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2022年ベストアルバム25

  年ベスやります。個人的に、今年はTwitterの音楽アカを作ったりフジロックに行ったりして、音楽digモチベが本格的に再燃した年でもあったので、ちょっと気合を入れて選んでみたつもりです。digの深さでいえばまだまだですが。

 それぞれにちょっとした感想コメントをつけて、また特に好きだった曲もひとつずつピックアップしてみました。各アルバムのタイトルまたはジャケットを押すとsongwhipのリンクに飛べるので、気になったものがあればぜひそちらからチェックしてみてください。

25-10

25. Coverglow pt. 1 / Asian Glow

Release: 10/22
Label: -

ParannoulやWeatherdayと並び、インターネットミュージックのシーンで確かな存在感を持つ韓国のSSW。今年はフルアルバム "Stalled Flutes, means" やWeatherdayとのコラボアルバム "Weatherglow" など精力的なリリースがありましたが、個人的に一番刺さったのはこちらのカバーアルバムでした。The Go! TeamやI Hate Sexなど普段から参照してそうなラインに加えて、スーパーカーやフィッシュマンズのカバーも入っているのが面白い点です。特に、フィッシュマンズの「いかれたbaby」カバーは、爆音+美メロで人は泣くことを思い出させてくれる、本当にヤバいカバーだと思います。

M1, 7, 8はおそらく韓国語によるカバーなのですが、韓国語の語感がうまくハマっているのか、どれも原曲にはなかった不思議な中毒性を孕んでいるように思いました。

▶︎好きな曲 : いかれたBaby (M8)

24. Bewitched! / DJ Sabrina The Teenage DJ

Release: 9/2
Label: Spells On The Telly

The 1975 "Happiness" へのクレジットで知った人。80-90sの幸福感だけをきらびやかにパッケージングしたような、甘ったるくてノスタルジック、最高にドリーミーな麻薬のようなハウスミュージックのアルバムです。Vaporwaveのような皮肉っぽさやジメッとした空気は一切なく、そこにはただただ恍惚とした幸福感だけが存在します。しかし、私たちはそれがもう遠く過ぎ去った輝きの幻影であることを、それこそVaporwaveを通してよく知っているはず。だからこそこのアルバムは麻薬なのであり、DJプレイのように途切れることなく流れるハッピーな13曲には、一度ハマったら逃れられない魔術的魅力(=bewitched)が備わっています。

▶︎好きな曲 : Call You (M10)

23. Return of the Dream Canteen / Red Hot Chili Peppers

Release: 10/14
Label: Warner Records

4月の "Unlimited Love" に続く、まさかの今年2枚目のフルアルバム。本人たち曰く、とにかくクリエイティビティに溢れて曲作りが止まらない期間があったそうで、その結果のフルアルバム2枚、ということらしいです。プロデュースはどちらもおなじみのRick Rubin。

Unlimited Loveがどちらかというとジョンの復帰を祝福した「あの頃のレッチリ」という感じだったのに対し、こちらはジョシュ期のミニマルでソリッドな作風の経験も踏まえた、メンバー同士の個性のぶつかり合いで生まれた感がより強い印象をけました。レッチリの魅力はそうしたキワモノ揃いのメンバーによる愛と個性のぶつかり合いにあると思っているので、その点個人的にはこちらの方が好きでした。

▶︎好きな曲 : Eddie (M4)

22. Tired of Liberty / The Lounge Society

Release: 8/26
Label: Speedy Wunderground

UKポストパンクのニューカマー。プロデュースはBlack midiやFountains D.C.、Squidなどシーンを牽引するバンドを手がけたDan Careyで、デビューアルバムの本作も同氏のレーベルから。性急なビート、焦燥感のままに掻き鳴らされるギター、社会へのやるせない思いを吐き捨てるリリックなど、「ポストパンク」というジャンルの括りでは不十分に思えるほど、ほとばしるパンクスの根源的エネルギーが炸裂した好盤。シーンも飽和しつつある昨今、今後も要チェックのバンドです。

▶︎好きな曲 : Generation Game (M11)

