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板橋区「学校における居場所推進事業」視察~赤塚第三中学校、志村第四中学校

【2024.5.14】ラボメンバー(板橋区議会議員大野ゆか、品川区議会議員横山ゆかり、中央区議会議員高橋まきこ、埼玉県議会議員中川ひろし、渋谷区議会議員神薗まちこ)にて、板橋区の不登校や不登校傾向のお子さんの支援事業である「学校における居場所推進事業」を取り入れている2校/赤塚第三中学校・志村第四中学校へ視察へ行きました。お忙しいところ、学校長・副校長先生、そして企画してくださった板橋区議会大野議員に感謝申し上げます。

前提:板橋区の不登校支援

板橋区「不登校ガイドライン」
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kyoikuiinkai/houshin/1049369/index.html

板橋区では、2020年に不登校対応のグランドデザインが策定され、区内でも早くから対策が取り組まれています。今回視察に行った事業はその中の一つ、「学校における居場所 推進事業(民間事業者への委託事業)」です。
教室に入れない生徒や一時的な休息を求める生徒に対し、「安心して過ごせる居場所(別室)」を提供し、課題を抱える生徒がコミュニケーション能力や規則正しい生活習慣を養いながら、将来的に豊かな人生を送れるよう、社会的に自立する力を身に付けさせることをめざす。令和5年度は板橋区立中学校3校で民間事業者に委託して実施しています。

委託されている民間事業者は、
家庭教師派遣を行っている株式会社トライグループ(赤塚第三中学校・志村第四中学校)と認定NPO法人Learning for All(志村第一中学校)です。
今回は赤塚第三中学校・志村第四中学校へ訪問させていただきました。

1:赤塚第三中学校の事例

板橋区立赤塚第三中学校では、対策として10年前から「リソースルーム」を設置し、登校機会を増やし安心して学べる場を提供しています。https://www.ita.ed.jp/swas/index.php?id=1320143

「まったく登校できない生徒が、登校の機会を増やす場」
「安心安全で、一人ひとりの学びの保障する場」

不登校の生徒が増加傾向にあり、現在64名が13日以上、34名が50日以上欠席しています。(全校生徒数は705名)このうち、リソースルームに関しては20名程度の生徒が利用しています。1日平均は5-8名程度。

リソースルームは1と2の部屋があります。

リソース1は、学習する場所。
学力向上専門員が配置されていて、学習に集中できる環境があります。

校長室でお話を伺いました


このルームは8:25~15:20まで開放され、学習支援やソーシャルスキルトレーニングが行われています。生徒は昼食を各教室から取りに行くか、持ってきてもらう形で対応しています。  

学習に集中するための配置


リソース2では、トライが対応(火木金の午前中来てくれ、開く)してくれており、ソーシャルスキルトレーニングなどもやっているようです。

給食も出していて、食べる生徒は各自教室に取りに行きます。(先生も付き添う)
教室に行くのが難しいいけない生徒には、クラスの生徒が持ってきてくれたりもするそうです。

テーブルと座敷のスペースがありました
興味を持ちそうな書籍も用意

リソースルームの紹介に関しては、保護者会や面談などで伝えているとのこと。お休みしている生徒に対しては、3日で本人に連絡とってくれ、1週間休んだら家庭訪問を。その時にリソースルームはどう?という声かけをするということでした。窓口は担任。養護の先生が時々担当することもある。

特にリソースルームの利用が長期に及ぶ場合は、専用の用紙を提出する必要があります。利用後には振り返りシートを記入し、放課後の時間も利用が可能です。

保護者との連携も密に行い、週1回の特別支援委員会や家庭訪問を通じて生徒の状況を把握し対応しています。不登校の生徒には、体験入室を通じてリソースルームの存在を伝え、授業に参加したい場合は、リソースルームや廊下での学習など柔軟に対応しています。

カウンセリングルーム

進学指導は、主に担任が行い、リソースルーム内でも面接や論文の練習を実施しています。赤塚第三中学校では都立高校への進学が多く、フレンドやフリースクールとの連携も強化しています。例えば、フレンドでは月1回のレポートや学期に1回の学校訪問があり、出席扱いにされています。

リソースルーム利用生徒の定期テストは、図書館やリソースルームで受験できるよう配慮されています。志村一中や志村四中とも連携し、不登校生徒の支援モデルを展開しています。

今年から、教室に戻ることを最終目標とせず、生徒に寄り添った支援を重視しています。先生方のお話からも、子どもたちに適した多様な学びの場をどう確保し、学びを途切れさせない。ということに力を入れていらっしゃるということを強く感じました。まさに10年以上の実績を積み上げている学校だからこそ、学校一丸となって子どもたちに向き合っていこうという強い意志と先生方の姿勢、そして体制が整っていると感じました。

不登校の生徒のみならず、他の生徒たちの居場所づくりということで自習室の取り組みも始めていらっしゃっいました。

一般生徒が利用する自習室
パーテーションの仕切りの工夫も!

また、部活動もとても強い学校で、ほぼすべての部活が都大会に進出しているとのこと、ある意味において、部活動も子どもたちの居場所として、大きな役割を果たしているということでした。

校舎正面

2:志村第四中学校の事例

志村第四中学校では、2023年度から「OASIS」という名称で別室登校の居場所を作っています。
https://www.ita.ed.jp/swas/index.php?id=1320133

不登校生徒が60名(13日以上)、30日以上が70-80名に達しており、OASISの利用はOASIS10名くらいが登録しており、1日あたり5名程度が利用しているとのこと。(全校生徒数は500名程度)

校長室でお話を伺いました


体育倉庫を改装したスペースで、玄関近くに設置されています。OASISの運営にはトライの協力を得ており、週3回(火・水・金)の11:45~15:45に活動が行われます。OASISではゲームなどの活動を取り入れ、小さなコミュニティを形成しています。また、淑徳大学や大東文化大学の学生がボランティアとして参加しています。

OASIS全体像
集中できる学習スペース
座敷のホットスペース

不登校生徒には学校に来る楽しみを感じてもらうための工夫が必要であり、OASISでは授業に出ることができる環境作りを進めています。学習支援ソフトやオンライン授業も導入されており、家での学習もサポートしています。OASISの利用者は、定期テストも別室で受験することが可能です。

校内には特別支援コーディネーターや生活指導、OASIS支援員が配置され、さらに3名のスクールカウンセラー/SC(都2名、区1名)やスクールソーシャルワーカー/SSW(週2回訪問)が支援にあたっています。特に家庭問題が不登校の原因となるケースが多く、福祉的な働きかけも重要で、SSWがいることで踏み込んだ課題解決にもつながっているとのこと。

広域通信制高校や他の支援機関との連携もあり、不登校生徒が長期的に支援を受けられるようにしています。

進学指導については担任が中心となって行い、2年生のうちに通信制高校などの見学を進め、3年生の夏休み過ぎには進学先を決定しています。

志村第四中学校は、令和9年に近隣の志村小学校との小中一貫校化も計画されており、学校の建て替えなども行われ、新しい学校の在り方を模索する時期に来ているとのことでした。

正門
全員で撮影

2校を同時に見ることができ、非常に有意義な視察になりました。
あらためて、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

(文責:渋谷区議会神薗まちこ)