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モノ消費の終わりのはじまり

「コト消費」は体験を消費することですが、実態のあるモノを買うときも、コトの消費は隠れています。

例えば、あなたがノートPCを購入する時の決め手はなんですか?

性能がいいから?軽いから?形がいいから?

そもそも決め手なんてものが、あったのかすら曖昧です。

カフェでタイピングしている自分をイメージしたり、製品を創造した天才との繋がりを持ったような気になったり。

実は購入後に体験できる自分のストーリーを描けるかどうかが決め手になるのではないでしょうか。

そのような思考はどこからくるのか。顧客習慣を図解しながら考えました。(参考:Harvard Business Review2018年3月号 顧客の習慣のつくり方「顧客の習慣を科学する」)

何度も同じものを買う習慣について

人が「何度も同じモノを買う」のには2パターンあるようです。

一つは「選択の簡略化」、もう一つが「アイデンティティの維持」です。前者から見ていきましょう。

選択の簡略化

選択の簡略化にも更に二つに分岐します。一つは脳の省エネです。もっと思考しないといけない事のために、あまり脳のパワーを使わないでおく状態です。

洗剤を選ぶのと、転職先を選ぶのとでは重みが違いますよね。脳も重要な方を考える余力を残しておきたいのだと思います。

もう一つは、理解しやすいものへの選好。人間は楽な方や簡単に理解できることを好む習性があるそうです。

こういう思考は洗剤や歯磨き粉などの日用品の選択で使われていると思います。できるだけ時間をかけずシンプルに選びたいときの思考です。

アマゾンダッシュボタンは「選択の簡略化」を利用したサービスだと思います。

日用品を厳選する人は、この後に記載するアイデンティティの維持を日用品にも求めているのかもしれません。

アイデンティティ(自己同一性)の維持

ファッションが顕著な例かもしれませんが、身につけているものや、持ち物で自分が何者であるかを表明しているときがあります。

いつも同じブランドのシャツを着ている。いつもApple製品を使っている。自分に一貫性を持たせることで何者かであるかを維持しているのです。

何のためにそんなことをするのでしょうか?

一つは、他者への牽制です。こういう自分ですということを所有しているモノで可視化しておけば、簡単にあなたの言いなりにはなりません。という意思表示になります。

もう一つは、自己表現への快。

土曜日の朝は、オーガニックの野菜にヴァージンオリーブオイルと岩塩をかけて食べるのが好き。美しい装丁のハードカバーが並んだ本棚から、料理本を手にとって開く。

このような「自分のストーリー」に購入したモノが散りばめられています。

購入後のストーリーも、私たちはSNSで発信することができます。

自分を表現することで、「いいね」をもらう以前に満足感を得ているのではないでしょうか。

「何度も同じモノを買う」に関して、二つのパターンについて書きました。
どちらのパターンも思い当たるふしがあるのではないでしょうか。

この図は、モノが潤沢にある現代だからこそ成り立つものです。

それと同時に、「私たちは選択肢が沢山あっても、意外と選ぶことに意思を持っていない」とも言えるのではないでしょうか。

アイデンティティの維持は強まる

モノが売れない時代と言われてから随分とたちました。

今、私たちが求めているのは、コモディティ商品ではありません。アイデンティティの維持に貢献してくれる商品です。

その商品には肯定的なストーリーの提示が不可欠です。わざとらしくなく、人々が自分自身のストーリーに加えたいと思うモノです。

今後も、実態のあるモノにどんどんストーリーを求めていくでしょう。

モノの中に忍ばせてあるコト消費。

新しいモノ消費の時代は、すでに始まっているのです。


参考にした著書↓


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