【第7話】お山パンの旅。

グァっグァっ！　グァっグァっ！

む。

独特なアラーム音を止めて
浮腫んでしわくちゃな瞼を
こじあける。

今日が始まる。

カーテンを開ける。
ふむ。雲ひとつない。

さあ。
いそいそと
水や日焼け止め
お弁当を用意して

朝は何も食べずに出かけようと

昨日から決めていた。

行ってきまーすと
出てない声を出して

自転車にまたがる。

余裕を持って
駅につき
今後の予定を確認中。

「ア〜。スミマセーン。ココにいきたぁいんですが、ドコですか？？」
と海外の方に聞かれる。

方向音痴だから緊張しながら
道を教える。

言った時間より1分遅れて電車が来て
なんか逃げちゃった。

目指すは都会の
行った事ないお店。

お山はパンが大好きだが
精製された（普通の）小麦粉パンは
全然たべられない。

この間
全粒粉100%を発見して
パン用粉を取り置きして貰っていたの。

健康的に楽めるこの時代は
最高に贅沢だね。

駅から徒歩3分。
超猶予を持って50分前に到着。

改めて道を確認しよう。

！！？

え！？徒歩10分！！？
全然違う!やばい！！

出ましたこのムーブ。
お山の迷子ムーブ。

頭真っ白になりながら探す。

多分お山は今めちゃくちゃ
可哀想な顔をしているだろう。

気持ちは
マッチ売りの少女に負けない。

一生B2階が見つからない。

どこまでが駅で
どこまでが市場なのか。

あーもうギリギリだ。
明るいな今日！バテそう！

バイトに遅刻する可能性が出てきたよ

粉を一旦諦めるか
諦めまいか。

お山は。

諦 め な い！

なんとかLUSHの
外交的そうなお姉さんに
聞いて

死ぬほどむずい道の先に

みつけた！！

定員さんに取り置きを貰い

結構むずい道の先のレジに
口頭で案内され

進んでゆく!

1円玉落とした!
人混みの中。

いらねぇ!と思いながら
しゃがむ。

どっから湧いた？
私のじゃない可能性も感じながら
とって進んでいく。（笑）

なんとか
お会計を済ませ

出口を忘れる！

なんでや！

頑張って別の出口が
駅に繋がってると願って出る。

大丈夫だ！
わかる！

急ぐ。

急ぐ急ぐ。

電車にゴール！
電車のドアが閉まる。

お山を照らす

スポットライトを
たしかに感じた……。

🐥　・　🐥　・　🐥　・　🐥　…

〜4日後〜

見事GETした全粒粉。

今日はなんていい日だ。
なーんも予定が無いんだ。

少しくらいゆっくり
したいもんだね。

朝食よりも先に
パン作りをしよう。（？）

粉類をまぜまぜ。

水を入れて
ぐるぐる。

これがまとまるなんて
信じられないほど
まとわりつく。

信じよう。
お山のやり方を。
ただただやるだけだ。

ぺったんぺったん。

「 奇跡とはこの事だよ。」

と思いながら
まとまった生地を見る。

1時間放置。

そして空気を抜くために
殴る!殴る！

おりゃりゃりゃ！

これを3回ほど繰り返して
あっという間に4時間経過。

途中で本屋に寄ったよ。

ジュエリーの本を見てみた。
鉱石は2000種類。
その中でジュエリーは100種類だけ。

ムラがなく採れる量が少なく輝きが強いと
価値があるとかなんとか。

商人になれそうなくらいの
知識がほしいな。

そうしてやっと
オーブンに投入する時間がやってきた。

いよいよだ。

パン作りから
5時間が経過した頃

アツアツ
表面パリパリの
出来立てパンがそこに
存在していた。

む。これはまた
お山の形をした
食パンだなぁ。

（スキを押すとお山パンが見れるかも😉）

休んだか休んでないんだか
分からない日だったと思いながら

一口パクリ。

ふあ〜。おいしい。

普通のパンより香り豊かで
同じくらいふわふわ。

これでいいじゃん！

友達のニジコちゃんに
お裾分けついでに
ランニングしにいく。

午後22時。

パンの旅は見事終わりを
迎えることができたのであった。

--盆地に住むお山の日常--