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街の避難所・ワインショップとは? 2020/2/11

ワインショップと聞くと、どういう場所を想像するでしょうか?

ある人にとっては、世界中から宝石が集まった夢の様な場所かもしれないし、ある人にとっては、恋人への贈り物を買いに行く少し特別な場所かもしれません。

 一方、ブルックリンの最北部、グリーンポイントと呼ばれる地域にあるワインショップ、「ダンデライオン(DANDELION)」は、私が今まで抱いていたワインショップという場所に、新たな役割があることを教えてくれました。

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(英語でたんぽぽを意味するDandelionの外観。黄色の看板が目印)

お店が位置するグリーンポイントのFranklin Streetには、センスの良い洋服、雑貨店などの個人店、こじんまりした可愛いカフェが並んでいて、散歩するのも楽しい道。大手ブランドが集まるマンハッタンの繁華街、ソーホーとはまた違う魅力があるエリアです。

 他のお店と同じく、ダンデライオンも個人経営のワインショップです。2008年、当時はポーランドのお酒を販売する酒屋しかなかった時代に(グリーンポイントはもともとポーランド系移民が多く住むエリア)、世界中から選りすぐりセレクトしたワインを販売始め、瞬く間に街の人気店になりました。セレクションは、スペイン、フランス、イタリア、ドイツがメインですが、国産(アメリカ)もオセアニアもジョージアもあり。オーナーの女性はもともとNYのワイン会社やバーテンダーを経験した後、生まれ育ったこの地にワインショップをオープン。デイリーに楽しめるワインを置きたかったというオーナーの思いから、ほとんどのワインが$25以下!ニューヨークのワインショップではなかなか珍しいプライスゾーンです。

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(彼らのコンセプトは「昔の学校」。木製のラック、大きな机、アメリカ国旗など、どこか懐かしい雰囲気が漂う)

このワインショップ、ダンデライオンに何度か足を運んでみて、他のワインショップと違うと感じた事が、ローカルのコミュニティへの参加レベルが非常に高いこと。お店にはいつもご近所さんと思われる人が入ってきて店員とハグをしているのを見かけます。店員なのかお客さんなのか見分けがつかない時があります。(笑) 先日の記事で書いた、トランプのワイン関税騒動の時も、この界隈のワインショップで真っ先にテイスティング イベントを実施していたのが、このダンデライオンでした。平日の夜に行われたそのイベントは、当日の朝に告知したにも関わらず、店内で身動きが取りにくくなるくらい沢山のお客さんが来ていました。彼らのほとんどがご近所さんたちで、中には子どもや犬を連れていたり、妊婦さんまで!もはやワインが飲める・飲めないを超えて、町の集会所の様な場所になっていました。

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(ワイン関税に関するテイスティングイベントの時。スタッフが一人一人に丁寧に説明をしていたのが印象的)

何より驚くべき事は、ダンデライオンの近所に住む人たちが、自分の家の合鍵をお店に預けていることです。店員のJenifferさんに話を聞いたところ、「皆、都会暮らしで忙しい毎日を送っているから、鍵を預ける場所がありません。ここに置いておくと、お客さんのベビーシッターやクリーニング屋さんが取りに来たりしています。この場所はグリーンポイントのコミュニティスペースの様になっていて、ここのレコードをお客さんが借りて行ったりもしています」とびっしりとレコードが並べられた棚を指差して、にっこりと教えてくれました。

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(右側の壁にかけられた、お客さんの名札付きの合鍵。左側には貸し借り可能なレコードの棚)

更に話を聞くと、「オーナーは、このお店を地元の学校みたいな場所になればというコンセプトでオープンしました。お客さんが何か新しいことを学んでいけるような場所として、毎週木曜の夜に試飲会も開催するようになりました。ワインは普段家で飲めるようお手頃価格を揃え、近所には無料配送のサービスをし、気づけばお客さんの合い鍵まで預かるようになり・・・。いつの間にか、ワインショップ以上の存在になっていったのかもしれません」

 近くのレストランへ購入したワインの持ち込み無料サービス、いわゆるBYO(Bring Your Own)なども行っています。

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(店に置いてあったBYOの紙。ダンデライオンで購入したワインを近所のANELLAというレストランへもっていくと、木曜日は持ち込み無料!)

話を聞いたスタッフの彼女からは、このエリアが好きで、このお店や人が好きで、そしてワインが大好き!という情熱が全身に表れているのを存分に感じました。そして、この界隈の新参者である私にも「ようこそ!」とウェルカムな態度で迎えてくれました。私自身もそうですが、都会で暮らし、近所付き合いがない生活をしている中で、こういう場所が一つでもあると、とても心強い。そして何よりワインショップが、こうした存在になれるんだ!と嬉しく、胸がほかほか温かい気持ちになって店を後にしました。

 彼らのウェブサイトに、こんな言葉がありました。

----With its schoolhouse-like atmosphere, weekly wine tastings, and free local delivery, Dandy has become something of a refuge for the residents and visitors of Brooklyn’s Northside.---

「校舎の様な雰囲気、毎週のワインテイスティング、地元への無料配達で、ダンデライオンはブルックリンの北側の住民やお客さんの ”ちょっとした避難所” となりました。」

 

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