第6感 あなたの人生を変える一本が、ポッドキャストにはある。

 有難いことに、僕は小学校の頃から私立の学校に通わせてもらっていた。
 小学校から私立ということは、小学生の頃から制服ということ。
今では芸人をやっているこんな僕も、20年くらい前には、皆さんも電車で一度は見かけたことがあるであろう、ピシッと制服を着、電車に乗ってくるとなかなかにやかましい小学生だったのだ。
しかし当時通っていた小学校は家から一駅ということもあり、それほど大変なわけではなかった。
もちろんそれでも、小学校低学年からすればなかなかにハードだったと思う。

小学校一年生の頃、お夕飯を食べていると急に僕が泣き出した。
「学校で嫌なことでもあった?」
 母がそう尋ねると、首を横に振る僕。
「じゃあ、どうしたの?」
 すると僕は少し時間をおいてから、ゆっくりと口を開いた。
「学校は楽しいけど、疲れる。」
 この時の記憶はないが、でもそうだよな、となんだか自分を可愛らしく思えた。

 小学校も高学年になると、僕は受験勉強に勤しみ始めた。
もちろん辛い時期もあったが、それでも地元の小学校に進学しなかった僕が、中学に上がるタイミングで急に地元の学校に進学するなんて考えられなかった。
 ここら辺の受験期の話は割愛させていただくが、努力の甲斐あって、僕は無事第一志望の中学校に合格することができた。

 中学校は、小学校のときとは違い、本当の意味での電車通学といった感じだった。多分ドアツードアで、1時間前後だったと思う。
 そんな状況に際し、昔からよくしてくれていた母親の弟、僕にとっての叔父が、これを貸してあげよう、とiPodminiを渡してくれたのだった。
 特に校則が厳しかったわけではなかったし、何より学校で触ったりすることはなかったので、僕は一応ひっそりとそれを持って通学していた。
 そのiPodminiは叔父のパソコンと同期されており、当時パソコンも持っていなかった僕には曲のラインナップを変えることはできなかった。だからいつも、そこに入っている叔父がチョイスした曲を聞いていた。

 はじめの方はiPodで曲を聞くという状態に最早酔っていたのだろう、ひたすら同じようなラインナップの曲を聞いていたが、ふとiPodを捜査しているうちに、ポッドキャストなるジャンルを見つけた。
 そのときそのiPodに入っていたのが、「伊集院光深夜の馬鹿力」と「爆笑問題カーボーイ」のポッドキャストだった。
 当時TBSラジオでは、放送の一部を切り取って、毎週ポッドキャストにあげており、また別撮りで収録することもあった。
このポッドキャストを聞いて本放送も聞いてもらおうというこの手法は、今思えば、切り抜き動画の先駆け的な存在である。

 この伊集院光さんと爆笑問題さんのポッドキャストは当時の僕にとっては衝撃だった。
 はじめはラジオの一部ということをいまいち理解でいておらず、おそらく3本ずつくらいしかないポッドキャストを、僕は永遠と聞いていた。
 そしてある日、これがラジオ番組の一部であるということに気づき、僕は新聞のラテ欄に目を通した。
 新聞は裏面にテレビのラテ欄がでかでかと載っているが、ラジオはその少し前にひっそり載っているだけである。
 まずは伊集院さんの番組を探す。月曜深夜1時からということで、日曜日の新聞の深夜の枠を探すが、どうにも見つからない。何か聞き間違えただろうか。
 今にしてみればわかる。月曜深夜1時は月曜の新聞のラテ欄に載っており、月曜という扱いにはなっているが、日付的には火曜放送なのだ。
 次の日、「爆笑問題カーボーイ」を探すつもりでラテ欄を見ると、なぜか「伊集院光深夜の馬鹿力」が。
 正直、意味が分からなかった。全くわからなかったが、それでもやっと見つけることができた。
 僕はその日のうちに部屋を探し、小学生の頃に部活動で自作したラジオを取り出した。
 そして、深夜1時を狙って僕は954kHzにダイヤルを合わせる……全然違う。僕が聞きたい番組ではない。
 おかしいな、そう思いながら昔のテレビみたいなダイヤルを回していると、やっと待ち望んでいた声が聞こえてきた。
 どうにも不器用な僕が作った自作ラジオは、本来の目盛りとズレたところで周波数が合うようになっていたらしい。
 でもついに聞けることが嬉しくて、僕はイヤホンを耳に入れながら布団に入り、気づけば寝落ちしていた。
 は!、と気づくともう朝。寝落ちこそしてしまったが、僕の心の中は高揚感でいっぱいだった。
 そして朝目覚めた僕はマジックを取り出し、僕の自作ラジオの中で一番TBSラジオが聞きやすいところに線を入れた。

 そんな自作ラジオの話をしているnoteはこちらです。


 結局それから伊集院さんのラジオがどんどん好きになっていき、伊集院さんが元々落語家だったからと大学で落語研究会に入り、そこで漫才やコントをやる楽しさを知り、そして今は芸人をやっているという。
 こればかりは本当に不思議なものである。

 今回は「わたしとポッドキャスト」というハッシュタグに関して書かせていただいたが、人生を変える一本に出会えるということだ。

 あとは売れるだけ。そしたらこれは、なかなかいい話になりそうだ。