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【ラグビーワールドカップ2023】オールブラックスを分析!2大会ぶりの優勝なるか?

10回目を迎えるラグビーワールドカップ(RWC)が開催国のフランスで9月8日から始まる。
4年に1度のラグビーの祭典を目前に筆者の住むニュージーランド(NZ)のラグビーファンの気持ちが高まっている。
RWC最多タイの3回の優勝(1987, 2011, 2015年)をしているNZ代表 “オールブラックス” は、2大会ぶり4度目の優勝を目指す。

これまでのRWCでは、オールブラックスの名前が毎回必ず優勝候補の本命に挙がっていた。しかし近年の不振により今大会の優勝候補の本命は、アイルランド、フランスの声が多く、この2チームにオールブラックス、南アフリカを合わせた4チームで優勝を争う事になるか。
RWC2023の開幕を目前にオールブラックスを分析もかねて紹介してみたい。

※トップの写真は、RWC2011決勝の表彰式 EdenParkにて筆者撮影


※上記は、ラグビーリパブリックに掲載して頂いた記事

◆昨シーズンは、かつてないほどの絶不調

最強軍団と言われていたオールブラックスが近年不調に至っていた。特に昨年は、アイルランドに1勝2敗でホームシリーズを落とし、アルゼンチンにホームで初めての敗戦、そしてホーム3連敗となるなど不名誉の史上初をいくつも経験したシーズンだった。
※以下のリンク記事で昨年の不振について触れています。
関連記事 : ラグビー王国の危機!オールブラックスは復活できるか

しかし南半球4か国対抗戦のザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)優勝、タスマン海峡を挟んでのライバルのオーストラリアとの伝統戦ブレディスローカップを保持するなど、不調ながらも何とか持ちこたえていた。

その後、北半球遠征では、調整不足で挑んだ初戦の日本戦で38-31と冷や汗勝利、ウエールズに55-23と圧勝したものの、スコットランド戦は終盤までもつれ31-23と再び冷や汗勝利、遠征最後のイングランド戦では、終盤に2トライを献上して25-25の引き分けに持ち込まれた。
好不調の波が激しく年間を通じて一貫性のないパフォーマンスで2022年を終えた。

◆RWC2023開幕前のテストマッチ5試合の結果

Photo: 2023年8月のワラビーズ戦.  ダニーデンにて筆者撮影

RWC2023を前にしてオールブラックスは、7月に行われたザ・ラグビーチャンピオンシップでアルゼンチンに41-12、南アフリカに35-20、最終戦のオーストラリア相手にも38-7といずれの試合も危なげなく勝利して優勝した。

8月に入りオーストラリアとの再戦では、RWCに向けて若手を中心とした布陣で挑み苦戦しながらも、主力を投入した後半から流れを変えて逆転勝ち。劣勢の状態からでも試合をコントロールして勝利に持ち込む粘り強さも見せた。強いオールブラックスが戻ってきたと誰もが思った。

しかし8月25日に行われたRWC開幕前最後のウォームアップマッチの南アフリカ戦で史上最多の点差の7-35で敗戦してしまったのである。これによりNZ国内のラグビーファンの不安を再燃させたのは言うまでもない。

だた、ケガで主力数人が不在だった影響が少なからずあった。北半球のレフリーの判定に戸惑った感もあり(スーパーラグビーで慣れている南半球のレフリーとの解釈の違いなど)、反則を多くとられてカードを何枚か貰った。
この規律の悪さで試合の半分以上の時間を数的不利な状況で戦う事を強いられた。これでは力の差が均衡している相手に勝利するのは容易ではない。

規律の他にFWで劣勢、ボール支配率は南アフリカに圧倒され、更にはハンドリングエラーも多発した事が試合の敗因だった。7月に南アフリカに快勝した時と逆の展開での敗戦になった。

今回は、試合内容が良くなかった事と点差が大きく更にはケガ人も数人出てしまい、RWC直前と言う事もありNZの国民を始めオールブラックスのファンが不安に思うのも無理はない。
しかしながら、今年は充実度の方が上回っている印象が強い気がする。この敗戦はRWC開幕前に “良い薬になる“ と前向きに捉えてても良いのではないだろうか。

◆オールブラックスの33人のワールドカップのスコッド

https://twitter.com/AllBlacks/status/1697477023902712222/photo/1 (All Blacks X(Twitter)

「FW: フォワード 」
HO(フッカー)

コーディ・テイラー、サミソニ・タウケイアホ、デイン・コールズ.
PR(プロップ)
イーサン・デ・グルート、タイレル・ロマックス、ネポ・ラウララ、
フレッチャー・ニューウェル、オファ・トゥンガファシ、タマイティ・ウィリアムズ.
LO(ロック)
スコット・バレット、ブロディ・レタリック、サム・ホワイトロック、トゥポウ・ヴァーイ.
Loose forward(FL: フランカー/No8:ナンバーエイト)
サム・ケイン (キャプテン)、シャノン・フリゼル、アーディ・サヴェア、
ルーク・ジェイコブソン、ダルトン・パパリィイ.
「BK:バックス」
Halfback(SH: スクラムハーフ)

