見出し画像

ボタンを掛けていくように


「誰かに優しくする」ということは当たり前のことようで、結構難しい。
「違いを受け入れる」ということもまた然り。

---

現在、いくつかの場所で子どもたちと触れ合う機会を頂いている中で、週1回・2時間ほど、子どもたちが出入り自由で遊べる場所の運営に携わらせてもらっている。
とはいえ、学生スタッフがわたしだけということもあり、専ら遊び担当。有り難いことにいつも引っ張りだこだ。毎度「過去一モテてる」と思わせてくれるほど。
来ているのは99%小学生で、オープンしてから1年半以上経ったいま来ているのはよく見る顔ぶれだ。
その場には小学1年生〜6年生まで様々な学年の子が来るが、みんな学年も気にせず声を掛け合い、一緒に遊んでいる様子がよく見受けられる。

そんな中、この間は初めて遊びに来た小学校中学年の女の子2人(Aちゃん、Bちゃん)がいた。
一緒に遊ぼうと誘われたところにちょうど常連の小学1年生の女の子(Cちゃん)が来たので、4人でカードゲームをすることにした。
Cちゃんはそのカードゲームをしたことがなく、しかもちょっと頭脳を使わなきゃいけないゲーム。一旦やってみることにしたが、上手くついていけずあっという間にゲームは終わってしまった。

そこでAちゃん、Bちゃんが顔をしかめて言った。
「この子ルールわかってないじゃん。つまんない。」

この場に関わり始めてもうすぐ1年。似たような状況になったことはあってもこういうことを言う子は今までいなかったので、内心驚きつつ、(そうか、思春期は普通こういうものだよなあ)と自分の過去を振り返りながら言葉を返した。

わたし「じゃあ2人がルール教えてあげてよ〜」
Aちゃん「えー無理。日本語通じないし。」
わたし「んー、話は通じるよ。やってみないとわかんないよ」
Bちゃん「無理無理〜絶対できない〜」

(自分もこういうこと言ってたやん)と思いつつも、わたしの口から出てきたのはこんな言葉だった。

「そんなこと言う子とは一緒に遊びたくないな〜」

ああ、間違えた。口から出た言葉に驚くと共に、2人に悪いことをしてしまったと思った。
Aちゃん、Bちゃんは一瞬気まずそうな顔を見せたが、その後は何もなかったかのように、時間いっぱい遊んで帰っていた。結局、ルール説明はわたしがした。

そんなやりとりがありつつも、状況が掴めていないCちゃんはいつも通りマイペース。ゲームの途中に何かを取りに行って2人を待たせるようなこともあった。
でもね。その時、Aちゃん、Bちゃんの2人がちょっと嫌そうな顔をしながらも、何を言わずじっと待っていてくれたことをわたしは知っているよ。

---

私は、子どもたちの成長の一瞬にしか立ち会えない。
学校や家での様子を知ることはできない。週1回・2時間のあの場所で起きたことしか知る由はない。
それでも、回数を重ねる度に子どもたちの成長を実感する。
たった2時間といえど侮れないもので、その空間の中でさえ様々なやりとりが起きる。楽しくゲームをする日もあれば、今回のようにちょっとぶつかってしまう日だってある。

でも。今回AちゃんとBちゃんが感じたであろう「もやもやした」気持ちがあなたたちを成長させてくれると、私は信じているよ。
気が向いたらまた遊びにおいでね。

---

わたしはわたしでどう声掛けすればよかったか考え直さなきゃなあ。反省です。
大人が全てやってしまうのではなく、なるべく子どもたち同士で解決できるような声掛けを、と心がけているけれど、なかなか難しい。
正解はないしね。むしろあってたまるものか。

今回、何より感じたのは、いつも来ている子どもたちの心優しさだった。
あの空間では当たり前すぎて気付きもしなかったけど、子どもたちは”学年”という違いを軽々超え、ルールを教え合ったり物を譲り合ったりという優しさを、さも普通のことかのように行っていたのだ。
実はそれって、簡単なことじゃないんだよね。子どもたちに気付かされて、ちょっと泣きそうになってしまった。

彼らの人生の中で私と触れ合う期間は本当に一瞬で、いつか忘れていく存在だけれども、「あの時行ってたあの場所、よくわかんないけどなんか楽しかったな」「そういえばあんな人いたっけ」程度に覚えていてもらえたら嬉しいな。
そんなこと思うのも欲張りかな。

また来週、子どもたちに遊んでもらえるのが楽しみ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?