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静岡秘境"オクシズ"へ ゆるキャン聖地巡礼・紅葉狩りサイクリング

湖の上にかかった赤い橋と、突端にある小さな駅。COOL JAPAN AWARD 2019で一躍有名になった静岡県の奥大井湖上駅です。

「こんな創作みたいな場所実在するんだ」と衝撃を受けて以来一度は見に行きたいと思い続けていたんですが、ゆるキャン10巻の舞台になり、さらにアニメSeason3で取り上げられると知って「これはもう行くしかない」となったのが2023年の11月、そろそろ紅葉が見頃を迎えるころでした。
聖地巡礼と南アルプスの紅葉をダブルで楽しんでやるぜ、というわけです。

奥大井サイクリング(井川湖~奥大井湖~寸又峡) - Ride with GPS

新金谷から大井川鐵道・バス・トロッコを乗り継いで井川駅まで輪行。井川湖近くを軽く走ったあとは川沿いにそって下っていき、吊り橋で有名な寸又峡温泉で一泊。帰りは「夢の吊り橋」を見つつ、ひたすらダウンヒルしていきます。奥静岡、通称"オクシズ"を満喫するルートです。

最初はふもとから走っていこうかと思ったんですが、獲得2500m以上の厳しいヒルクライムになる&大井川鐵道が楽しそうだったのでこうしちゃいました。楽しいは正義。

というわけで、今回は大井川鐵道~奥大井湖上駅までです。




1. 大井川鐵道で"機関車輪行"

東京から新幹線で掛川駅へ、そこから東海道線に乗り換えて金谷駅に到着です。

金谷駅には大井川鐵道の駅があるのでそのまま乗り換えればOK……と思っていたんですが、乗ろうとしていた"汽車"は新金谷駅の発着かつ駅前の建物でチケットの発券が必要なのに電車との乗り継ぎ時間が10分ほどしかない(つまり金谷駅から普通に電車に乗っていくと間に合わない?)ように見えていたので、念のため時間の余裕をみて金谷駅から新金谷駅まで自転車で走っていくことにしました。

結果としては十分間に合う(というか、新金谷駅で乗り換える人たちを待っててくれる)と分かったんですが、現地に行くまでは結構ドキドキでした。

わずか10分ほど走って新金谷駅に到着。

今回輪行で使う蒸気機関車が出発を待っていました。かっこいいー。

さっそく駅前にあるSLセンターの窓口で、web予約していた乗車券を発券します。実は2022年の台風被害で鉄道線が寸断されてしまっていて、本線は家山駅どまり。連絡バスを乗り継いで千頭駅からアプト式電車に乗ることになります。(2024年に川根温泉笹間渡駅まで復旧)

自転車の持ち込みは千頭までで+260円。そこから先は千頭で別料金を支払います。

客車自体もレトロなつくりでちょっと感動。当然のように冷房はない(扇風機はある)ので、夏場はつらそう。

「自転車はこちらへどうぞ!」と案内いただき、車両連結部の謎スペースに置いていただきました。そうこうしているうちにアナウンスがあり出発です。

大井川の脇を疾走してあっという間に家山駅に到着。もう終わり!?台風被害さえなければ、これに乗って千頭駅まで行けるのかと思うとめちゃくちゃ残念ですね……。

嘆いていても仕方ないので、家山駅前で待っていた大型バスに乗り継いで千頭駅へ。
運転手の方にその荷物(輪行バック)を載せるのかと確認されたんですが、手荷物扱いでバス荷物室内に積んでいただけることをSLセンターの窓口で確認済みと答えて、問題なく運んでもらえました。まだ当時はオペレーションが固まっていなかったのかも。


2. アプト式列車でゆるキャンのストーリーをなぞる

ほぼ満席のバスに揺られて、千頭駅前に到着。そのまま乗り継ぎ先のアプト式列車のホームに向かいます。

あfろ「ゆるキャン△11巻」,芳文社,p.8

ゆるキャン本編でもアプト式列車は「ちっちゃい」と紹介されていますが、本当に大人3~4人が並ぶと幅いっぱいぐらいの大きさでした。
そんな小さい車内に自転車を持ち込もうとしているやつがここに一人。

車両出入り口付近の謎スペースに置いていただきました。「他のお客様が降車される際は、お手数ですがよけていただくようお願いします」と言われたので何度も頷きます。申し訳なさ。

乗客をすべて乗せたことを確認して、列車が動き始めます。

山が色づいてますねー。下流側は(おそらく酷暑、残暑の影響もあって)あまり紅葉していなかったんですが……。

あfろ「ゆるキャン△11巻」,芳文社,p.14

漫画で見たことあるやつ!アプトいちしろ駅でいったん停止して、アプト式機関車と連結を始めました。降車して、連結の様子を見ることができます。

合体。再び列車に乗り込みます。

アプトいちしろから長島ダムの脇を抜けて、「よくこんなところに鉄道を通す気になったな」としか思えないところを列車は進んでいきます。気分はディズニーランドのアトラクションです。

