PRIDE

 年度途中から働いているパート職員の彼女は、とてもプライドが高く扱いづらい。が、一方で子どもたちをしっかりまとめてクラス運営ができるため、ありがたい存在でもあった。数ヶ月間、パートでありながら急きょ任された担任の仕事をしっかりとこなしていた。
 そんな時、正社員の担任が新たに彼女のいるクラスへ配置された。パート職員だけでは心許ないのではないかという上司の配慮だったわけだが、これが見事に悪い結果となってしまった。2人は絶望的に相性が悪かったのだ。

 新しく来た正社員はもちろん自分が担任のクラスであることを主張し、雑用は全てパートである彼女の仕事としようとした。が、プライドの高い彼女がそんなことを許すわけもなく、意地でも担任の業務を譲ろうとはしなかった。何かと難癖をつけては正社員を引き摺り落とそうと躍起になった。
「正社員のあの人、全然作り物とかしてくれないし、私が全部やってるんです。」
「正社員のあの人、子どもたちと全然コミュニケーションが取れていなくて、クラスがいつもバラバラです。」
 彼女は確かにクラスをまとめる力がある。が、その実際は子どもたちに圧をかけるやり方であり、正社員のやり方とどっちもどっちな気がする。
2人が一緒に入ると、クラスの雰囲気はもう最悪。子どもたちは険悪な雰囲気をどう感じていたのか心配になるほどである。

 けれども正社員も負けてはいられない。発表会では完璧なクオリティの劇を作り上げ、子どもたちの仕上がりも素晴らしく、管理職の評価を勝ち取った。
 あいも変わらず日常の保育はめちゃくちゃなのに、彼女たちはとにかく張り合っていた。そんな状態に周りの保育士たちは辟易とし、体調を崩す職員もいたほどである。

 そして遂にその時は来た。
PRIDEとPRIDEがぶつかり合うゴングが鳴り響く。戦いの火蓋は切って落とされた。子どもたちの目の前で。怒鳴りあう2人。取っ組み合いの喧嘩である。
2人とも大人・・・だったよな?

カーンカーンカーン!!試合終了である。

涙を流したパートの彼女が教室を足早に去って行った。

 このことは管理職へと伝わり、やっと対策がとられることとなった。件の喧嘩以降パートの彼女は出勤を拒むようになり、出勤しても泣いてしまう事態が続いた。
 度重なる管理職との面談の結果、正社員の彼女は担任を降りてフリーの立場となった。

「トイレ掃除?あいつフリーなんだからやらせとけばいいよ。」
パートの彼女は同じくパートでありフリーの立場でもある私に言う。

 さて、来年度からその彼女もフリー職員として働くよう辞令が出た。果たしてPRIDEの高い彼女にできるのだろうか。



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