌と言いましょうか、富国強兵の思想の影響下にあるんですね。
このタイトルは、さまざまな文章にアクセスできなかった戦中に構想されたものですが、平安時代の文学は「よよと泣く」恋愛沙汰ばかりではありません。
日本最古のSF作品としか思えない『竹取物語』
ゲテモノ好きで何が悪い? 『虫めづる姫君』
男らしい娘と女らしい息子、立場を入れ替えられ、それでも悩みは尽きない『とりかえばや』
知識のないわたしでさえ、こんな多彩な作品を上げることができます。
かくいうわたしも現代語訳でも読んだことのない作品ばかりではありますが。
男もかな文字で日記を書いてみた。
じゃないんですよ。
女も男も対等に文字を綴ることができた。
それが、一部の貴族だけであっても。
そういう時代だったんだとわたしは思います。
そして、例え、その豊かさが平民の犠牲からできていた時代でも、それも日本の一ページです。
この著者の理論破綻はそこにあります。
「日本的霊性は、親鸞の浄土真宗と禅宗にある」という主張から、一歩も進まないのです。「どうしてそれが日本的霊性か」という説明に終始して、「親鸞の浄土真宗と禅宗にある日本的霊性はどういうものか」の説明が全くないんですね。
そして、「どういう道筋を辿って今なお続いている」という点が説明されない。それがないと「普遍的に日本人が持っている霊性である」という論証が終わらないんですけどね。
そして、その大半が「親鸞の浄土真宗」の説明だけなんです。
うまく説明できないから、禅宗に進むことができない。そんな構成上の苦悩を感じざるを得ません。
そして、親鸞以後の浄土真宗を丸っと無視するのもいただけませんね。
戦国時代、大名に対抗する勢力を持つに至った講と一向一揆。
そして、江戸幕府の勢力を削ぐ狙いもあって西と東に分たれた本願寺派。
明治の折には、政教分離の西洋政治の到来を危惧し、岩倉使節団の後を追ってヨーロッパへ渡ります。
浄土真宗をただ親鸞という一点だけでみるというのが解せませんし、その理由の説明もないのですから、何をか言わんや。
浄土真宗も、日本の辿ってきた道も、複雑で。
犠牲も悲劇もたくさんあった。
でも、人類の歴史って日本に限らず、そうなんですよ。
悲惨な戦争に走った要因を「自分たちは持っていないんだ!」そして、他のものに縋って「本当の自分たちはこうなんだ!」と叫びたくなるのは分かります。
戦中派の苦労も苦悩も、不況世代のわたしには推しはかれません。広島で話を聞いても、沖縄の壕へ入っても、理解しきれるはずがないでしょう。分かった気になる方が傲慢というものです。
戦中、空襲が襲う中。
壕へ逃げ込んだ知識人はこういうことを考えていた。
そういうものとして読むべきだと思います。
【4冊目】話し言葉で綴られる、ちょっと不思議な世界『ひねくれアイテム』
少し不思議、訳してSF。というような、テイストのショートショート48編。
一編がかなり短めなので、通勤とかの隙間時間にオススメしたい一冊。
んーどう書いても、ネタバレになっちゃいそうなので、感想もショートで。
【5冊目】叙述トリック、叙述トリック、叙述トリック 『叙述トリック短編集』
メディアワークスのKADOKAWA合併後、チャレンジ枠レーベル、講談社タイガ。
と、勝手に思っているのですが、本タイトルはそのチャレンジ精神が炸裂した一冊。
叙述トリック。一冊まるまる叙述トリック。
読メ登録数も2000超えてるしかなり読まれてますね。
まー正直。
正直、イマイチ。
点数をつけるのは嫌いですが、5段階評価で3、10段階評価で6くらい。
表紙の通り人は死なないゆるーいミステリです。
ただ、叙述トリックってややこしい、じゃないですか。
短編すべて、そして一冊まるまる、叙述トリック。
ん? あーそうか。ややこしいな。ってなっちゃう。
ミステリのフェアアンフェア論が好きな人とか、叙述トリック好きは楽しめるんじゃないかなぁと思います。
あとがきまで叙述トリックミステリ。やはり講談タイガは後書き芸の時雨沢恵一を産んだ電撃文庫の後継……! と思ってしまいました。(勝手に思ってるだけで出版社のつながりもないんですが笑)
ちなみに、この感想には叙述トリックは一切ありません。
それでは最後に。
皆様の良い読書ライフを祈って。
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