【読書感想】村田基『不潔革命』
今回の一冊はこちら。
7話の短編が収録されたこちら。
SF……というかは、わたし的にはビミョーです。
でも日本は星新一さんとかいて多様だから、そこら辺はまー……ということで。
で、今回は。
最後の「創作者」を読んで考えたことを綴らせてほしい。
他の短編についてはぜひ、読んでみてください。
「何のために創作するのか?」と問うた短編なんだけど、色々読んでいるわたしにはグサグサ刺さった。
世界の文学とか読んでるんですよ、今年。
ヘブライ文学は迫害されてきたユダヤ人が担い手。
ベトナム文学はベトナム戦争の傷跡に満ちている。
インド北東部の女性は、隠されていて小説を書けば初めて世に出るような声になる。
じゃぁ、日本は?
戦争を知っている世代は他の事件とかも経験している。
戦後世代は苛烈な経済成長の時代が経済小説になる。
で、二十代三十代は何を書いたらいいの?
って思ったのです。
そして、今の流行り……となると「異世界もの」か?
という発想になって。
そもそも、「あれって本当に売れてるのか?」とか常々思ってるんですが、あそこまで出版社が乱発するってことは、予測するくらいには売れるってことなんですよね。
で。
十代二十代が読者で、それより1世代上が書いてるとして。
(どっかにデータがあるなら教えてほしい。ただの憶測である。現代メディアとかの学問は早々に統計をとって後世に残してほしい)
なんでそんなもんが流行ってるのっていうのに、ちょっとこの短編読んで、仮の答えが見つかった。
異世界ものって、「苦労せずにご都合主義越えるレベルで裕福になって恋人ができて成功する」。
(かなり揶揄的な批判を含めて)
「いい大学に行って、一流企業に就職して、結婚して子どもを産んで、円満な家庭を作って」というロールモデルが根幹にあるんじゃないかなと。
でも、今の世の中でそれって無理ゲーじゃん。
まず、一流大学に行けるのも一握りで、一流企業の席も限られれてて、物価は高騰し続けて、「普通の就職」でさえ一生苦労して働くと同義で、いつ恋人を見つけて親愛を深めて結婚するのか、わからない。しかも、結婚がゴールではなくて、3組に1組が離婚してるわけで、なんでそんな苦難をわざわざ自分で呼び込むの? そもそも、自分の稼ぎを二倍にしても、子どもを大学に行かせられる余裕は生まれない。なら、結婚や出産をして不幸な子どもを作りたくないって選択の方が、賢いよね? みたいな。
「一流企業に入って、円満な家庭」って今の社会で、「異世界転生でチート能力を得て、ご都合展開が繰り返される」のと同レベルになっているのかもしれない。
だから、若い世代は、そういうストーリーに現実逃避するのかも。
異世界ものが薄っぺらく感じるのは、ロールモデルの崩壊が根幹にあって、成功や幸せを具体的に思い描けないのが原因なのかもしれない。
具体的にというのは、「自分の幸せ」という個人個人の夢や希望が想像できない。
考えてもどうせ無駄じゃん。
そんな世の中になってるのかなーと。
さて、そんな中、何を書くべきなのか。
何を書きたいのか。
そんなことを考えさせられた短編でした。
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