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違う世界でやっていきましょう

これは昨年初秋から下書きに入っていた文章です。
8割書いてあったものの、途中から「だから何だ?」と思ってしまい、
当時は公開には至りませんでした。
(最後のあたりとかちょっと悪口だし。よほどイラッとしてたんでしょう。)

ただ先日、 #真夜中のnote現象提案し、
にもかかわらず「自分が使っていないのはどうなんだ」とも思い、
ちょっとだけ手直しして上げてみます。


#脳内会議

安かったから勢いでノープラン購入したものの、
ゆえに冷蔵庫内で賞味期限切れが迫る真鯛の切り身を前に。

・・・・・

真鯛か…。

「真鯛真鯛…真鯛をソテー」

うん、いいね、おしゃれな響きだ、焼くか。

味はなんだろ、バター?...いや塩か。
バターソテーみたいのよりは、少し和を感じたいよな、塩だな。

「和を感じる」

へへ、なんかいい感じだな。

少し旨味ほしいな。
昆布と日本酒で締めるの見たな、あれやってみたいなぁ…
(ガサゴソ)
ダメだ、小さい根昆布しかないわ、うまく挟めん。

買ってくるか…いやでも良い昆布とかって高いんだよな。
だし、ちょっと面倒だわ。
(ガサゴソ)
あ!部長…これいいんじゃない?
…うん、塩昆布使えそう。

スナップエンドウみたいの添えたいな、白に緑で合いそうだし。
真鯛だけの皿って、ね。
でもないしな…。

あああ!
わかった、降臨だ、降臨。
どうしよ、新境地だ。覚醒だ。
三つ目が開いたわ。

マスカットだ!

シャインマスカット様、残ってるじゃん。
マスカット半分に切って乗せよう!
3, 4個ポッポッポッって一例に置いてさ、きれいじゃん!

皮目に塩して香ばしく焼いて、塩昆布の旨味もあって、
そこにマスカットの爽やかさと甘味だ!

“しょっぱあまい” の極みのやつ。

皮、ちょっとバーナーであぶるか。

うわー絶対うまいっしょ。

天っっっ才だわ。


#現実

と、こうしてノリノリで調理に入ったわけだが、
しょっぱあまいは比較的想定通りの塩梅で足し算されたものの、
仕上がりの見た目と、口に入れた時の食感がイメージと違う…。

うん、結構違う。

頭の中の完成予定図は、
大きめの丸皿の中央に真鯛の切り身があって、
その表面には多過ぎない塩昆布の直線が添うように貼り付いていて、
皮目は所々爆ぜながらしっかりと香ばしさをまとい、
その上にツヤっとしたマスカットの半身が整然と一列に数個並んでいる。

でもできあがったのは、
縮れた塩昆布が真鯛からアホ毛のようにヒョロヒョロと立ち、
マスカットはツヤっと並んでいるけど真鯛とのサイズ比がアンバランス。

何より気になるのは舌触りと温度のミスマッチ。

生焼けを恐れて焼いたがゆえに想定よりもボソッとしている身、
一切火を入れていないために冷たさが残るマスカットと意外と多い果汁、
味は悪くないけど三位一体には程遠い皮の存在。

それぞれの違いが上手く融合すると思ったら、
全員が背を向けて散り散りに走り去っていったような食感。

全くもって知識と技術が足りないことを思い知ったのだった。


#違う世界で

まず真鯛と塩昆布とマスカットを抜群のバランスでまとめあげるのは、
今の僕の統率力では無理だったので、それぞれ違う世界で楽しみましょう。
どうしてもやりたいのなら、真鯛に塩して普通に焼いて、
“味変”的に、マスカットや塩昆布なんかを時々口に放り込みましょう。

それから、このエピソードをあるイタリアンシェフに話したら、
「まず火の入っていないものが加わった時点でそれはサラダだ」
「魚のソテーをふっくら仕上げるには温度がナンチャラカンチャラ」

だから知識と技術が足りなかったって認めてるじゃん。
プロなら笑いながら“家庭料理人”の健闘を讃えるくらいの余裕は示せないものか。

違う世界でやっていきましょう。

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