実はウチの犬、ちょっとだけ話す。　第八話「徳島のゆるキャラ」

　徳島県の公式マスコットキャラクターの「すだちくん」を知っている？特産品の「すだち」をモチーフにしたキャラクターで、緑の顔に弾けるような笑顔を浮かべ、イニシャルＳの書かれた服を着てスーパーマンのような真っ赤なマントをはためかせている。平成五年に開催された東四国国体で誕生したキャラクターだから、俺より十歳も年上だ。ちなみに性別は男でも女でもない、中性。

「またうんこマンのグッズを買ったな、タケル」
「うん。駅ビルの雑貨屋さんに入荷していたから」
　県の中心駅である徳島駅は複合ビルになっていて、西側にはＪＲのホテルが、東側には商業施設が入居している。うんこマークがたくさんプリントされたミニトートバッグを持っている俺を見たタマが、不思議そうに言った。
「うんこが好きなのは分かるぜ。でも、朝晩俺の出した本物を拾っているくせに、なんでグッズなんか欲しいんだ」
「違うよ、タマ。これはただのうんこの絵じゃない。『うんこ』という万国共通のシンボルなんだ。うんこネタなら、たとえ言葉が通じなくたって笑い合うことができる」
「つまり共通言語というわけだな」
「その通り」
　力説するとタマはすぐに納得した。犬なんて臭いものや汚いものが大好きだから、脱ぎたての服が山盛りの洗濯かごに潜り込んでいるのをよく発見する。シャンプーをした後なんか絶対にやめてほしいんだけど、と母さんに愚痴ったら「すぐに洗濯しないのが悪いんでしょ」とかえって注意されたことがある。
「俺はうんこマンよりも、すだちくんの方が好きだな。ペット用グッズはないのか」
「……ざっと見た限りではないみたいだけど、小型犬用の首輪とかあったら嬉しいよね」
「確か『ししゃもねこ』の猫用首輪はあるって言ってたな」
　スマートフォンで検索してみたら、多種多様なすだちくんグッズが見つかった。最近では「ししゃもねこ」という顔が猫、体がししゃものキャラクター（徳島県板野郡北島町出身）のグッズも大人気だし、徳島発のゆるキャラはなかなか実力がある。さらなる活躍に期待だ！