秒速10センチの越冬

• 初出『群像』1997年06月号

• 『秒速10センチの越冬』1997年11月（講談社）所収

• 約237枚／400字詰め換算

群像新人賞を受賞後、書籍化されたものです。新人賞の受賞作だからといって、そうそう本にできるわけじゃないんですよ、というようなことを言われましたけど、その後の人たちを見ても、ふつうに本になっているようなので、おだてられただけ…だったのかもしれません。

挿画は“オラシオ・エルネスト”さんにお願いしました。彼はある時期、リクルートから発行されていた『フロム・エー』のキャラクター群を描いていました。それがとても好きで、しかも時給労働をする男の話だったので、「表紙はこの人でお願いします！」とすかさず希望しました。

名前から、てっきり外国人だとばかり思っていましたが、じつは日本人で、子供時代に南米にいたことがあったので、そんなペンネームをつけたとのことでした。書籍のクレジットには、オラシオさんではなく日本人名の「土谷尚武」さんで載っています。

そういえば、書籍化に際して、作品タイトルの変更を打診されました。どうも「越冬」という言葉が、古めかしいというか、演歌っぽい印象だったようです。タイトル変更はべつに異例のことではないし、あの●●●●さんも変えたんですよ、とのことだったので、できるかぎり頭をひねってはみたものの、結局のところ、もとのタイトルのままでした。もっとキャッチーなタイトルにできていたら、何かちがっていたかもしれません。