毎日1曲『三種の神器』20220131 - うっせぇわ
作詞、作曲、歌唱、演奏、DTMを趣味や仕事にしている人に向けて書いています。毎日1曲、頭に浮かんだ曲を取り上げて、僕が独断で『ヒット曲の三種の神器』と呼んでいる、世界のヒット曲に共通する不思議な法則を数値化して解説をしているコラムです。興味を惹かれたら『ヒット曲の三種の神器』の詳細についての過去記事もご覧ください。
今日の1曲
日付:2022年1月31日
タイトル:うっせぇわ
アーティスト:Ado
『三種の神器』度数
ヨナヌキメロディ度:0
弱起度:3
客観描写度:1
解説:2021年最大のヒットではないでしょうか。先に『三種の神器』度数だけ書きますと、ヨナヌキメロディ度数0、弱起はほぼ出てこないのですが、サビ前の「はぁ?」とか、ところどころ「食い」があったりするので弱起度は3にして、歌詞は会社の上司、世間の常識、大人のカッコ悪さなどに対して唾棄しながらも、それから逃れられない自分にも辟易する内容。客観描写度は1にしました。
ボカロPが作った楽曲を、歌い手が歌い、絵師が絵を描き、動画にして公開する、というデビュー方法が定着している。プロセスの特徴は、全てがネット上で進むことです。昔はオーディションに受かって、レコードデビューして、テレビに出て有名になる、が唯一の道だったのですが、今は誰でもネットで、匿名で、作品を共作して、ヒットが生まれるようになりました。
中森明菜のデビューが17歳、山口百恵は14歳でデビューし、20歳で結婚して芸能界を引退します。Adoの17歳メジャーデビューは昔のアイドルと比べても、特別若いわけではなく、歌手、作詞、作曲、編曲が全て分業制だった当時の歌謡曲産業と、今のネット音楽の構造は似ているとも言えます。
そして、古臭い価値観の押し付けや、大人社会の権威に対する、純粋な反抗心と、自己欺瞞の葛藤を吐露するのは、時代を経ても変わらない、共感を得るテーマなのであります。
とはいえ、この一見若者の自発的な主張のように見える現象も、それを商売にする大人の知恵が導いていることも共通していて、70年代以降のシンガーソングライターの台頭やバンドブームなどはそのアンチテーゼでもありました。
コメント:
「うっせぇわ」の記録的なヒットには、やはり多分に仕掛けが見えます。ですが、作品そのもののひとり歩きヒットの理由を考えると、Adoさんの圧倒的な歌唱力に尽きると思います。
ボーカロイドでなければ歌えないような、メロディの乱高下と超早口の高速テンポを、人間が歌ってしまう新境地がそこにあります。昔のロックギターが早弾きを競ったのと同じような、スポーツ観戦に似た快感もあります。
それから、この曲にはなにか祭囃子とか盆踊りのような、日本人の魂を沸き立たせる和のノリを感じます。
いつかライブを見てみたいとも思ったりするのであります。
各種リンク
『ヒット曲の三種の神器』解説記事
大平太一流 作詞作曲の必殺技『ヒット曲の三種の神器』解説記事です、是非あわせて読んでみてください。
①ヨナヌキメロディ/なぜか覚えやすい音階の不思議
②弱起/インパクト大!言葉やメロディが飛び込んでくる
③客観描写/具体的で無感情な描写が人の心に感動を生む
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