マガジンのカバー画像

美術展めぐり

61
実際に足を運んで見に行った美術展の感想を書き留めています。
運営しているクリエイター

#美術館めぐり

五千の染付と千の椿

高北幸矢インスタレーション✕旧山繁商店「落花、瀬戸千年。」 という、大変レアな場所でのインスタレーションを見学してきた話。 先週のこと、瀬戸市内にある登録有形文化財、旧山繁商店でインスタレーションが行われていると知り、とても興味がわいた。瀬戸市というのは、焼き物の産地として千年とも言われる長い歴史を持ち、昭和40代あたりまでは隆盛を誇っており、瀬戸物といえば陶器を指すほどだった。だが、陶磁器産業は海外製の安い製品に競り負けてだんだんと没落してゆく。瀬戸物の町はかつての勢いを

ミロ展――日本を夢見て@愛知県美術館

これは存在を知った瞬間から行く気まんまんだった。一種独特の不思議な図形で世界を書きあらわす画家、ジョアン・ミロ、実は絵画だけでなく、タペストリーや版画、焼き物にまで製作範囲を広げていた。 また、ミロは親日家としても有名で、日本に関する(主に美術系の)資料を収集し、来日を果たしたのち、70年大阪万博ではガスパビリオンに壁画を提供していたのだという。なぜ親日かというと、ミロが育った時代のヨーロッパ、主にフランスとその周辺ではジャポニズムがもてはやされていたからで(恐らくパリ万国

「布の庭に遊ぶ 庄司達」@名古屋市美術館

ずいぶんとご無沙汰していた名古屋市美術館、玄関をくぐるとスタッフが待機していて、チケットを見せると「入り口は2階です」と案内をしてくれた。正直驚いた。ホスピタリティとかいう以前に、そもそも人が配置されてた記憶がない。 へぇ、今回は2階が入り口なのか…と階段を上がると、展示室へ続くはずの渡り廊下は塞がれている。あたりを見回すと、なんと、ふだんは出口として使われている場所が入り口ではないか。良い意味で裏切ってくる。期待値爆上がりで「布の庭に遊ぶ 庄司達」展に足を踏み入れた。

ギャラリートーク@名古屋市美術館が初体験の面白さだった話

名古屋市美術館の地下階は常設展示コーナーになっている。時期によって多少顔ぶれは変わるが、基本的には現代美術、エコール・ド・パリの作家たち、メキシコの作家たち、という構成で、名作は言わずもがな、個人的に好きな作品が置いてあるので、企画展のついでにいつも立ち寄っていく。 ちなみにこの時の企画展はこちら 今回もいい感じの展示だと思いつつ、のんびり眺めていたら、社会見学と思しきの中学生がガヤガヤと入ってきた。オーノー!早く撤退を!と思ったのはほんの一瞬のこと。よく見ると10人くらい

現代の錬金術師?

9月の話になるが、東京都現代美術館でオラファー・エリアソン展を見てきた。きっかけは8月の終わりに日曜美術館で紹介されていたのを偶然目にしたこと。画像越しに作品の美しさと現代的なコンセプトに共感し、ぜひ実物を見たいと思った。画像越しの鑑賞が推奨される昨今だけども、まだ現場の空気感まで遠隔で伝わるレベルではないからね。 かねがね「アート」と呼ばれる作品はリアルの体験が重要だと思っている。特に現代美術に多いインスタレーション形式の作品は、展示されている空間、その場の空気、自分のコ

呼ばれた?

最初はお出かけの計画に入っていなかったのに、諸々の事情で気がついたらそこにいた、という経験をした人は少なくないと思う。それをセレンディピティと呼ぶ人もいる。今回は偶然ではあるけれど、出会うべき作家に出会った話。 友人たちとのドライブ、最初は多治見のオシャレなカフェでランチをして、帰りはこれまた面白そうな店でスイーツを食べるつもりだった。ところが目をつけた店はことごとく定休日。どうするよ?と相談した結果、同じ多治見市内にあるセラミックパーク美濃に行ってみようという話になった。