21. Hotel Insomnia / For Tracy Hyde

Release: 12/14
Label: P-VINE

みんな大好きフォトハイの新譜!エンジニアとしてRideからマークガードナーを迎えた本作は、アメリカがテーマだった前作から打って変わって90sUKの香り漂う作品になっています(その意味では「シューゲイザー」の原点回帰とも言えるかも)。ただ、そうしたサウンドが時折ある邦ロックっぽい展開やリズムにもまるで違和感なく寄り添っていて、東京のインディーシーンから世界へ羽ばたきつつある彼らにしかできない音楽がさらに更新されたことを感じました。換骨奪胎ってのはこういうことを言うんでしょうね。

▶︎好きな曲 : Leave The Planet (M13)

20. CHAOS NOW* / Jean Dawson

Release: 10/7
Label: P+

メキシコにルーツを持つアメリカのミュージシャン。「黒人=ヒップホップ」というイメージを打破すべく、ヒップホップ以外の様々な音楽を貪欲に取り込んだスタイルが思う存分発揮された一枚です。90s以降のインディーロック(グランジ〜エモ〜ポップパンク)とヒップホップ的なアプローチをシームレスに行き来し、かつ全体的にhyperな空気感に仕上げた音像が、まさに「ありそうでなかった」最先端のポップミュージックという印象。ある意味で「2022年のポップシーン」を象徴するような、すごく面白いアルバムです。

▶︎好きな曲 : 0-HEROES* (M7)

19. 結束バンド / 結束バンド

Release: 12/25
Label: Aniplex

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場したバンドのアルバム。作品の舞台にもなっている、下北沢の香り漂うギターロックをアニソンとして再構成した音楽性が、自分の中のロキノンキッズに刺さりまくります。楽曲制作陣に谷口鮪や中嶋イッキュウが起用されてるのはさすがに確信犯だと思いますが、これによって00-10年代邦ロックの当事者による総括的な意味合いも生まれてくるところが、本作を単なるアニソンアルバム以上のものにしているポイントです。
あとはもう正直アニメ視聴後のエモーショナル補正が大いに含まれた評価になってしまうのですが、まあそこを外して考えるのもむしろ野暮でしょうね。

また、本作はメインキャラの名前や各話タイトルがアジカンから取られていたことでも話題になりましたが、その上での「転がる岩、君に朝が降る」カバーは本当に感動しました。10年代邦ロックを総括し、その大ボス(と本人が思ってるのかは知らんけど)たるアジカンのカバーで締める采配に涙した同世代は多いんじゃないかな。そういう意味でも、本当に「バンド」のアニメだったと思います。ありがとうありがとう。

▶︎好きな曲 : 転がる岩、君に朝が降る (M14)

18. Skinty Fia / Fountaines D.C.

Release: 4/22
Label: Partisan Records

とにかく暗い。だがそれがいい。これまでShameやIDLESなどとともにUKポストパンクシーンを作ってきた彼らですが、本作でその色はなりを潜め、むしろスミスやキュアーのような、UKロックに根付く陰鬱で耽美主義的な血統を感じるアプローチが採られています。現在はロンドンに拠点を置く彼らが、時に民族的な敵対心を向けられるアイルランダーとしてのアイデンティティに付き纏う自己矛盾と困惑に向き合った、分断の時代に足場を確かめるようなシリアスなアルバム。

▶︎好きな曲 : Jackie Down The Line (M4)

17. seeyalater stratocaster / Ippotsk

Release: 11/6
Label: -

インドネシアの宅録ミュージシャン。小学生だったゼロ年代後半、ちょっと背伸びして見ていたアニメの主題歌たちのような、音楽体験としての記憶から絶妙に抜け落ちている「あの頃」のギターロックを思い出させてくれるアルバム。しかもそれを歌っているのがSynthesizer Vとあれば、もうインターネットミュージックとしては最高のコンセプト!!

▶︎ oyasumination (M6)

16. Eye Escapes / Kraus

Release: 3/10
Label: Mutual Skies

Asian Glowが参照しているということでチェックしていた、一人かつギターレスで轟音シューゲイズを作り上げてしまうアメリカのソロプロジェクト。言ってしまえばずっと爆音ノイズが垂れ流されてるだけのアルバムなんですが、それを浴びまくることでしか得られない悦びがあるんですよね。こういうのでいいんだよ、こういうので……!!

