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ショッピングモールのテナントとデベロッパーの関係

ショッピングモールに出店しているテナントとデベロッパーとは、どのような関係でつながっているかを整理しておきたいと思います。
賃料については前の記事で記載しましたが、そもそものつながりがどういった内容になっているのかが述べられていませんでしたので。

1.テナントとデベロッパーはあくまで別個独立

ショッピングモールのそれぞれの売場は、独立した事業者(テナント)が、独自に運営しています。内装を作り上げ、商品を仕入れ、スタッフを雇用し、許認可を取って、…などなど、「店」として成立させることはほぼ全てテナント自らが行います。日々の運営についてもそうです。顧客が店頭で商品を買うときも、その売買はあくまでテナントと顧客で行われ、デベロッパーは関与していません。(※1)

百貨店やスーパーの売場だと、基本的にはその百貨店、スーパー自体が売場全体を運営しています。売場が分かれているような作りになっていても、顧客に対し商品を販売するのはその百貨店やスーパー自らが行います。なので、百貨店やスーパーの売場は、ブランドや商品、売場が別々であっても、基本的には1つの店です。(これはかなり大胆な言い方ですので、気になった方は末尾へ→※2)

2.テナントとデベロッパーをつなぐ契約の形と利害関係

では、テナントとデベロッパーはどういった関係でつながっているのかというと、建物賃貸借の借主、貸主という関係です。
賃料の記事でも同じ喩えをしていますが、マンションやアパートなどの借家と本質的には同じです。ですから、デベロッパー(大家さん)とテナント(住民)は生計が独立している、というふうに考えるとわかりやすいかもしれません。普通、大家さんが住民の稼ぎとかまでは面倒をみませんよね。

ただ、建物賃貸借契約だからといって、借主と貸主とが完全に利害をともにしない、ということはありません。
住宅の賃貸借で例を挙げると、共用廊下をきれいに保つというのは、大家にとっては所有物件の価値(空室が早くうまる、設備が毀損しない)向上というメリットが有り、住民にとっては住環境が良いというメリットがあると考えられます。
共用廊下をきれいに保つためには大家だけが頑張ってもだめで、住民も荷物を放置しないとかゴミをポイ捨てしないとかの最低限のルールを守って初めて実現します。
これは利害が一致することにより実現することであるので、住宅の建物賃貸借契約でも、借主と貸主は利害が一致しえます。

ただ、それ以上に、ショッピングモールにおける建物賃貸借契約においては、借主(テナント)と貸主(デベロッパー)に共通する利害が多くあります
例えばテナントの売上向上というのは、デベロッパーにとっても利益を産むものです。前の記事で記載した歩合賃料だけでなく、売れているテナントが入っているショッピングモールは、空きテナントも早く埋まり、その分賃料収入を多く得ることができます。
また、建物管理の中で廃棄物処理も好例といえます。事業者の排出するゴミは、業者に収集を依頼しなければいけません。(住宅のように、ゴミ置き場においておいたら持っていってくれる、ということはありません。)
各テナントごとに収集業者と契約してもよいのですが、デベロッパーの視点からすると、大量の収集業者がそれぞれの事情でゴミを取りに来たら出入り管理が大変です。これをデベロッパーがまとめてゴミ管理を行うことで、テナントは処理費用を低減したり収集業者を探す手間が省け、またデベロッパーは管理を容易にし、また分別の徹底などで施設周辺の環境へ配慮することもできるようになります。

こういった利害関係の共有は、他にも挙げるときりがないほどたくさんあります。テナントは、ただショッピングモールの建物に入居する、というだけではなく、ショッピングモールという事業に参加する、といったほうがより適切なのかもしれません。

3.まとめ

テナントとデベロッパーは建物賃貸借契約でつながっており別個独立した事業体ではあるものの、ただの建物賃貸借契約だけでなく、テナントはデベロッパーと利害を共有し、ショッピングモールの運営に参加するといった性格が強いのが、ショッピングモールにおける建物賃貸借契約の特徴と言えます。

4.注釈

(※1)デベロッパーが用意するクレジットカードや電子マネー、QRコード決済などをテナントに使わせている場合もありますが、それらはあくまで手段を提供しているだけで、顧客とテナントとの売買契約そのものにデベロッパーが参加することは通常ありません。

(※2)最近はテナントを導入している百貨店やスーパーが多いですし、百貨店は消化仕入れやメーカーから販売員の派遣が行われている等、色々な手法・事情がありますから、知っている人からするとこう言い切ってしまうのはかなり大胆だと思いますが…比較のためとご了承ください。


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