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お茶師日記

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山のお茶づくりなどを手伝いながら、自由に生きていきたいおっさんのエッセイです。
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#茶工場

茶園で「生物の進化」を考える!【お茶師日記18】

茶園で「生物の進化」を考える!【お茶師日記18】

雑草の種類は多い
 茶園で草取りをしていると、草の名前が知りたくなる。今はスマホで写真を撮ってその場で調べることができるアプリがあるので、片っ端から調べてみる。雑草に関する本も読むようになった。そして改めて気づくのは種類の多さである。
 例えば、幼木園の難敵である「メヒシバ」には、厳密にいうと「メヒシバ」のほか「コメヒシバ」「アキメヒシバ」という近縁種がある。私には同じ草にしか見えないが、これら

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雑草との闘いは熾烈だが雑草学は面白い!【お茶師日記16】

雑草との闘いは熾烈だが雑草学は面白い!【お茶師日記16】

 2021年6月19日

 バン茶製造が終わって、草取り生活に入りました。
 社長が「梅島のつゆひかりがすごいことになってるよ…」とのことで、その茶園にやってきました。6月10日、真夏のように暑い。
 「梅島」は、いわゆる「畑総」で整備された広大な農地であります。この一角に昨年植えたつゆひかりの12aほどの幼木園があります。

 おーおー!

 こりゃ、やりがいのある現場じゃのお。どこに茶の苗が植

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番茶づくりは毎日アップアップ【お茶師日記15】

番茶づくりは毎日アップアップ【お茶師日記15】

2021年 6月6日

バン茶作りの始まり

 例年より早く、今年の一番茶は5月10日に本茶が終わり、その後バン茶づくりに移行した。この時期の「バン茶」は、一番茶の後遅れて伸びてきた比較的柔らかな芽を刈り取る「芽バン」と、一番茶の残葉の硬化した部分をガリガリ刈り取った「鬼バン」がある。この地域独特の言い方かもしれない。
 「バン茶」は漢字で書けば「番茶」だが「一番茶」と紛らわしいので「バン茶」と記

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【お茶師日記14】お茶刈りと職工の日々

【お茶師日記14】お茶刈りと職工の日々

 2021年5月5日

雨が続くと…

 現在、一番茶の真っ最中でありますが、雨。
 お茶農家さんたちは雨が降れば降ったで機械の整備やら小売り用の仕上げ、発送とお忙しいでしょうが、そういうものが一切なくお休みになるのが私。♪「雨が続くとぉ〜仕事もせずにぃ〜 キャベツばかりをかじってたぁ~」♪という歌詞が浮かんできますね。(こないか)

お茶刈りのお手伝い

 今年はお茶の芽が早かったのですが、その

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【お茶師日記13】 自然発生的「お茶摘み大会」

【お茶師日記13】 自然発生的「お茶摘み大会」

 今年(2021年)のお茶時期が、例年よりずいぶん早く始まりそうですが、昨年の「初摘み」の時の、ちょっと嬉しかった出来事をお伝えします。

初摘み

  2020年4月19日
 新型コロナで世の中が混迷する中、新茶シーズンとなりました。
 初揉みは4月19日の日曜日。我が社の茶園で最も芽の生育が早い、市の南部の住宅地に隣接する場所を朝から手摘みしました。

近所の子どもたちが

 関係者の家族やお

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【お茶師日記12】”清貧生活”で2年が過ぎた

【お茶師日記12】”清貧生活”で2年が過ぎた

2021年4月

 世の中は、新年度を迎えました。
 ということは、私も退職後2年を経過したということになります。
 1年があっという間ですね。
 皆さんも薄々気づいていると思いますが、幼少の頃と比べて、地球の自転、公転周期が年々早くなっていることは間違いないですよ。
 こんなに一年が早いということは。昔に産まれといてよかった。

 私ごとながら(いや、いつも自分のことしか書いてないだろ)、この2

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つるとり【お茶師日記11】

つるとり【お茶師日記11】

2019年6月13日 

畑仕事

一番茶の工場勤務が終わって20日ほど、家で少しずつ事務仕事などをしていたが、副社長から「2番茶を刈る茶園の『つるとり』やってくれませんか」とメールが入った。
 「つるとり」とは茶株面のヤマイモのツルを除去することである。我が社は山間地にあるが、市街地に近い南部の丘陵地に茶園を借地して経営規模を拡大しつつある。そこに二番茶を摘採する茶園が3か所ある。
 茶園の中