▶︎好きな曲 : Anyone (M3)

15. 卵 / betcover!!

Release: 12/21
Label: -

近年の邦インディーシーンを俄に沸き立たせている、気鋭のミュージシャン・柳瀬二郎によるプロジェクト。これまでの個人的なイメージとしては、フィッシュマンズやゆらゆら帝国を今風に再解釈したサウンド、みたいな理解だったのですが、本作ではポストパンクやフリージャズのヒリついたテンション感を昭和歌謡のダンディズムで包み込んだような、今までに無かった質感のサウンドに衝撃を受けました。あえて例えるとすれば、6th以降のArctic Monkeysのアプローチを日本でやったら……というところでしょうか。これからどうなっていくのかわからない、今最も将来がアツいミュージシャンの1人です。

▶︎好きな曲 : 壁 (M3)

14. BADモード / 宇多田ヒカル

Release: 1/19
Label: Epic

色々なレビューを見過ぎて、何を書いても借りてきた言葉になってしまうこのアルバム。キャッチーなタイトルトラックで完璧な導入を決めてから、『君に夢中』『One Last Kiss』のような泣く子も黙る名曲を経て、ラストのほとんどミニマルテクノな『マルセイユ辺り』にかけてどんどん音楽的に深化する構成には息を呑みました。
部屋着姿で横を子供が走り抜けるジャケットは、この2年の状況を象徴しているようであり、その力の抜けた雰囲気がむしろカリスマティックでもあります。

▶︎好きな曲 : Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー (M10)

13. Versions of Modern Performance / Horsegirl

Release: 6/3
Label: Matador

シカゴのスリーピースバンドによる、待望のファーストアルバム。Sonic Youthのような80-90sオルタナを彷彿とさせる、手作り感満載のグランジサウンドがたまらないアルバムです。しかも、3人はまだ10代で、出会いは地元の青少年芸術プログラムとのこと。地元で出会った物好きのティーンエイジャー同士が、楽器を取り合ってDIYでいい音楽を作っていく、というオルタナロックキッズであれば誰もが夢見るエピソードを地で行くところが最高ですね。

▶︎好きな曲 : Beautiful Song (M2)

12. I Didn't Mean To Haunt You / Quadeca

Release: 11/10
Label: deadAir / AWAL

アメリカのラッパー・Quadecaによるセルフプロデュース作。幾重にも折り重なるトラックや、細かくパンを振り分けて散りばめられたボーカルサンプル、そして亡霊の目線で語られるユニークなリリックとが構成する緻密で壮大な世界観は、QuadecaがDTMでたった1人で組み上げたもの。DTMネイティブ世代のミュージシャンが世に出るようになってきた昨今ですが、誰の制約も受けずに自分自身の世界を作り上げられる、というDTMのインディペンデントな可能性を、ここまでの濃度で追求してみせた作品はまさに金字塔と呼ぶにふさわしいと思います。"Pet Sounds"になぞらえた評価も見ましたが、それも納得。

▶︎好きな曲 : fantasyworld (M9)

11. Ants From Up There / Black Country, New Road

Release: 2/4
Label: Ninja Tune

ポストパンクと言われていた前作に比べるとかなりジャズ色が強まり、また歌を聴かせることを意識した曲作りに変化したように思います。それと並行して、前作では演奏のテクニックやプログレッシブな展開で魅せるスタイルだったのが、本作ではどちらかというと緻密に構築されたアンサンブルの気持ち良さに力点が置かれるようになっていて、音楽として圧倒的に聴きやすくなっている印象を受けました。複雑なピースが心地よく噛み合った、統率の取れたオーケストラのような美しさを持った作品だと思います。これを演奏できたら本当に楽しいと思うし、私はそういう演奏が好きです。

その意味で、サウンドの核を担っていたギターボーカルのアイザックが発売直前にバンドを離脱してしまったのは衝撃的でしたが、残りのメンバーで見事再起を果たし、フジロックでもなんと全曲新曲のライブを披露してくれました。UKポストパンクシーンも飽和しつつある中、そこからの脱皮を最もうまくやりつつあるバンドだと思うので、今後の活躍にも期待したいところです、

