正しい精子の選び方
アラフォーシングルの友人の最近の関心ごとは、もっぱら、代理母に産んでもらう予定の、まだ見ぬ我が子の精子の提供者選びだ。
数ヶ月前までは、精子バンクを使う、という方向で気持ちが固まっていたのだけど、その決意が揺らぎ始めたらしい。
「友達が、精子バンク使って男の子産んだんだけどね、その子供、なんか覇気がないのよ」
と彼女は言う。
「周りがどれだけワザワザしてても、おとなしく座ってるの。エレナ(我が娘)なんて全然じっとしてないじゃない?子供ってそれが普通よね?」
「そうとも限らないんじゃない。色々な子がいるし。落ち着いててメローな子もわりと多いと思うけど。」
「なんか全然子供らしくないのよ。きっとね、精子の提供者がすごいオタクだったんじゃないかと思うのよ!」
「えー、そんなに大したことじゃないと思うけどお....」
心の声:この調子じゃエレナのことも、母親に似て短気とか、父親に似て頭が大きいとか、絶対外で言ってるよ、この人は....
「Geek(オタク)とlazy(怠け者)なのは絶対嫌なのよ!」
「精子バンクでプロフィールとか見られるんでしょ?そこに『スタンフォード卒・マラソン4回完走』とでも書いてあれば、運動好きな働き者って想像つくじゃない」
「でも隠れたおかしな性癖とかあるかもしれないじゃない!」
「そりゃあ、誰でもそんな可能性はあるでしょ。もちろん、信頼できる知人とかいたらそれがベストかもしれないけど」
「そうでしょ」
「誰かいるの?」
「うちの隣にね、すっごいキュートな男の子が住んでるのよ。なんと、彼のお兄ちゃんも超グッドルッキングなの!」
「いくつくらい?」
「20代後半?」
「何してるの?」
「分からないんだけど、予想では音楽関係?」
「彼女いるの?」
「いつも女の子連れ込んでるけど、絶対泊まらせないみたい」
「へえ。で?」
「精子もらえないかな?」
「精子バンクのスタンフォードより、隣の何してるか分からない子の方が安心なの?」
「すごいグッドルッキングなのよ」
「でも違う女の子連れ込んで、夜中に追い出してるのよね?」
「なんとか兄弟のどっちかと結婚する方法ないからしら....」
「・・・・・・・」
正しい精子の選び方
それは簡単に結論がでない難問なのであった。
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