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ギャラリートーク@名古屋市美術館が初体験の面白さだった話

名古屋市美術館の地下階は常設展示コーナーになっている。時期によって多少顔ぶれは変わるが、基本的には現代美術、エコール・ド・パリの作家たち、メキシコの作家たち、という構成で、名作は言わずもがな、個人的に好きな作品が置いてあるので、企画展のついでにいつも立ち寄っていく。
ちなみにこの時の企画展はこちら

今回もいい感じの展示だと思いつつ、のんびり眺めていたら、社会見学と思しきの中学生がガヤガヤと入ってきた。オーノー!早く撤退を!と思ったのはほんの一瞬のこと。よく見ると10人くらいの集団に分かれて入場しており、各グルーブには先生……いや、解説ボランティアがつき、特定の作品の前で立ち止まる。もしかして、コレは今流行りのアレではないのか?  対話型鑑賞! 思った通り、解説ボランティアは生徒たちに話しかけ、絵について質問し、生徒たちは思い思いの答えを返している。いいなあ。今どきの中学生は美術鑑賞の基本まで体験できて。

さて、展示を一通り見て満足し、休憩コーナーの椅子で一休みしていたときだった。館内アナウンスが流れ、間もなくボランティア解説員によるギャラリートークが始まるという。何というタイミング、これは天の采配としか思えない。おもむろに立ち上がり、申込みに行った……ら、参加者一名、マン・ツー・マンの豪華すぎるギャラリートークとなった。いや正確にはガイドさんが2名いらしたから、もっと密度が濃い。

持ち時間はガイドさん1人あたり15分でトータル30分。3つの作品についてたっぷり語り合うことができ、大変満足だった。今まで何度も見てきたお気に入りの絵について、素直に感じるところや疑問点をぶつけ、ガイドさんからは作品に関する様々な情報を教えていただき、本当に有意義な時間だった。先日ブレイクした美術関連本『目の見えない白川さんとアートを見にゆく』に登場する白鳥さん御一行様が、言葉で「観る」美術館ツアーにハマったのがよくわかる。絵について語り合うとき、現世のしがらみから切り離され、とても自由な心持ちになれる。

実は、以前に豊田市美術館で、やはり対話型のギャラリートークに参加したことがある。その時は参加者が10名以上で、一つの絵の前に椅子を並べて座り、学校の授業みたいに意見があると手を上げて発言する方式だった。残念なことに手を挙げる勇気が出ず、ひたすら他の参加者の意見と解説員の言葉を聞くばかりだった。それなりに面白く興味深い発見もあったけれども、あまりワクワクしなかったことをよく覚えている。これは時の運というか相性もあるのかもしれない。

さらにさらに、常設展のとなりでは「新収蔵品お披露目」コーナーがあり、そこでは新しく迎え入れた作品について、解説のみならず購入経緯についても書かれていた。収蔵品に対する美術館の基本方針や現在の問題点(具体的には予算が厳しく補修も新規購入も難しいこと)もしっかり説明されていて、学芸員の勉強をしたことを思い出しつつ読むと、大変勉強になることばかりだった。他の美術館では一般利用者に対して作品の収集状況まで詳しくはっきり公開した例を見たことがない。

今の名古屋市美術館、中学生に対話型鑑賞の機会を与えていることや充実した内容のアートペーパー発行も含め、ずいぶん「攻めているなあ」と感じた。(そういえば今回のあいちトリエンナーレ……いや国際芸術祭「あいち2022」の会場にはなっていなかった。まあ、前回の2019年は色々あったからね……)

いつも彼は空を飛んでいる

あとでHPを見たら、大変おいしい情報を見つけてしまった。美術に興味のある人のサークル兼後援会みたいなもので「名古屋市美術館協力会」という会がある。年会費は決して安くないが、特典はお値段以上の内容だ。迷う……これは美味しい案件だが、だが……もう少し懐が温まったら考えよう。

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