▶︎好きな曲 : Concorde (M3)

10-1

10. kimi wo omotte iru / kurayamisaka

Release: 11/2
Label: -

邦インディ、シューゲのいい部分だけを集めたようなマジで最高のEP。突き刺すような轟音ギターにこの上ない美メロ、そしてそこに乗せた切ない歌詞を力強くもどこかやるせなく歌い上げるボーカルとが合わさり、日本のインディーバンドにしか扱えないであろう感傷が雪崩のように押し寄せる作品になっています。ジャケットの質感も素晴らしい。

青春の感傷、みたいな似たようなコンセプトで曲を作ってるバンドは下北のライブハウスなんかを覗けばたくさんいますが、kurayamisakaは曲・詞・技術どれを取っても頭ひとつふたつ抜けてると思います(これで結成一年なのがつくづく末恐ろしい)。今後、このEPがひとつの基準となってもおかしくないというか、自分はそういう見方になってしまうと思う。そのぐらい、ある種の到達点と言える作品だと思います。

▶︎好きな曲 : farewell (M5)

9. rebound / くだらない1日

Release: 4/29
Label: ungulates

ライブハウスシーンでじわじわと存在感を高めている、気鋭のエモバンド。所属レーベルのungulatesは、ANORAK!やdowntなど同じくシーンを盛り上げるバンドを擁する注目のレーベルです。
世界や人生に対するどうにもならない気持ちをぶちまけるような、衝動的なエネルギーに満ち溢れた傑作。どうにもならないから叫ぶしかない、デカい音を叩きつけるしかない、という切実さがどこまでも正直に表現されていて、こちらまでウワ〜〜!!!となってしまう類の名盤。単純に、エモい(原義)ギターリフが泣けるっていうのもある。

私は「チョモランマ・トマト」というフラストレーションと破壊衝動に突き動かされたオルタナパンクバンドが大好きなのですが、本作からはチョモランマトマトを初めて聴いた時と同じぐらいの衝撃を受けました。今一番ライブを見に行ってみたいバンドです。

▶︎好きな曲 : 激情部 (M9)

8. The Car / Arctic Monkeys

Release: 10/21
Label: Domino

彼らはどこへ向かおうとしているのか?これは到達点なのか通過点なのか?それは私には窺い知れませんが、個人的な好みでいえば、彼らのディスコグラフィーの中ではかなり上位に入るアルバムかなと思います。メロウなアートポップへ急転換した前作を経てやりたいことも明確になってきたし、なんというかこの流行やパブリックイメージに対して超然とした感じ……ギターロックであろうとなかろうとアクモンにはそれを見せてほしいのですが、それが過去最も極まった作品ではないでしょうか。この路線でうまく時代感覚も捉えることができれば、サイケ路線をポップネスに結実させた "AM" のような大爆発が再び起こるかもしれません。

3月の来日公演に行けることになったので(やったね)、それまでさらに聴き込みたいと思います。

▶︎好きな曲 : There'd Better Be A Mirrorball (M1)

7. PAINLESS / Nilüfer Yanya

Release: 3/4
Label: ATO Records

ロンドンのSSW。性急なブレイクビーツとオルタナギターリフで特徴づけられる所在なさげなトラックと、低く淡々と人間の感情や孤独を歌うボーカルは何かをじっと睨みつけるようであり、空虚な都市生活にありながらそのままのメランコリーに浸ることを許さない。こういうめちゃくちゃにシリアスで、だからこそ変な力が抜けきっているような人を私は一番怖いと思うし、それゆえの独特の気迫を感じる一枚だと思います。

▶︎好きな曲 : stabilise (M4)

6. Blue Rev / Alvvays

Release: 10/7
Label: Polyvinyl

もう全人類好きでしょこんなの。1曲目 "Pharmacist" ひとつとっても、アーミングでうねるノイジーなギターとともにバンドインするエクスタシー、キャッチーな歌メロ、ハッとさせられるBメロ、そしてラストの勢いに任せたギターソロ……と、ギターポップの気持ち良い部分をたった2分に全部乗せしたみたいな信じられない楽曲で、好きにならないわけがない。そこから最後まで、豪快なシューゲイズチューンや、ノスタルジックなシンセポップで爽やかに駆け抜ける一枚です。好きにならないわけがないんですよ(2度目)

