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死の間際に見えるもの『君は月夜に光り輝く』

こんばんは、オマンです。
今回は高校生の時に心打たれた作品の中から一つを紹介したいと思います。

デビュー作でありながら胸のどこかがいっぱいになるような秀逸な設定で、心許せる相手に思いを巡らすことができます。

1. 紹介

『君は月夜に光り輝く』[著]佐野 徹夜

2. 感想

難病「発光病」の女子生徒とひょんなことから出会ったの男子生徒の主人公の複雑な関係模様が描かれています。
最初は病院にこもっている彼女のために「したいことリスト」の代行をしてもらうだけの関係でしたが、代行を行う過程で彼女に対する心境の変化に気づいてしまい、余命ゼロの少女に恋をしてお互いに惹かれ合う関係に変化していきます。

その関係が変化する過程が複雑でもありながら、高校生らしい単純な思いを持って誠実に向き合っていることが何よりも切なさ無力さを与えてくれます。

反対に、彼女の周囲は二人の繋がりによって複雑化していた関係が単純化していき、関係の修復のきっかけを作ってくれることは読者に晴れやかさ有力さを与えてくれます。

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姉の死に直面した無気力な主人公が彼女と出会い、彼自身の熱意が輝き始めるように、彼女の体が輝きを増しているように見えます。最後のシーンでは彼の心と彼女の肉体が共鳴するように輝き合っているように感じます。

輝度によって彼と彼女の気持ちの変化の過程を限りなくリアルに反映しているようでした。死ぬ間際のお互いの心と体の輝きは月よりも輝いているように見えます。

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「人は死ぬ時に最も輝いて見える」

と言われている通り、本書ではその様子を「発光病」を使ってその文字を体現しています。死ぬ直前に光り輝くことで印象に残り続け、忘れないよう生きたしるしを残しているのだと思いました。

彼女の生命力が衰えていく様は、消えそうな火のように細々と輝き、哀しげながらも美しく感じ取れました。

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死をテーマにした難病もので苦手な人もいると思いますが、濁りのない純度100%の恋愛青春小説で間違いなく泣けるので、ぜひ読んでみてください!


3. 余談

主人公が告白したときから彼女が生きた日数が書かれ、物語にその数字だけを結末をつけていました。
その日数に深い意味が私はあると思いました。調べてみると東洋思想で「不完全さ」を表すものと書かれていました。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/14

まさしく、彼女の存在自体が不完全を連想させるものであります。
学生でありながら、難病を患い一日病院で過ごしてやりたいこともできない拘束されたような日々を「したいことリスト」を作成して実行することで、彼女の病気を含めて完全な存在へと昇華するのだと思いました。

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俳優さんたちの素晴らしい演技によって小説にも書かれていないような複雑な表情や考えが読者以外の未読者を惹きつけてきます。
映画での映像は光り輝いている様子が背景や人物によって比較され、分かりやすく表現されているので、オススメです!

活字を読むのが苦手である人もこの映画を見れば、彼らの関係によって光り輝く過程を見届けることができます。

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