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【お茶師日記10】「肩書き」がないと…

【お茶師日記10】「肩書き」がないと…

2019年6月9日

一番茶終了

 工場は6月初めまで一番茶の番茶を製造して終了しました。私はお茶師としては2番茶までお休みです。しかし、幸い仕事がないわけではありません。社長から「今年はGAPを取るので手伝ってもらいたい」と言われていました。

 GAP(Good Agricultural Practice)とは、製品の安全性や環境や労働衛生に配慮した正しい生産管理方法を取り決め、認証を受ける

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茶工場に集う人々(その2)【お茶師日記9】

茶工場に集う人々(その2)【お茶師日記9】

2019年6月
 前回書いたような経過があって、この工場は2017年秋から新たなスタートを切りました。
 しかしです。いくら地域の茶業を守ると言っても、経営が行き詰まって解散しようかという工場を買い取って採算の取れる経営ができるのか、と誰もが思うでしょう。これについて新社長にはおそらく2つの戦略がありました。
 1つは会社としての「直営農場」を確保することです。茶栽培をやめていく人が続出する現在、

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茶工場に集う人々(その1)【お茶師日記8】

茶工場に集う人々(その1)【お茶師日記8】

 今回は、私がお手伝いしている茶工場(有限会社)に出入りするメンバーについて紹介します。
 会社は、静岡県中部の清流に沿った山間部にあります。「茶工場」といってもお茶を加工するだけでなく、お茶を栽培し、収穫し、販売する。純然たる農業生産をしています。

 会社としての正規メンバーは若い3人。30代の社長と30代の副社長が役員、そして高校を卒業したばかりのT君が社員です。
 3人はこの会社の構成員で

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【お茶師日記4】 一番茶が本格化

【お茶師日記4】 一番茶が本格化

2019年 4月28日

いよいよ大型の機械で製茶

 この日から120㎏ラインでの製茶が始まりました。
これまで、少量の35キロ機で製茶していましたが、朝、出勤すると社長が「120キロ機で3つ、葉っぱを流すから、製造頼む!」とのこと。
「今、蒸し始めた。生葉はコンテナの3番に入ってる。葉打機のプールに80㎏くらい入ったら一旦、搬送コンベアを止めて、Tさんの35キロ機の分を蒸して、終わったら残りを

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【お茶師日記6】毎日が失敗

【お茶師日記6】毎日が失敗

2019年5月8日

 ここで製茶の仕事を始めてから一番の、大きなミス(お茶の製造上の失敗)をしてしまいました。
 今までもちょこちょこと小さな失敗はありましたが、影響が小さいか挽回可能な程度でした。しかし今回は大きなミスです。
 茶工場では、毎日のようにトラブルが起きます。それは「機械の不具合」と「人為的ミス」のどちらかが原因です。そしてトラブルやミスが一つ起きると、それが次のトラブルやミスを生

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製茶の科学【お茶師日記5】

製茶の科学【お茶師日記5】

 2019年5月1日

新茶本番
 茶工場が本格的な稼働に入りました。
 日本の煎茶の加工とは、簡単に言うと「蒸した茶葉を形を整えながらひたすら乾燥させる」ことです。江戸時代に開発されたこの製法が、明治になって製茶機械が開発され手作業から機械製造へと移行しました。

製茶を科学で裏付けた人

 現在の製茶機械も基本的な構造は当時から変わっていません。製茶機械の操作技術も経験と勘で伝承されてきました

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【お茶師日記3】 初揉み

【お茶師日記3】 初揉み

2019年 4月18日

初取引の前日

 翌日に茶市場の初取引を控え、工場の掃除はお休みして初取引出荷用のお茶を初揉みしました。
 この会社(茶工場)は、拠点の山間地だけでなく市街地近くの丘陵地にも茶園を借地して規模を拡大しているので、早場所であるそちらの茶葉を朝からお茶摘みしました。我が家からだと10分もかからないので楽です。

お茶摘み

 会社のメンバーその家族、お手伝いをお願いした人など

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