1st, 2ndも聴いてはいたんですが、どちらかというと穏やかなインディーポップ寄りというか、こんなに爆発力のある印象はなかったので、かなり驚きました。ぜひライブで聴きたいので早く来日してほしい。

▶︎好きな曲 : Pharmacist (M1)

5. Dragon New Warm Mountain I Believe in You / Big Thief

Release: 2/11
Label: 4AD

11月の来日公演も凄まじかった、「USインディの至宝」ことBig Thief。大名曲 "Simulation Swarm" をはじめ、穏やかなフォーク〜カントリーをベースに時折オルタナロックの実験的な表情も見せる、繊細なバランスの上に成り立つ世界観が唯一無二の魅力を持ったアルバムですが、私は何よりもそれが4人組のバンドから生まれていることに変え難い魅力を感じます。上で挙げたQuadecaのように、1人の人間の脳内で渦巻く世界を濃密に練り上げたような作品も大好きですが、バンドメンバーのクリエイティビティとポテンシャルが混ざり合うことで初めて成り立つ音楽には、やはりそれにしかないロマンがある。本作を聴いて、そして11月のライブを見て、そう確信しました。4人の間に流れる、音楽の楽しさに満ちたしたり気な空気が感じられる一枚です。

▶︎好きな曲 : Simulation Swarm (M17)

4. Being Funny In A Foreign Language / The 1975

Release: 10/14
Label: Dirty Hit

2022年最強のポップアルバム!!3rdや4thでの音楽的挑戦と、1stから続くポップネスと、そしてなによりも生のバンドサウンドを鳴らして踊るフィジカルな喜びとが結びついた超強力なポップアンセム揃い。個人的にも3rdと並ぶぐらい好きなアルバムです。
アルバムの構成としても、序盤でかっ飛ばしたあと、"I'm In Love With You"で一つのクライマックスを迎え、"Human Too" のようなコンセプチュアルな楽曲を経てラストのメロウな "When We Are Together" に着地する、ポップネスとある種の作家性をスムーズかつ高いレベルで両立した流れになっていて、聴いていて飽きがこない。むしろ、この作家性こそが1975を単なるポップアクトではなく「ロックスター」たらしめているのだということが明確化されたアルバムになったと思います。ロックスター不在とも言われた10年代を乗り越えて、ついに新たな理想像が完成した……と言っては大袈裟でしょうか。

▶︎好きな曲 : I'm In Love With You (M6)

3. Household Name / Momma

Release: 7/1
Label: Tugboat Records

ロサンゼルスのデュオ。ファズギターのヘヴィなリフを主体としたスタイルが90年代のSmashing Pumpkinsを彷彿とさせる、純度100%のUSオルタナです。リフのセンスが完全に90sのあの鬱屈として不安定な空気感というか、もう理屈抜きに「ア〜〜〜」って叫びたくなってしまう絶妙な響きを突いてくるんですよね(いつか理論的にも考察したい)。ほんとに捨て曲がない。
音響的には往時のスマパンよりすっきりしていますが、それが逆に物悲しさを強めている気もして、擦り切れるほど聴いたあのアルバムと同じInfinite Sadnessをここにも感じました。万人に刺さるサウンドではないかもしれないけれど、スマパンに取り憑かれている私のような人間にとっては最高のオルタナアルバムでした。

▶︎好きな曲 : Medicine (M3)

2. WHILE OF UNSOUND MIND / Nouns

Release: 8/19
Label: -

いわゆる5th wave emoとハードコアの中間に位置づけられるであろう作品。喜怒哀楽全ての感情を爆発させたら完全なる「暴力」になった、とでも形容できるようなサウンドは、感情(=エモ)がSNSでナラティブ化・数値化され曖昧なまま存在することを許されなくなった世界で、特定の感情やストーリーに寄り添うことを拒否するように聴こえます。束の間の調和と混沌とを行き来する息つく間もない展開や、それを寸断するように挿入されるサンプリング(これは5th wave emoの様式美なのかもしれませんが)といったものすべてが、単純な理解を拒絶する暴力的な衝動に満ちていて、なにがなんだかわからない。わからないが、そのあまりにも暴力的な拒絶にこそ惹きつけられる自分もいて、気づいたらスマホの音量がマックスになっている……そんなアルバムです。

