スーパーの小さな物語り
朝8時
バタバタと子ども達が、
学校へと飛び出してゆく。
「お母さんー、靴下は?!」
「お母さんー、次の日曜日参観日だからねっ」
ドタドタと家を駆け回る子どもたちに
「分かったわかった!靴下はソファーのとこ!2人とも忘れ物はない?ちゃんと持った?!」
いつも忘れがちな長男には特に声かけが必要だ。
8時を回り慌ただしかった我が家もようやく落ち着いた。
そういえば、まだご飯食べてなかった…
子どもたちのお弁当に作ったおにぎりの余りを口に放り込み、
とりあえず回していた洗濯を干し掃除機をかける。
家の家具を横に避けながら、
ひととおり掃除機をかけ終わると、
もうすぐ9時になろうとするところだった。
9時半からは仕事だ、
慌てて服を着替えて 、外へ飛び出した。
髪の毛を結び直す暇もなく、軽く白粉をして
バタバタと出かけて近くのスーパーへと
飛び込んだ。
朝の9時半から子どもが帰ってくる前の15時半まで私はスーパーで働くことにした。
ずっと髪を引っ詰めて、
ずっと家のことをして
大きな声で怒鳴って、
そのルーティンから抜け出して
社会とつながりを持ちたいと思った。
レジを打っているといろんな人がやってくる。
時計を見上げると10時半
そうだあれから3日目
そろそろ、この時間になると…
そう思っていると、
1人の可愛らしいおばあちゃんが
お店の中へと入ってきた。
いつも決まってこの時間になると、
おばあちゃんがやってくる。
少し背の丸まった白髪の
小さな背丈のおばあちゃん。
短く切った髪に緩めのパーマをかけて
とても可愛らしい雰囲気だった。
おばあちゃんは片方で杖をつきながら、
小さくなった背中を更に丸めて一所懸命、
花コーナーの花を吟味している。
暫くじぃっと眺めていたけれど、ふいに
「うん、今日はこれにしよう」
と笑顔になった。
この言葉が合図で、私はレジが空いてることを確認した後、おばあちゃんの傍へと駆け寄る。
いつもお花を買っていくおばあちゃんに
「いつもありがとうございます」
そう言って花を取りながら、
レジへ向かうとニコニコ笑うその人は
「今日は暖かくなったねぇ。
こんなお天気だと、どこへでも行けちゃう気がするわ」
と言ってがま口の小銭入れから、
また一所懸命小銭を取り出すと、お会計をすまし花を手にお店を後にした。
私はその後ろ姿を見ながら、
いつものようにお父さんのところへ花を持って行くのだと思った。
あれはちょうど1ヶ月前
パートが終わり、
自転車で急いで帰っていたときのこと
いつものおばあちゃんが近くにある墓地に
そっと入って行くのが見えた。
たまたま、通りがかっただけだったけれど
「お父さん、今日はいい天気ですねぇ。
暖かくて気持ちいいですねぇ」と
語りかけているのが聞こえた。
きっと、こうやって時折墓地にきては
話しかけているのだろうと思った。
その丸い背中をみて、
私は2人の絆をどこかで感じていた。
その背中を横目に
今日もきっとスーパーには
沢山の人たちが色々な思いで来てるのだと思った。
我が家の怪獣たちがそろそろ帰ってくる頃だ。
「さぁて、私もやるかぁ!」と
自転車のペダルを漕ぎ、自転車を漕ぎだした。
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