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フリーレンみたいな葬送の生き方

昨日は、大学の後輩に新宿で会った。
20年ぶりぐらいで、付き合いのある大企業の方にご紹介いただいて、一席設けていただいた。というのも彼自身はとある大企業の副社長的なポジションに成長していたので。

クリエイター同士の再会は良い。
どんなにおじさんになっても、いつだって大学生の頃に戻れる。
さらに、お互いの息子たちがクリエイターとして育っていて、高校生なのに立派な動画作家になっていたりした。すごい世界だ。

この話はまた今度機会があったら続きを書く。

書き残しておきたい良かったこと。彼いわく、

「シライサンがいなかったら、ぼくはあんな活動はしていなかった。大学って思ったよりすごいやつはいなくて。その中でこんなふうに自分のやりたいことを周りの大人に力を借りて実現していく姿に勇気づけられた」

そんな話を聞いて、ちょっとジワッとしてしまったよ。

フリーレンみたいな葬送の生き方

自分、若作りすぎる。偉そうじゃない。
髭を落としたら、さらに若返ってしまった。

偉い人になるより、すごい人として生きているほうがいい。
そう思って生きてきた。生きてきたんだけど。

最近、人間がよくわからなくなってきた。

『葬送のフリーレン』を見ていると気になる事がある。
エルフ族にとっては10年なんてあっという間なんだけど、
その間、何も学んでいないわけでも感じていないわけでもないんだよ。
若作りだし、気持ちも行動も若いけど、ちゃんと傷つく。
知識も経験もある状態で若い状態を保つってことが、こんなに辛いなんて。

最近、人間がよくわからなくなってきた。知れば知るほど。
人間は、その生命や作り出せる情報空間がたくさんあるのに、その人間が見ている世界や時間を短命にとらえすぎる。物覚えもあんまりよくない。
普通の生活を生きることが幸せなら、一番簡単な方法は、毎日忘れて生きることだと思う。どうでもいい幸せが他者を傷つけないように、できるだけ小さなコミュニティで生きて、忘れて生きることが幸せの秘訣だと思う。
でも、そんなふうに生きられるほど物覚えも悪くないし、良くもない。
思ったことや、決めたことを、何年もやりつづけることができる人間もそんなにいない。成長しているはずなのに、飽きたり疲れたと勘違いしてしまう。認知バイアスに支配されていることに気づいていない。

Moanzy

そんなつまんないことを考えながら再会の夜が終わった新宿の街角。
酔いを覚まそうとプラプラしていたらでMoanzyというアーティストにストリートで出会った。

ストリートではあるが明らかにプロ、段違いの上手さで聴き入ってしまった。
調べてみたらすごい人だった。

なんて悲しくて美しい声で失恋を歌うんだろう…。

失恋の痛みは人間を成長させる。
とはいえ、失恋した後の過ごし方による。
忘れようと思って快楽的に生きたってうまくはいかない。悲しみの方が強いし、ロジカルではない、行き場のない感情に代わりなんて存在しない。

美しく歌うしかないんだ。

特に歌の内容には関係はないかもしれないけど、ほんの数分だけど感傷に浸ってしまう歌声だったよ。

ぼくには何ができるだろう?

仕事はたくさんある。幸いなことに良いお仕事や評価を頂いている。

その一方で、大失敗もある。大好きだったコトもたくさんある。そんな大好きだったコト、失ったこと、うまくいかなかったコトの数々。日々。いい思い出であってほしいのだけど、視界に入るだけで思考が止まる。手足がしびれる。仕事を通して積み上げたものが破壊される喪失感がこんなに大きいなんて。サラリーマン時代だったら鬱病なり休職なりして過ごしていたかもしれないけど、経営者はそうもいかない。思い出して泣いてる場合じゃない。
そういえばXも公式いいねも見れなくなったしちょうどいい。ブロックして仕事に燃えるしかない。ミュートでもいいのかもしれないけど、いまは全力で第二宇宙速度まで登り詰めるしかない。
地球の重力を飛び出して、見えない景色に行こう。
かつての上司、毛利衛さんが言ってた。
宇宙ステーションからみたら地球の上には生物なんて一つも見えない。
人間が作ったもので宇宙から見えるものなんてない。
本当に、万里の長城ぐらいしか見えるものはないらしい。
あとは、生物で見えるのはサンゴ礁だけ、なんだってさ。
おお、人類よ、君たちはどんな認知バイアスで地上で生きているのかは知らないけれど、君たちのハードウェアを成層圏よりちょっと上に連れて行っただけで、もう君たちのハードウェア単体の認知能力で見えるものなんて何処にもないんだよ。なんて悲しい生物なんだろう。

宇宙の果ても、物理も、数学も、人と人の営みも、想いも、記憶も。
何も見えない、僕らの頭の中にしかない世界なんだ。
ぼくはどうやら他の人間とは違う時間軸で生きているらしい。

仕事しよ。

明日も大学の研究室の同窓会だ。
ぼくより若いのに他界してしまった人もけっこういる。
ぼくより若いのにおっさんみたいな人もけっこういる。
ぼくはセンチメントは要らないんだけど、せいぜいフリーレンの世界を味わうとする。
せめて長生きするしかない人間は、子供みたいに情熱的に熱く生きながら、認知バイアスをぐらぐらと揺さぶって生きよう。

ここまで読んでくれて有難う。

あいかわらず、理系に愛はわからない。


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