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2023年11月の新譜記録

こんにちは!タイトルの通り、私が11月に聴いて良いなあと思った新譜について、簡単な感想コメントとともにまとめておく記事です。

今月はシューゲイズ系のリリースが熱かったですね。下記でも紹介しますが、年間ベスト級に良いリリースが目白押しでした。折しもこの記事を書く直前にAlvvaysやCoalter Of The Deepers、また10月にはexloversのライブを観てきたため、すっかりシューゲ耳になってしまった1ヶ月でした。

良かった新譜

アルバムタイトルを押すとsongwhipのページに飛べるので、気になった方はそちらからどうぞ!

Cartwheel / Hotline TNT

ニューヨークのシューゲイズバンドの2nd。ギターもベースもドラムもとにかく重たくて嬉しい。それでいて、どの楽曲も爽やかに突き抜けるリフを軸に据えた形で作られていて、シューゲイザーに求める轟音の圧力と、インディーギターに求める爽快感のどちらも堪能できる稀有なバランス感を持った一枚です。

infinity signature / Full Body 2

フィラデルフィアの3人組シューゲイズプロジェクト。AVYSSの記事に書かれている「My Bloody ValentineがBGMのビデオゲーム(PS2)の世界?」という謳い文句がまさにそうで、VaporeaveからHexDに至る過程でスカム的な露悪趣味にも接近した粗いエレクトロサウンドが作る虚無のノスタルジーを、シューゲライクな分厚いノイズが重たく塗り潰す、現行シーンの結節点にして特異点のような一枚。過去のノスタルジーに浸ろうとしてもそこにも暗い時代の虚無があるのみ、かといって現在や未来にも希望はない、そんな時代の「閉塞」そのもののメタファーとしての轟音の役割を考えてしまいます。

stepdream / quannic

近年の大きなトレンドになっているシューゲイザーとエモ、ポスコアとの交錯の流れのど真ん中に位置付けられるであろう一枚。ソロ体制で制作された前作と比べると電子音の要素は薄れ、ParannoulやWeatherday以降の宅録エモ・シューゲのサウンドをよりヘヴィに展開するアレンジが楽しめます。

Hard Light / Drop Nineteens

2023年はBlurやRolling Stones、Slowdive、また国内でもくるりやスピッツ、ミスチルといったベテランたちの意欲作が相次いだ一年でしたが、まさかDrop Nineteensまで帰ってくるとは思いませんでした。こちとらexloversの復活ジャパンツアーだけでお腹いっぱいだというのに。
内容はさすがに期待を裏切らない、上述の3枚とは異なり良い意味でオーセンティックな、良質なインディーバンドサウンドで鳴らすドリームポップです。ギターがノイズの壁を作ったりリバーブで空間を埋め尽くしたりする裏で、ベースにリフを弾かせて楽曲を駆動させる采配が全体的に上手く効いている印象。シューゲイズと低音の組み合わせといえば、折しも1989年作の未発表アルバムをリリースしたThe Veldtが思い浮かびますが、彼らと同様Drop Nineteensもポストパンクやニューウェーブから着想を得ていそうな感じがあります。
ちなみに、この機会にシューゲイズ史の隠れた名盤 "Delaware" も一緒に日本でもサブスク解禁してくれないかなと思っていたんですが、現状出てきてないですね。物理盤は市場にまるで出回っていないので、せめて配信で聴けると嬉しいんですが……

つくる / ひとひら

東京の4人組バンド。全体的にエモやマスロックにドンピシャのギターリフが嬉しい一枚ですが、それだけだと「あーこういう感じねいいね」で終わってしまいそうなところ、そうしたある種のナードっぽさが、意表を突くハイトーンボーカルが醸し出す王道歌モノ邦ロックのキャッチーさと同居しているのが面白く、また聴きやすいアルバムです。

呪詛告白初恋そして世界 / moreru

苦しい現実からの逃避を夢見つつも、そこから逃れられないことを徹底的に直視して刻みつける、そしてその痛みのままに叫び回る、自傷行為のようなアルバム。爆音と絶叫による暴力的なフラストレーションの発露に、やぶれかぶれのオタクユーモアと表裏一体のリアルさ、そしてそうした過剰さの中に確かに存在する歌心もとい「歌によって救われたい」という気持ち、それらをないまぜにしてありとあらゆる感情をカオティックに爆発させた大作です。

Heaven knows / Pinkpantheress

アッパーながらもスタイリッシュなUKガラージのビートに煌めくY2Kのバイブス。MVとかはもう少し時代が下った(2000年代半ば〜10年代初頭)感じで、こういうのはFrutiger Aeroというらしい。溢れるディズニーチャンネル感が最高です。

ただ、本作が単なるY2Kブームに乗っかっただけのものでないと感じる理由は、せわしないビートを乗りこなすリズムの気持ちよさとメロディとしてのキャッチーさを両立した(むしろ前者があるからこその後者か?)ボーカルラインにあるといえるでしょう。M1 "Another life" のハネた歌メロやM5 "Nice to meet you" サビの譜割りの緩急の付け方などが特に好きです。このお洒落にビートの「乗りこなす」感が、巧いダンサーとかBMXとかを見ている時にも通じる感覚をもたらす、ビジュアル的にもスタイリッシュで耳にも気持ちの良いアルバムです。

The Comeback Kid / Marnie Stern

本作で初めて知った方ですが、全編通してやや偏執的とすらいえるギター愛が感じられる作品です。M1 "Plain Speak" のThunderstruckを彷彿とさせる執拗なトレモロが特に象徴的。ずっとギター弾いてたら生まれたんだろうな、みたいなユニークな曲だらけで聴いていて楽しい。

おわりに

11月はこんな感じでした。モタモタしていたら、これを書いているうちに世間は年間ベストの季節になってしまいましたね。自分の音楽体験を整理するのも、いろんな人の記事を読むのも楽しいし、また毎月こういう形で月間ベストみたいなものを書いているのでその総まとめ的な意味もあり、ぜひ今年も祭りの末席に参加できればと思います。年内には公開したいところなので、その際はぜひ読んでいただけると嬉しいです!


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