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ショッピングモールの業態いろいろ【1.郊外編①大型ショッピングモール】

(本論は無料です!末尾資料だけ有料です。)
前回の記事【分類編】で、ショッピングモールを立地ごとの業態で分類してみました。→分類編はこちら

今回はその分類の中で郊外に立地する、大型ショッピングモールについて分析してみます。

1.大型ショッピングモール(リージョナル型)の類型

規模:建物面積(店舗面積)2万㎡~16万㎡
テナント数:120~700
核店舗:食品スーパーもしくは総合スーパー
商圏:自動車30分圏内
ターゲット:30-40代の家族連れを中心に全世代
代表例:ららぽーと(三井不動産)、イオンモール(イオンモール)、イオンタウン(イオンタウン)、ゆめタウン(イズミ)

ショッピングモールと言われたときに一番典型的な形が、この大型ショッピングモールです。(だと思っています!)

規模は地域の商圏人口により様々ですが、概して地域最大規模のショッピングモールはこの分類に含まれると考えて間違いないと思います。(リージョナル…すなわち地域全体を商圏としている施設)
日本ショッピングセンター協会が公開しているショッピングセンター一覧によれば、郊外型の大型ショッピングモールは47都道府県中38府県でその府県のショッピングセンター面積トップを取っています。(どの施設がトップなのかを集計した一覧を末尾に記載します。疲れたので僅かな額ですが有料にさせてください…)

ターゲットは大抵が家族(30~40代の両親に小中学生ぐらいの子供連れ)を中心に据え、全年代に対応できるように設定しています。
最近は仏壇屋がテナントとして入るショッピングモールも見かけるようになるなど、シニア対応も強化されていますね。ただ、あくまでも中心は上記のとおりです。

テナント構成はそのターゲットに合わせてアパレル・雑貨から飲食店まで幅広く、かつ無難なテナントが多く入っています。地域ごとに見ると特色(地元ブランドであったり)はあるものの、全体を見ると似たような商品になってしまうことは否めなく、そういった意味でショッピングモールは「金太郎飴」型である、と評されることはある意味致し方無い面もあると考えます。

2.なぜ大型ショッピングモールの殆どは郊外にあるのか

現に郊外にあるのでなかなか考えないですが、大型ショッピングモールが郊外に多い理由を改めて整理します。

(1)商圏を広く取れるようにするため、ターゲットが車で来館することを前提にしており、顧客が来やすくするためには高速道路のインターチェンジや国道などの車交通の利便性が高い立地に建てようとする…と、郊外に立地することになります。

(2)そもそも規模の大きいショッピングモールを建てようとすると、まとまった土地の面積が必要になることも原因でしょう。
しかし、ただ規模を大きくするだけなら縦方向に階層を積む(高層化する)ことでも実現できそうです。なぜ大型ショッピングモールの多くは横方向に大きいのかという理由を考えます。
これは、顧客に複数のテナントで買い周りをしてもらう(複数のテナントを回ってもらう)ようにするためです。

顧客は、階層を跨いで移動するのが面倒なものです。階段は当然ですし、エスカレーターも「上(下)の階って何があったかな…」「探しているアレはどの階にあったか…」という疑問を持ってしまうことになります。疑問を持ちながら買い物するのはストレスです。これはエレベーターも同様で、目当てのものがどの階にあるか探す、というのはなかなか大変ですし、一度目当てのものを見つけてしまったら、他のフロアへ移動してウロウロする…というインセンティブはもたせにくいものです。

百貨店のように、フロアごとに特定の目的になりうるものがある(フロアごとに取り扱い商品が明確に分かれる)のであれば、階層を増やすことで面積を稼いでも買い周りを促進できます。
しかし、ショッピングモールのように明確にテナントごとに商品が分かれていないテナントの集合体では、ふらっと立ち寄る(つまり目的性が薄い)顧客、複数のテナントで比較しながら買い物をする顧客をも取り込まないと、それぞれのテナントに顧客を回らせることが難しくなります。
そのためには、移動を阻害する原因になる階層はなるべく減らしておいたほうがよいのです。ですから、横方向に大きな建物を建てることになります。
(もっとも、上層階に目的性の高いテナントを誘致して、まずそのテナントに向かわせてから周辺・下層階へ顧客を回遊させる「シャワー効果」というものもあります)

