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【逆光記】〜岐阜に行くわよ①〜

とある日の日付が変わって数分経った時、岐阜へ先乗りして宣伝を手伝っている『逆光』京都メンバー・ユキカゲ から電話があった。「今日から岐阜へ来て手伝ってほしい」とのことだ。

そう。映画『逆光』は5月上旬に京都での上映が終わった後(『逆光』が京都を離れてまだ2ヶ月ほどしか経っていないが、もうすでに懐かしいという感覚さえある)、福岡へ行き、尾道映画祭へ行き、6月末からは名古屋で上映しながら、岐阜柳ヶ瀬商店街の夏祭りを映画祭にプロデュースしていろいろなイベントを行おうとしている。現在、岐阜でも『逆光』は上映されている。僕は祭りが行われる23日の前日に岐阜へ乗り込む予定だったが、須藤蓮からユキカゲ の電話を通して来てくれと頼まれると行かないわけにはいかない。ただ、僕にもバイトや遊びの予定があるわけで、その日からずっと岐阜にいるわけにはいかない。けれど都合よく、2日後から連休があったため、その連休を使って岐阜行きを決意したわけである。そして祭りの本番も岐阜へ行く。要は2週間の間に2回岐阜へ行くというわけだ。

次の日、朝から夕方までしっかりとバイトをした後、京都駅付近でたらふく酒を飲んで、新幹線に乗った。そして約30分ほど本でも読んでいれば岐阜羽島へ到着する。僕の自宅から京都の繁華街・河原町へバスで揺られている時間より少しばかり短い時間で岐阜へ行くことができる。新幹線の圧倒的なパワーを体感するには十分な体験だ。僕は在来線を乗り継いで、本を読んだり駅弁を食べたり風景を見たりして、カメのように地道な旅をするのが好きなのだけれど、ウサギのようにパワフルな旅も快適で良い。

そうして僕は岐阜羽島に降り立ったわけであるが、降りた人は僕を含めて5人くらいであった。しばらく待っていると、岐阜・名古屋の『逆光』宣伝大使ことセッキーの車がやって来て、助手席から須藤蓮が降りてくる。2ヶ月ぶりの再会で、酔いのせいで上がっていた体温が再び上昇し、後部座席にて数週間ぶりにユキカゲ とも再会し、歌を歌ったり喋ったりで僕のテンションは最高値まで上りきった。そのまま「みのり」というスーパー銭湯で降ろしてもらい、外的要因によってさらに体温を上げようとする。ジャグジー風呂で、露天風呂で、最近思っていることについて語らい、サウナに入ることを忘れてしまうくらい語らい、閉店時間になって追い出されるくらい語らった。ほどよく覚めた酔いにまた酒を注ぎ込むと、次の日は頭痛とともに迎えることになるかも知れぬと最近思い知った僕は、瓶に入ったみかんジュースを飲み干し、「みのり」を後にした。

柳ヶ瀬商店街は戦後の高度経済成長期に発展し、バブルの崩壊とともに衰退し、かつての勢いは衰えているものの、今もなおしぶとく生き続けている商店街らしく、そのアーケードの巨大さと広さには圧倒された。僕は何でもデカいものにはついつい惹かれてしまうらしい。

縦横に大小のアーケードが組まれ、碁盤の目のようになっているため、ここは京都なのかと錯覚したほどだ。マクドナルドやスターバックスなどのチェーン店は少なく、渋いフォントの看板を掲げた古そうなお店がひしめいている。京都の寺町・新京極商店街を現代の機能的なアサルトライフルに例えるならば、柳ヶ瀬商店街は大砲のようである。ちなみに、出町柳の枡形商店街はゲベール銃(戊辰戦争の頃、一般的に使われていたと日本史の授業で習った)といったところか。そんな巨大で古めかしい柳ヶ瀬商店街に一目惚れしたのであった。




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