瞬間小説

瞬間小説​『宵の惑星』

昔、初めて宇宙に出た人類が見た、我々の母なる惑星は、青かったらしい。

しかし今、最後の人類である「私」が見ているその星は、赤く乾いていた。

環境の悪化によって滅亡する事が確定した時、全世界はあわてて団結した。

巨大宇宙移民船を何隻も製造したが、代償に世界の環境はさらに悪化した。

結果的に余命を縮めた人類は、移民船を巡って世界規模の戦争に突入した。

戦争が終わり移民船は何隻か残ったが、皮肉にも人類は絶滅してしまった。

ただ一人生き残った私は、戦闘用ロボットを使って世界中の死体を集めた。

だから、この唯一の宇宙船団には、私と数十億体の死体だけが乗っている。

私は船団を、我々の惑星の1つ外側を回る惑星に落として果てるつもりだ。

まだ生命の存在しない隣の惑星に、生命の源となりえる成分を加えるのだ。

奇跡的な確率だが、数千年後か数億年後には生命が生まれるかもしれない。

もし、この第3惑星に命が生まれたら、我々と違う道に進む事を切に願う。





<完>

Photo licensed by Enasteron

☆表紙絵 by さとねこと さん → https://note.mu/satonekoto

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