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「僕の京都案内。」〜POPEYEにあやかってみる〜

本日発売のPOPEYE 12月号は、待ちに待った「京都」にまつわる特集だ。タイトルは「お久しぶりです、京都。」であり、前回のPOPEYE京都特集「お邪魔します、京都。」からは実に5年の時を要している。この5年、どれだけの人がPOPEYEで京都が特集されることを待ち望み、どれだけの人がPOPEYEで京都が特集されると知ったときに沸き立ったことか。実を言うと、僕もそのひとりだ。実際、今から2ヶ月ほど前、僕が店番を務めている誠光社へPOPEYEのライターさんが来たときは、こっそり僕が取材を受けちゃおうかとも思ったけれど、発売日にPOPEYEが書店に並んでから30分も立たぬ間に「なんでこいつが誠光社の取材を受けているんだ」とばれてしまいそうだから、それはやめておいた。

今号の京都特集には「僕の京都案内。」といって、スチャダラパーのBoseや麒麟の川島などと言った芸能人から、六曜社珈琲店2代目の奥野修さんや誠光社の店主堀部篤史さん、ホホホ座の山下健二さんなどの、京都の重鎮と呼ばれる人たち、22人に京都のおすすめの場所を聞いて、それを「僕の京都案内。」とまとめているページがある。概要文には「ノープランで行くと本当に何もないたびになりうるからね。京都を歩くならやっぱり信頼できるガイドが必要だ。この街を愛する22人に本気のオススメを教わってみよう」と。なぜ22人なのか。それは予算だったり、誌面の都合だったりがあるのだろうけれど、僕は京都を案内する人は多いに越したことはないと僕は思うので、誠に勝手ながら22人を23人に変えさせていただき、僭越ながら、僕も京都を案内させて頂こうと思って、この原稿を書いている。

さて、せっかく京都で休日を過ごすというのであれば、朝からお酒をやりたい。いろんな店を呑んで歩き渡りたい。そうでしょう。こなすべき大学の授業や、やり遂げる仕事があることも忘れて、朝っぱらから呑む酒は特別な旨さがある。特にそれが平日で、社会がせっせと働いているとなお良い。背徳感というものが酒を益々旨くさせるのだ。そんな僕がモーニングとして通っているのが、「バールカフェ・ジーニョ」だ。北大路通と下鴨本通りが交わるあたりに佇む、古い喫茶店のガラス戸を開ければ、周辺に住んでいるのだろうおじいちゃんやおばあちゃんの姿がある。そこへズカズカと入ってゆき、メニューを開くまでもなくハムチーズサンドMサイズ(¥200)とサッポロ黒ラベルの中瓶(¥400)を注文する。そうするとまず瓶ビールが運ばれてきて、それをしっぽりやっていると、大きめのバケットにハムととろけたチーズが挟まれたサンドがやってくる。味よし、値段良し、朝から飲酒よしの3つが揃ったかけがえのない喫茶店なのである。

映画でも観ようと河原町を三条の方まで歩いてくれば、流石にお腹が減ってくるし、喉も乾いてくる。お腹が減ってくる頃には、「龍鳳」が見えてくる。中に入ったらまず瓶ビールを頼む。おじいちゃんがお客に背を向け、黙々とフライパンを振るタイプの町中華なのだけれど、こちらの名物は「からしそば」だ。フライパンを使っているのかどうなのかよくわからないけれど、あまり辛すぎないからしが効いたトロトロの餡が麺に絡みつき、酒がよく進んでついついもう1本おかわりをしてしまう。熱々の春巻きを思い切って頬張って下を火傷したりするのもそんなに悪いことではないんじゃないかと思う。餃子も焼飯も忘れられないから、メニューを眺めるときはいつも迷ってしまう。

河原町三条や四条を歩いているとなんだか疲れてくる。人が多いから、徐々に疲れてくる。やはり僕は人混みが苦手で、人が多ければ多いほど元気がなくなるし、ご機嫌ではいられない。だから僕は、その周辺で疲れてしまうと、藤井大丸の屋上へ行くことにしている。藤井大丸の屋上には数々のテーブルやベンチが並べられ、ペットボトル・カップ・おやつなどの自動販売機が揃えられ、喫煙スペースもある。いつ訪れても、程よい人数のひとたちがまったりしている。時に、藤井大丸に入っているであろうアパレル定員が商品を身につけた写真の撮影などをしている。藤井大丸の屋上は忙しなく人が流れ続ける都会的な街の中に浮かぶオアシスのような場所である。テーブルや椅子が並べられたスペースには雨よけもあるから、例え雨が降っていても、下の食料品売り場で買った缶ビールをゴクリゴクリとやってしまおう。

秋になれば日が暮れるのは早い。というのは建前で、京都のこととなると僕はいくらでも書けそうな気がするけれど、あまり長くなっても仕方がないので、そろそろ日が暮れたことにして、夜ご飯へ行こうと思う。きっと藤井大丸の屋上でまったりしすぎたのだ。

河原町通を北上してゆき、丸太町通りと交わる交差点をさらに少しばかり北上したところに「花いちりん」がある。お店の前のディスプレイには食品サンプルがおかれ、そのラインナップは親子丼・天ぷらうどん・カツ丼など、いかにもな感じの定食屋だ。壁に富士山の絵が描かれた銭湯くらい「いかにも」だ。そんなお店の暖簾をくぐって、乱雑に扱うと破れてしまいそうなメニューを丁寧にめくると、うな重が見つかる。ボロボロになっているので、字は読みやすいとはとても言えないから、うな重の値段は「850」にも見えるし、「1350」にも見える。うな重であることを考慮すると、「1350」であっても破格なのだけれど、実は「850」の方なのだ。今日は土用の丑の日ではないけれど、ちょっとだけうなぎが食べたくなったというときは、迷わずに「花いちりん」の暖簾を潜ることにしている。ちなみに、ここでも瓶ビールは忘れない。

花いちりんから徒歩5分もかからない場所にあるのは、何を隠そう「かもがわカフェ」だ。鴨の輪郭が浮き出る愛らしい看板やステンドグラスチックな窓が「かもがわカフェ」の目印であり、扉を引き開けると2階への階段が続く。1歩ずつ、1段ずつ踏み締めて登っていけば、マスターの大さんから「いらっしゃい」という声が聞こえる。お腹が空いていれば、「3種のチーズを使ったボローニャ風ラザニアのドリア仕立て」や「豆乳ラーメン」を食べたいところなんだけれど、生憎うな重を食べてしまったので、また今度食べることにしよう。ミックスナッツをボリボリやりながら、ビールなりワインなりを呑んでいると、徐々にカウンターに人が集まって賑わってくる。それがなんだか心地良くて、どんどんお酒をおかわりしてしまう。いい心地で酔うと、ますますお酒をおかわりをしてしまう。帰る頃にはフラフラになってしまうから、帰り道にはくれぐれも気をつけなければならない。僕は先日、かもがわカフェの帰り道に自転車でひっくり返っていろんなところを擦りむいてしまったから。

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