アーロン・スミス、フィンレー・クリスティ、カム・ロイガード.
First five-eighths(SO: スタンドオフ)
リッチー・モウンガ、ボーデン・バレット、ダミアン・マッケンジー、
Midfielder(CTB: センター)
ジョーディ・バレット、デイヴィッド・ハヴィリ、リーコ・イオアネ、アントン・レイナート=ブラウン.
Outside back(WTB: ウイング、FB: フルバック)
ケイレブ・クラーク、レスター・ファインガヌク、ウィル・ジョーダン、マーク・テレア、※エモニ・ナラワ.
※ナラワは、けがのため離脱決定で変わりは開幕戦後に発表予定。

◆オールブラックスが優勝する為には

・カギは、フォワードの激しさ

オールブラックスの昨年までの不調の要因は、何と言ってもFW(フォワード)の劣勢が一番に挙げられる。しかし、昨シーズン途中でFWコーチに加わったジェイソン・ライアン氏によるコーチングが良い影響を与えタフなFWが戻ってきた。
その中でも、2019年の前回のRWCも含めて長年固定されていなかった6番のポジションのレギュラーを掴んだシャノン・フリゼルの今季の成長はチームに大きな影響を与えた。
毎試合フィジカルバトルで相手を上回りFWに勢いを付ける要因になった事は、オールブラックスがRWC王者奪回に向けて明るい材料となる。
何と言ってもFWの激しさが優勝のカギを握るだろう。

※南アフリカとの2戦目の負けた試合は、フリゼルを始めFWのレギュラー数名が欠場していた。

バックスは、ダブル司令塔がカギになるか
FWのタフさが戻った事により持ち味の速い展開が復活した。それにより、昨年までプレッシャーを受けていたBK(バックス)が縦横無尽に駆け抜けるシーンを今年は何度も見れるようになった。

ワールドカップの大舞台で勝つには、司令塔のパフォーマンスの影響は果てしなく大きい。今季オールブラックスの好調の要因としてモウンガ、B・バレットのダブル司令塔が機能しており、キッキングゲームも含めバリエーションが増えた事がチームにプラスとなっている。
そしてモウンガ、B・バレットのどちらかが怪我をしても今年スーパーラグビーで大活躍したSO/FBダミアン・マッケンジー(以下の写真)が今大会はスコッドに居るのも心強い。

Photo: 2023年8月のワラビーズ戦. ゴールキックを蹴る前のマッケンジー . ダニーデンにて筆者撮影

前回大会もダブル司令塔で挑んだが、イングランドに敗れた準決勝では、FWが劣勢となりBKに活きたボールが供給されずに機能するには至らなかった。したがって、FWがブレイクダウン(タックル後のボールの争奪戦)を始めコンタクトエリアで有利になる事が何よりも重要となってくるだろう。

◆プール戦の大一番は、優勝候補の本命フランス

プールAでオールブラックスの最大の敵は、いきなり開幕戦で激突するビックマッチとなる開催国のフランスになる。両チーム主力のケガ人が居るが熱い開幕戦になる事は間違いないだろう。

プールAは、他のプールと比べると強豪が少なく、オールブラックスの予選通過は、確実と思われるが、ノックアウトステージに向けて競った試合を開幕戦のフランス戦以降4週間経験できない事が気がかりな点になる。
フランス戦以外では、3戦目のイタリア戦も何気に面白そうだ。

Photo: RWC2011決勝 オールブラックス×フランス EdenParkにて筆者撮影
中央は、RWC2023で4回目のW杯出場になるサム・ホワイトロック

オールブラックスの注目選手
FWから見ていくと、大ベテランのサム・ホワイトロック、ブロディ・レタリックのLOコンビを押さえてレギュラー争いに食い込める実力をつけて来たスコット・バレットに注目したい。すでに紹介したフリゼルと共にFWに勢いをつけることが出来るか。

BKに目を向けると、既に紹介したダブル司令塔の他に、ウィル・ジョーダン、マーク・テレアのWTBコンビを挙げたい。スピードのジョーダン、ステップのキレのテレアの二人を活かす展開に持ち込めるかどうかも注目したい。彼らがトライを沢山取るシーンが見れればオールブラックスの優勝が見えてくるか。

Photo: ジョーダン(中央)の復帰戦. 2023年クライストチャーチにて筆者撮影

プール戦を通過すれば、ノックアウトステージに入る。オールブラックスの一番の山場になるのがプールBチームと対戦する準々決勝になる。
対戦が予想されるのが、開幕前の世界ランキング1位のアイルランド、もしくは前回大会のチャンピオンの南アフリカのどちらかになる可能性が高い。

どちらのチームもオールブラックス、フランスともに優勝候補になり、開幕戦のフランス戦と同様に熱い準々決勝の戦いになる事は間違いないだろう。

昨年までの不調から復活の兆しが見えてきたオールブラックスが、ワールドカップの舞台で完全復活して2大会ぶり4回目の優勝することが出来るか。
世界中で人気のあるオールブラックスをぜひ注目していただきたい。

※以下の記事は、開幕戦のメンバーをもとに書いた記事(ラグビーリパブリック)内容は: ケガ人の代役選手の紹介、勝利のカギは?など

オールブラックスのプール戦(プールA)※日付は現地時間

9月 8 日(金) フランス
9月15日(金)ナミビア
9月29日(金)イタリア
10月5日(木)ウルグアイ
https://www.rugbyworldcup.com/2023/ 
ラグビーワールドカップ2023公式サイト
https://www.jsports.co.jp/rugby/worldcup/schedule/ 
J Sports 放送スケジュール

以下の記事でプール予選の展望も書いています。
「まもなく開幕!ラグビーワールドカップ2023の見どころ」


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