3.ブランドごとの分析

(1)イオンモール

イオンモール、イオン北海道、イオン九州が展開している大型ショッピングモールです。同じ屋号で複数デベロッパーがショッピングモールを展開しているのはイオングループの来歴の複雑さを反映している感じがします。
かつてダイヤモンドシティというショッピングモールもありましたが、イオンモールに名称を統合されています。

イオンモールの特徴として、徹底した家族向け対応が挙げられると思います。今でこそどのショッピングモールも標準装備として子供用トイレや授乳室は設置されていますが、イオンモールは早くから展開しており、その使い心地やメンテナンスも秀でていた印象があります。子育て中の人からするとかなり来店のインセンティブになりますよね。一方で店年齢を重ねている店舗も多いことから、共用部分を中心に古さ(内装としての古さ、構造としての古さ)を感じる施設が多いようにも思います。

店舗開発のための資金調達ルートとして早い段階からREITを活用していたのもイオンモールの特徴です。日本リテールファンド投資法人は、今でこそ都市シフトを進めていますが、初期の頃はダイヤモンドシティやイオンモールの物件を中心に流動化を担っていたように思います。今はイオンリート投資法人が郊外型の流動化を担っていますね。(このあたりも別記事で記載したい)

(2)ららぽーと

ららぽーとは「ららぽーとTOKYO-BAY」を始めとして、どの施設もブランド力を高めて盤石な出店を進めている印象がとても強いです。
三井不動産のリーシング(テナント誘致)力を活かして、郊外においてもテナント揃えがとても上質なのが特徴です。BEAMSやSHIPSといったセレクトショップは、アウトレットを除くとイオンモールは入れられていませんし。

都心のビルなどを複数所有しているのはリーシングにおいて有利に働く点もあるのではないかと思います。バーター取引とまでは言いませんが、色々なテナントとの接点は多くなると思います。ここは総合デベロッパーの強みですね。

この数年は新規出店を加速しており(富士見、立川立飛、沼津、名古屋みなとアクルス…)ますが、これはもう数年早く進んでいればより強いポジションを取れたのかもしれませんが、ららぽーとブランドで求めているのはそういうことではないのかもしれませんね。

(3)イオンタウン

イオンタウンというと食品スーパー中心で平屋建て…というショッピングモールをイメージしますが、一部はイオンモールと何が違うの?という施設があります。
これらはイオンタウンの前身の会社のひとつであるロック開発(イオンと大和ハウスの合弁)が開発した「ロックシティ」の名残り…と思うのですが、最近の物件(ユーカリが丘、姶良)もあるのでイオングループはどうやって物件の分類をしているのかよくわかりません。

大型ショッピングモールのタイプのイオンタウンの特徴として、最近はイオングループ店舗のスクラップ・アンド・ビルドで開発した店舗が多いように思えます。もともとの店舗は総合スーパー(GMS)であることも多く、イオンモールほどの規模にする想定ではないからイオンタウン…ということなのでしょうか。

(4)ゆめタウン

ショッピングモール業界では西の雄であるイズミが展開するショッピングモールです。特に九州では圧倒的なシェアを誇っています。

ゆめタウンの特徴として、自ら運営する売場と、テナントを導入する部分とを(おそらく敢えてでしょうが)混在させているのがあります。
自ら運営する売場も含めて顧客が買い周りをしやすいように作り上げる能力は、他のデベロッパーにはない特徴です。(しかし不動産業者・施設管理の立場からすると、ここまで混在させているのは管理上の不具合がないのだろうか?というのは心配になります。)

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4.おまけ(各都道府県の郊外型ショッピングセンター規模トップ一覧)

日本ショッピングセンター協会 ショッピングセンター一覧(2018年末)より集計しました。
郊外型が各都道府県のショッピングセンターでトップになっていない場合、上位のショッピングセンターを記載しています。

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