奥大井湖上駅に到着。駅ホームとカフェ以外になにもないという潔さ。さすがの秘境駅ですが、観光客でホームは混雑していました。

たくさんのお客さんを降ろして列車は発車。トンネルと鉄道橋で山と谷を迂回しながら、山間をぬうように走っていきます。

ついに終点、井川駅に到着です。長かった。サイクリングしにきたのを忘れるぐらい長かった。


3."オクシズ"と南アルプスの絶景を眺める

まずは輪行を解いて、地図を見ながらどのへんまで走ろうか考えます。

この日は寸又峡温泉という大井川から少し離れたところにある温泉街に宿をとっていたので余裕はあったものの、あまりにも山奥まで進んでしまうと時間が足りず真っ暗な山道を走る恐れがありました。
というわけで、安全をとって井川湖にある井川大橋あたりまで走って折り返すことに。

ゆるキャン聖地的には、さらに山奥の「7つの田代を超えた先にある」畑薙大吊橋が気になっていたんですが……再訪の楽しみが増えたということで。

輪行をといている最中、同じ列車に乗っていた方から「自転車ですか?!」「どこまで行くんですか?」と質問されてしまいました。まあ普通自転車持ってこんなところ来ないですよね。

井川駅から県道60号・南アルプス公園線を上流に向かって走っていきます。冷たくて少ししめった空気が気持ちいい。

南アルプスの白、山々の紅葉の赤、森の緑で三段紅葉のグラデーション。

あfろ「ゆるキャン△11巻」,芳文社,p.32

車両も渡れる大吊橋・井川大橋ですが、残念ながら大規模な修繕工事中で立入禁止でした。橋の上でロードバイク置いて撮るやつやりたかったなー。

ここから予定通り井川大橋で折り返して再びダムの方へ。井川湖畔でもうひとつ気になっていた場所へ向かいます。

途中、集落の近くを走っている最中に子ギツネを見かけました。北海道以外で初めて見る野生のキツネです。さすがの奥地。

県道脇に見落としそうになる小さな看板を発見。「夢の吊り橋」と書かれた矢印が、谷をくだっていく山道を指しています。道路脇にロードバイクをとめて施錠したら、ちょこっとだけハイキングです。

突然あらわれる森の中の吊り橋。有名な寸又峡の吊り橋と同じ名前(夢の吊り橋)ですが、あちらが水面までの高さ8mに対してこちらは80mという圧倒的な高さを誇っているそうです。
17~18階だてのビルぐらいと考えると、足がすくむ度がアップします。

このスリルよ。張られたワイヤーと渡し板以外はスカスカですが、大人が落ちようとすると工夫しないと無理(逆に手荷物とかは簡単に落ちていく)なので、そんなに心配しなくても大丈夫……だと思います。


4. ついに到着、秘境・奥大井湖上駅

吊り橋を楽しんだら井川湖を後にして、下流に向かって走っていきます。と言いつつそれなりにアップダウンがあるので「ずっと下りっぱなし」と言うよりも「登ったり下ったりしながら降りていく」感じ。

秋と秘境を感じる山々。

接岨峡温泉を通り過ぎてしばらく漕ぐと、ガードレールの向こう側に赤い橋とエメラルドグリーンの湖面が見えました。ついに到着です。

これが見たかった。傾いてきた陽が湖上に影を生んで、ダイナミックな景色を作り出しています。すばらしい。

展望台、といいつつ実態は旧道の坂道ですね。自転車も入れます。(車止めがあったのでたぶん車はNG)

タイミングよく下り列車が湖上を通る時間帯だったので少し待ってみると、手前の木々の影からアプト式列車が顔を出しました。

こうやって遠くから見るとまるでミニチュアのよう。駅に吸い込まれて到着の汽笛を鳴らすまで、思わず見入ってしまいました。


輪行を使うことで蒸気機関車とアプト式列車でアドベンチャー気分、さらに激坂を登る労力も抑えられるというこのルート。「ヒルクライム好きだし、普段ならふもとから登るかな」という人にもおすすめです。
唯一の難点は大井川鐵道の運行頻度が高くないことで、1本逃してしまうと次は2~3時間後というのがザラにあります。移動時間は余裕を見ておいた方がいいですね。

奥大井湖上駅から寸又峡温泉での一泊、さらに夢の吊り橋を見てからの大井川ダウンヒル編はまた別の記事で。


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