▶︎好きな曲 : GRIMMER HEAT HAZE 〜 MAROMI (M7-8)

1. our hope / 羊文学

Release: 4/20
Label: F.C.L.S.

2022年、個人的に一番好きだったのはこれでした。羊文学の3rd。今年の、というか、もはや邦ロック史にさえ燦然と輝く大名盤だと思います。サウンド面の好みもありますが、歌詞に救われた部分が大きい。

ロックが社会と戦わなくなった、とはいつの世でも言ったものですが、特に昨今ではその役割が明確にヒップホップに移り変わっているような印象を受けます。邦ロック界隈も例に漏れず、少なくともそのメインストリームでは、過去20年を通して「君と僕」の世界観を超えるようなものはほとんど現れなかったように思います(例外が『マジックディスク』以降のアジカンでしょうか)。

しかしここにきて、シーンの先端を行く羊文学が「『世界』の中で生きる『君と僕』」とでも呼べるような世界観を打ち出してくれたことはひとつの希望です。『くだらない』や『OOPARTS』で世界の虚しさを歌いながらも、二曲目の『光るとき』では、「何回だって言うよ、世界は美しいよ/君がそれを諦めないからだよ」と、それでもなお希望を持って生きていくことをはっきりと、まさに「君と僕」の距離感で、力強く後押ししてくれる。このことによって救われる何かは確実にあると思います。というか私は救われました。

社会がどんどんダメになっていくように思えても、「この最悪な時代」と立ち向かう力がロックには、ひいては「僕」たちにはまだある、ということを再認識させてくれるアルバムだと思います。

▶︎好きな曲 : 光るとき (M2)

次点25枚

  • Dawn Of The Freak / The Haunted Youth

  • Stumpwork / Dry Cleaning

  • Air Guitar / Sobs

  • town without sky / Telematic Visions

  • Quiet the Room / Skullcrusher

  • Animal Drowning / Knifeplay

  • A Light For Attracting Attention / The Smile

  • Guitar Music / Courting

  • Endure / Special Interest

  • C'MON YOU KNOW / Liam Gallagher

  • MY REVOLUTION / ゆうらん船

  • Darklife / death’s dynamic shroud

  • Super Champon / おとぼけビ〜バ〜

  • Heartmind / Cass McCombs

  • NO THANK YOU / Little Simz

  • SOS / SZA

  • Hellfire / Black midi

  • Lucifer On The Sofa / Spoon

  • DOKI DOKI / サニーデイ・サービス

  • MAYBE IN ANOTHER LIFE / easy life

  • Tide Pool / Bialystocks

  • Whatever the Weather / Whatever the Weather

  • Search + Destroy / Luby Sparks

  • Cub / Wunderhorse

  • Banshee / NewDad

おわりに

  以上です。冒頭述べた通り、今年はTwitterの音楽アカを(note仲間に言われて渋々)作ったりしてみたんですが、個人的にはたぶんそれが大きくて、音楽(もとい広義のポップカルチャー全般)は知れば知るだけ楽しくなるんだなあ、ということを音楽クラスタの皆さまから改めて学んだ一年になりました。折りしも大豊作の一年となったので、モチベが再燃するタイミングとしては幸運だったと思います。

  来年の目標は、新譜を追いつつ聴いてなかった旧譜もちゃんと聴き、あと詳しく知らないジャンルをいくつか開拓することです。4月からは社会人になり、きっと金銭的余裕もできる(はず……)でしょうから、ライブとかにもちゃんと行くようにしたいですね。

  最後になりましたが、noteを読んでくれた皆さん、Twitterで繋がってくれた皆さん、今年も一年ありがとうございました!


仲間内でやってるマガジン。こちらもよければ。

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