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アメリカの新定番?缶ワインの可能性とは 2020/1/31

「アメリカで缶ワインがブームです」

昨年頃から、この様な缶入りワインに関する記事を目にすることが多いのですが、実際のところどうなんだろう?と思い、ニューヨークの缶ワインの現状を探ってみました。

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アメリカのワイン専門雑誌、WineSpectatorによると、2018年の缶ワインの売り上げは6900万$(約77億2800万円)で、2012年の200万$(約2億2千万円)から比べ、急速に成長している市場であるといわれています。

これほどにまで缶ワインの市場が急成長している理由には大きく2つあって、1つは、何より便利であること。瓶より軽く、持ち運べてアウトドアやスポーツ観戦、野外イベントにぴったりであり、カジュアルに楽しめるということで、ミレニアル世代と言われる若者(1980年代から2000年代初頭に生まれた世代)を中心に消費されています。アメリカの大手生産者、ロバート・モンダヴィは、昨年2019年にアメリカのNFL(ナショナルフットボールリーグ)の3つのチームの公式ワインパートナーとして、新しく缶ワインをリリースしました。ちなみに、NFL全体の公式ワインも、缶ワインです。

 2つめは、瓶より缶の方が、環境に良いと言われていること。これは、瓶に比べて缶の方が、リサイクル面、生産面、輸送面、において、二酸化炭素の排出を抑えられる為、パッケージという観点からいうと、サステイナブルなワイン造りであるという意見です。

 私も実際にニューヨークのワインショップの缶ワインを調べてみました。

 まず大手ワインショップでの販売状況をみてみると、NYの大手ワインショップAstor Wines&Spiritsで見つけたのが、缶ワインの先駆者とも言われている、2004年にリリースされたカリフォルニアのソフィア・コッポラの187ml缶。ボトル・缶共に日本にも輸入されているのでお馴染みかと思いますが、映画監督のフランシス・フォード・コッポラが、娘ソフィアの為に作ったといわれるスパークリング・缶ワインです。

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(コッポラのスパークリング・缶ワイン。大手ワインショップAstorにて。187ml 4缶セットで$18.96(約2100円)にて販売)

次にカリフォルニア発祥の大手人気スーパー、トレダー・ジョーズのワインショップでは、ちょうどオレゴンの生産者、”ユニオン・ワイン・カンパニー”の缶ワイン、”UNDER WOODの試飲を行っていました。彼らは、「オレゴンのクラフトマンシップによって作られた高品質なワインを気軽に楽しむこと」をコンセプトに2004年に立ち上げられた生産者で、日本にも一部輸入されています。

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(UNDERWOODのNOUVEAUピノ・ノワール。ヌーヴォーという名前から想像できるように、2019年ヴィンテージ。1缶375mlあたり、$6.9(約780円)で販売)

さらに高級老舗スーパー、シタレラでは、お酒売り場にビールと並んで缶ワインが販売されていました。低アルコール(6%)に作られているので、スーパーでも販売できるのだと思います。

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(NY州のブドウから作られた低アルコールの缶ワイン)

一方、私が住んでいるブルックリンのワインショップでは、小規模生産者達によるこだわりの「プレミアム缶ワイン」が販売されていました。ブルックリンの最北に位置するおしゃれエリアであるグリーンポイントと呼ばれる地域のワインショップ、ダンデライオンには、3種類の缶ワインが冷蔵庫の中に並んでいました。

その中のひとつ、SANS WINE Co.は、2015年設立のワイナリーで、なんと缶ワインしか生産していません。彼らは有機栽培の畑や環境に配慮した生産者からブドウを調達することを哲学とし、フレッシュで生き生きとした親しみやすいワインを作っています。1缶$10(約1200円!)となかなかのお値段です。(ボトル1本買えちゃいます...)

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(上段右端がSANS WINE.coの缶ワイン。2017年のソーヴィニヨン・ブラン。畑名まで記載されています。ブドウは有機栽培。1缶375mlで$10(約1200円)で販売)

色々ある中で、私はウィリアムズバーグにあるVINE WINEというお店で販売されていた2種類の缶ワインを購入してみました。

生産者は、左がNO FINE PRINT 1缶250mlで$6(約720円)。

右がseeds&skins 1缶355mlで$8 (約960円)。 

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NO FINE PRINTは、音楽業界のTimとPatrickが「難しい専門用語と、ワインを単純に楽しみたい人との障害を破れるような、美味しくてカジュアルに楽しめるワインを作る」というミッションのもと2018年に立ち上げたプロジェクト。

味は、かなりフレッシュ!ほんのりシュワっとした炭酸を感じる弾けるような飲み口で、公園の芝生の上で寝ころびながら飲みたいと思わせられるワインです。缶の側面には、「この超美味しい白ワインは、カリフォルニアの太陽によって、沢山の愛、専門知識、ほんの少しの炭酸と共に作られました」との記載があります。カジュアルなワインという触れ込みだからこそ、細かい品種だとかビンテージだとか”専門用語”の記載はありません。

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(1缶250mlなのでグラス2杯分ほど)

実際ブルックリンのワインショップでは訪れた5店舗中2店舗に缶ワインが販売されていましたが、探さないと見つけられない、ひっそりとした場所に置かれており、ニューヨーカーに大人気!!とはまだ呼べなさそうな印象でした。

 今回見つけたNO FINE PRINTやSANS WINE Co.の様に、従来のワイン界に一石を投じるワインベンチャー企業達はとても面白いし、もっと彼らのワインを飲んでみたいと思いますが、1缶$6~$10(約720円~1200円!)って、消費者からすると、かなり高いですよね。ハーフボトルと考えればよいのかもしれないけれど、日本人の私からすると見た目からどうしてもビールやチューハイと比べてしまう。彼らが目指すところの、”カジュアルに楽しみたい缶ワイン” なのに、カジュアルに飲めるのは一部の富裕層、もしくは、カジュアルに飲むのがかっこ良いので高くても買いたいヒップスターたち、が、現実のところじゃないでしょうか。

実際、私も購入したもう1つの缶ワイン($8 約960円)を空けるのを躊躇してしまい、まだ空けることができてません・・・。

現在、アメリカのワイン市場の0.5%程といわれている缶ワイン市場ですが、今後どのように成長していくのか、引き続きリサーチしていきたいと思います。

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